【小倉正男の経済コラム】世界経済の先行き不透明でNY乱高下 そんななか日本は・・・

小倉正男の経済コラム

■NYダウ948ドル安

 このところNY株価が乱高下している。10月28日にはNYダウが948ドル安の大暴落となった。ハイテク株を代表するNASDAQは426ポイント安とこれも大幅な暴落である。

 新型コロナ感染が収まるどころか拡大をみせている。アメリカ、欧州で再びコロナ感染が大幅に増加しており、これが世界経済にとって先行きの大きな阻害要因になるといった見方からの乱高下である。

 しかも、11月3日に迫ったアメリカ大統領選挙だが、トランプ大統領の再選となるのか、バイデン氏が新大統領になるのか不透明だ。選挙の混迷にとどまらず、選挙後の混迷も予想されている。勝敗が最終的に決まるのは年内いっぱいかかるといわれている。これもNYダウ、NASDAQの乱高下の要因とされている。

 先行きは明日のことでもなかなかわからないのが常だ。コロナ感染の拡大にしても、大統領選挙の先行きにしても、人々の生命や仕事・収入に係わるマターであり、十分に不安を呼び起こすファクターなのは間違いない。11月3日前後にはNYダウなどが乱高下するとみられていたが、その前触れがいま起こっている。

■赤っ恥は繰り返されるのか

 日本のTVメディアなどでは、4年前のアメリカ大統領選挙時とほとんど同じ顔ぶれなのだが、前回とまったく同じ調子で論じられている。「トランプ大統領は支持率が低く再選は果たせない、バイデン氏が大統領選挙で圧倒的な勝利者になる」、と2016年と同様に語られている。

 前回も「ヒラリーが圧勝、トランプは泡沫候補」みたいなことを論じた人たちがまたほとんど焼き直しで「バイデン勝利、トランプ敗北」を声高に語っている。前回は予想が大きく外れて、論者たちは赤っ恥をかいたわけだが、TVメディアもあまり学んでいないことになる。

 こうなると、トランプ大統領が逆転というか再選されて、論者たちの赤っ恥を観たいものだということになりかねない。ただし、どちらが勝つにしてもおそらく一筋縄ではいかない。トランプ大統領再選となったとしても、幸いなことに言い訳は十分残されている。

■日本は無自覚なまま衰退していく「茹でガエル」

 先行き不透明でいえば、日本も楽観は許さる立場にはない。お隣の中国は、コロナ発生源なのだが、強権でコロナ抑え込みにいち早く成功していると報道されている。中国は、コロナ後を睨んで、アメリカに肩を並べる「覇権国家」たらんと虎視眈々の戦略行動をとっている。

 中国のGDP(国内総生産)は、アメリカのGDPに対してすでに7割の規模に到達している。アメリカ経済がコロナ感染でもたつくとしたら、中国はGDPでさらにアメリカに肩を並べるところまで膨張するとみておかなければならない。

 日本のGDPとの比較でいうと、中国のGDPはすでに日本の3倍の規模になっている。GDP2位、GDP3位というが、日本は中国の後ろ姿が見えないほど離されているのが実体である。

 しかも日本には、悪いことにその自覚はほとんどない。中国は人口(14億人)が多いのだから、GDPで大きく引き離されても仕方がない、と日本を肯定している。

 先行き不透明はアメリカだけではなく、日本も変わることはない。それなのに正月休みを延長して、休業補償もしないでコロナ抑え込み対策にしようなどといったような安直な政策が提案されたりしている。「茹でガエル」とは、無自覚のまま衰退していく日本の姿といえるのではないか。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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