【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エストラストは調整の最終局面、中期成長期待で反発

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エストラスト<3280>(東1)は山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。株価は16年3月期の営業減益予想で下げたが、低PERで指標面の割安感が強く調整の最終局面だろう。中期成長が期待され、反発のタイミングが接近しているようだ。

 山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、およびハイクオリティ・ミドルプライスの新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力として、不動産賃貸事業も展開している。連結子会社トラストコミュニティは「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業を展開している。

 14年のマンション販売実績は九州・山口エリアで5位、山口県では1位である。そして15年2月期末時点でマンション供給は累計68棟・3389戸に達している。

 九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。

 重点エリアである福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月に第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得して、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。

 15年1月には「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚本町」の各プロジェクト、15年4月には「オーヴィジョン新下関駅南」プロジェクト、15年5月には「オーヴィジョン新山口駅ネクシア」「オーヴィジョン青山グランテラス」の各プロジェクトが始動した。

 15年2月期四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)3億60百万円、第2四半期(6月~8月)48億84百万円、第3四半期(9月~11月)49億65百万円、第4四半期(12月~2月)17億32百万円で、営業利益は第1四半期2億12百万円の赤字、第2四半期6億50百万円、第3四半期7億32百万円、第4四半期8百万円だった。引き渡し物件によって変動する収益構造だ。15年2月期のROEは14年2月期比8.7ポイント低下の21.3%、自己資本比率は同6.3ポイント上昇の28.5%だった。

 今期(16年2月期)の連結業績予想(4月9日公表)は、売上高が前期比9.7%増の131億円、営業利益が同3.3%減の11億40百万円、経常利益が同1.7%増の9億70百万円、純利益が同2.4%増の6億円としている。配当予想は年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。前期比では2円減配の形だが、前期の年間10円には第2四半期末の市場変更記念配当2円を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額である。

 不動産管理事業における計画引き渡し戸数は、分譲マンションが同59戸減少の370戸、分譲戸建が同29戸増加の65戸としている。なお分譲マンション引き渡し計画戸数370戸に対して255戸が契約済みであり、契約進捗率は68.9%となっている。また不動産管理事業おけるマンション管理戸数は同488戸増加の2627戸の計画だ。

 分譲マンション引き渡し戸数の減少、分譲マンション建設費の上昇、プロジェクト先行費用などを考慮して営業微減益の会社予想である。ただし売上面では契約済みの分譲マンションおよび戸建住宅の引き渡しが順調に進み、不動産管理事業の管理戸数増加や不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与して好業績が期待される。

 中期経営計画では目標値として16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。

 4月9日公表の16年2月期業績会社予想では、分譲マンション引き渡し戸数および利益が計画未達成の形となるが、約3年分の供給物件(事業用地取得済プロジェクト17棟、計画戸数1186戸、総売上高305億円、および分譲開始プロジェクト6棟、分譲中プロジェクト488戸、分譲中売上高124億円)を確保済みである。

 事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として、一段と人口増加傾向を強めることが予想される。日銀の金融緩和やアベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風だろう。成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調が期待される。

 なお4月20日に、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図ることを目的として、監査等委員会設置会社に移行すると発表した。5月27日開催予定の第17回定時株主総会における定款変更承認を前提としている。

 株価の動きを見ると、650円~700円近辺のボックスレンジから下放れの展開となり、5月8日と14日には年初来安値613円まで調整した。16年3月期の営業減益予想を嫌気した形だ。ただし14年10月安値599円まで下押すことなく下げ渋り感を強めている。売りが一巡したようだ。

 5月25日の終値622円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円29銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS551円06銭で算出)は1.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると再び13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。低PERで指標面の割安感が強く調整のほぼ最終局面だろう。日銀の金融緩和や政府の地方創生戦略なども追い風として中期成長が期待され、反発のタイミングが接近しているようだ。

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