【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ビー・エム・エルは戻り歩調の展開で14年8月高値に接近、中期成長力を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ビー・エム・エル<4694>(東1)は受託臨床検査の大手である。株価は戻り歩調の展開だ。21日には年初来高値3900円まで上伸して14年8月高値4175円に接近してきた。16年3月期は微増益予想だが安心感に繋がったようだ。中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

 臨床検査事業を主力として、腸内細菌検査や食品衛生コンサルティングなどの食品衛生検査事業、電子カルテなどの医療情報システム事業、そして子会社アレグロのSMO(治験支援)事業も展開している。なお15年7月に会社設立60周年を迎える。

 事業基盤強化と収益力向上に向けてM&Aの積極活用、臨床検査事業でのクリニック市場の開拓、既存ユーザーへの深耕、首都圏のラボ拠点再編、ピロリ菌関連検査やアレルギー検査など重点検査項目の拡販、子会社の経営合理化、食品衛生事業での腸内細菌検査やノロウイルス検査などの拡販、新検査センター開設(14年5月、埼玉県川越市)に伴う検査領域・検査数量の拡大、厚生労働省の「登録検査機関」の資格取得、医療情報システム事業での電子カルテ「クオリス」のブランド向上などを推進している。14年6月には岡山医学検査センターを子会社化した。

 海外展開では13年12月、中国・上海に合弁会社(上海千麦博米楽医学検験所有限公司)を設立した。現地で臨床検査センター運営の実績を持つ上海千麦医療投資管理有限公司、および上海新虹橋国際医学中心建設発展有限公司と3社合弁で、中国でも臨床検査受託事業を展開する。

 5月11日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比5.4%増の1044億04百万円、営業利益が同14.8%減の69億74百万円、経常利益が同12.3%減の75億27百万円、純利益が同22.4%減の38億74百万円だった。

 配当予想は期末に記念配当10円を実施して同10円増配の年間60円(第2四半期末25円、期末35円=普通配当25円+記念配当10円)とした。配当性向は32.9%となる。ROEは同2.6ポイント低下して6.8%、自己資本比率は同1.0ポイント上昇して63.3%となった。

 岡山医学検査センターの新規連結も寄与して増収、診療報酬改定や競争激化による価格下落、首都圏におけるラボ新設・移転に伴う設備投資や人員増、岡山医学検査センターののれん償却、人事制度変更に伴う処遇改善などが影響して減益だった。ただし売上高、各利益とも修正計画値(8月14日に売上高を増額、利益を減額)を上回った。

 事業別売上高は、検査事業が同4.8%増の993億82百万円(臨床検査事業が同4.7%増の954億27百万円、その他検査事業が同6.7%増の39億55百万円)、医療情報システムが同9.8%減の36億07百万円、その他事業が同8.0倍の14億13百万円だった。

 臨床検査事業では新規開拓が堅調に推移し、重点検査項目の拡販、岡山医学検査センターの新規連結も寄与した。既存の臨床検査事業は同1.6%増収だった。その他検査事業は食品衛生コンサルティングの新規受託増加に加えて、食品衛生事業に岡山医学検査センターの売上が加わった。医療情報システムは消費増税前駆け込み需要の反動減で減収だった。その他事業は子会社アレグロのSMO事業で厳しい環境が続いたが、岡山医学検査センターの調剤薬局事業の売上が加わった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)266億93百万円、第2四半期(7月~9月)262億67百万円、第3四半期(10月~12月)265億89百万円、第4四半期(1月~3月)248億55百万円、営業利益は第1四半期22億61百万円、第2四半期19億19百万円、第3四半期20億53百万円、第4四半期7億41百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は売上高が前期比2.0%増の1065億円、営業利益が同1.8%増の71億円、経常利益が同0.3%増の75億50百万円、純利益が同11.0%増の43億円、配当予想が前期と同額の年間60円(第2四半期末30円、期末30円)としている。

 収益拡大に向けた重点戦略として、臨床検査事業ではクリニック・病院市場での新規開拓強化、既存ユーザーへの深耕営業強化、重点検査項目の営業推進強化、首都圏ラボネットワークの強化・活用を推進するとともに、事業基盤構築・強化に向けて地域ラボでの検査項目拡大、次世代免疫システムの構築、病理検査部門でのチェック体制強化、集配部門の管理体制強化、人材基盤への投資など先行投資も推進する方針だ。

 取引先からの価格引き下げ圧力や業者間競争の激化など、厳しい事業環境が続くとして16年3月期会社予想は概ね横ばいの計画だが、岡山医学検査センターの通期連結や食品衛生事業の新検査センター本格稼働なども寄与して、増収増益が期待される。

 なお5月11日に第6次中期経営計画(15年度~17年度)を発表した。グループビジョンに「医療界に信頼され選ばれる企業を目指す」を掲げ、経営目標数値は18年3月期売上高1109億円(臨床検査事業1014億20百万円、その他検査事業42億90百万円、医療情報システム事業37億90百万円、その他事業14億円)、営業利益88億50百万円、経常利益93億50百万円、純利益56億円、そしてROE8.22%とした。中期的に収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると戻り歩調の展開だ。5月21日には年初来高値3900円まで上伸して14年8月高値4175円に接近してきた。16年3月期は微増益予想だが安心感に繋がったようだ。

 5月22日の終値3810円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS202円45銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間60円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2787円90銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。中期成長力を評価して14年8月高値4175円を試す展開だろう。

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