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パイプドHDは上値試す、21年2月期営業・経常減益予想だが再上振れ余地
- 2020/10/16 06:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業や販促CRMソリューション事業などを展開している。21年2月期は新型コロナウイルスの影響を考慮して保守的に営業・経常減益予想、特別利益計上で最終増益予想としている。ただし第2四半期累計の進捗率が順調であり、後半の回復も考慮すれば再上振れ余地がありそうだ。株価は戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■情報資産プラットフォーム事業などを展開
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として事業展開している。
セグメント区分は、機能別事業群の情報資産プラットフォーム事業(スパイラルやBizBaseなどのクラウドサービス提供)、販促CRMソリューション事業(Webシステムの開発、ECサイトの構築・運営支援)、広告事業(インターネット広告代理販売)、および分野別事業群のxTech事業(ArchiTech:BIM事業、BeauTech:美歴、HRTech:オーダーメイド人材育成代行、FinTech:エルコイン)、社会イノベーション事業(政治山、I LOVE 下北沢、シモキタコインの運営)としている。
20年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業68.4%、販促CRMソリューション事業15.5%、広告事業11.7%、xTech事業3.0%、社会イノベーション事業1.3%だった。
情報資産プラットフォーム事業は、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。広告事業の売上高は、広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)としている。
■情報資産の有効活用を推進
重点戦略としてリアルビジネスとの接点の強化、イノベーティブな事業への挑戦、グループ全体の採用・育成の強化、グループ各社の情報資産の有効活用を推進している。
電子地域通貨プラットフォームを提供するエルコインの子会社シモキタコインは、エルコインの電子地域通貨プラットフォーム発行事業者第1号として、下北沢で行われるイベントや商業施設等で利用される電子地域通貨を発行している。
政治・選挙情報サイト「政治山」を運営するVOTE FORは、自治体向けオープンデータ化・活用サービス「マイ広報紙」を展開するパブリカと合併し、収益性向上を推進している。20年7月には「つくばスマートシティ協議会」に参画した。
さらにwithコロナ・afterコロナで役立つソリューションとして、体調報告アプリ、バーチャル株主総会ソリューション、美容室向け前売りチケット販売管理「チケット管理サービス」などの開発・提供を開始している。
また20年3月にはコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)として投資事業を行う新会社ダブルシャープ・パートナーズを設立している。20年5月には店舗マネジメントツール「はたLuck」を提供するナレッジ・マーチャントワークスに出資、20年8月には地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」を提供するJOINSに出資、20年9月には家具のサブスクリプション型サービスを提供するsubsclifeに出資した。
なお赤字が続いていた人材育成代行事業の子会社ブルームノーツについては解散(20年夏頃清算結了予定)する。また20年5月には子会社パイプドビッツフレンディットの「スパイラルプレース」を譲り受けた。
■21年2月期2Q累計順調、通期営業・経常減益予想だが再上振れ余地
21年2月期の連結業績予想(6月30日に売上高・利益ともレンジ予想の下限値を上方修正、9月2日に特別利益計上で純利益を上方修正)は、売上高が58億円~62億円(20年2月期比6.6%減~0.1%減)、営業利益が10億円~12億円(同28.1%減~13.7%減)、経常利益が10億円~12億円(同28.7%減~14.4%減)、純利益が7億円~8億円(同1.7%増~16.3%増)としている。配当予想は未定としている。
特別利益に投資有価証券売却益を約2億80百万円(為替レート1米ドル=105円の場合)計上する見込みだ。譲渡手続完了までに数ヶ月の時間を要するが、21年2月期末までには完了見込みとしている。また今後の為替レート変動によって、売却益計上金額が上下する可能性がある。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比0.5%減の29億74百万円、営業利益が1.5%増の5億53百万円、経常利益が1.0%増の5億57百万円、純利益が4.8%増の3億62百万円だった。
新型コロナウイルスによる商談長期化、キャンペーン中止、広告出稿停止などで販促CRMソリューション事業が9.2%減収、広告事業が0.8%減収と影響を受けたが、主力の情報資産プラットフォーム事業が1.5%増収と堅調に推移し、広告管理業務の内製化やスパイラルの生産性向上効果も寄与して、全体として増益だった。
通期については、新型コロナウイルスによって商談停滞など営業活動に影響が生じているため、保守的に減収、営業・経常減益予想としている。ただし第2四半期累計の進捗率は売上高が48.0%~51.3%、営業利益が46.1%~55.3%と概ね順調だった。期後半の回復も考慮すれば再上振れ余地がありそうだ。
■株価は上値試す
なお4月21日発表の自己株式取得(上限50万株・5億円、取得期間20年4月22日~20年10月21日)については、20年10月9日時点で累計取得株式数33万4300株、取得価額総額4億99百万円となって終了した。
株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月15日の終値は1727円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS上限値99円63銭で算出)は約17倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS477円39銭で算出)は約3.6倍、時価総額は約140億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)