【アナリスト水田雅展の銘柄分析】新日本建物は事業再生計画終結、16年3月期の収益改善基調を評価して水準切り上げ

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 新日本建物<8893>(JQS)は首都圏地盤の不動産デベロッパーである。株価は44円~49円近辺でモミ合う展開が続いているが下値は限定的のようだ。事業再生計画が終結し、16年3月期は収益改善基調だ。さらに10月1日付予定の株式併合も評価して水準切り上げの展開だろう。

 首都圏地盤の不動産デベロッパーで、流動化事業(他デベロッパー向けマンション用地販売)、マンション販売事業(自社開発物件の分譲、新築マンションの買取再販)、戸建販売事業(戸建住宅・宅地分譲)、その他事業(不動産賃貸や建築工事請負)を展開している。

 10年11月に提出した事業再生計画に基づいて事業の選択と集中を行い、マンション販売事業の買取再販、流動化事業の専有卸、戸建住宅販売事業を主力として経営再建に取り組んでいる。

 そして5月15日に事業再生計画の終結を発表した。18年3月末で返済することになっていた事業再生ADR債務を、計画より2年度繰り上げて15年5月14日付で完済した。15年3月期には事業再生計画決定後4期連続の最終黒字を達成し、強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的な改善を成し遂げた。

 5月15日に発表した前期(15年3月期)の非連結業績は、売上高が前々期比14.2%減の92億30百万円、営業利益が同2.8%増の6億81百万円、経常利益が同24.9%増の5億46百万円、純利益が同22.0%増の5億27百万円だった。自己資本比率は44.6%で同17.1ポイント改善した。また有利子負債を14年3月期末比23億41百万円圧縮した。

 売上面では流動化事業の引き渡し件数減少とマンション販売事業の引き渡し戸数減少で減収となったが、利益面では流動化事業における大型物件引き渡しによる売上総利益率の改善、営業外での受取地代の増加、有利子負債圧縮に伴う支払利息の減少が寄与して各利益とも増益だった。

 セグメント別に見ると、流動化事業は売上高が同26.2%減の31億88百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同56.2%増の10億29百万円だった。引き渡し件数は2件で同7件減少したが、都心部の不動産マーケットを見据えた事業戦略の効果で利益率が上昇した。

 マンション販売事業は売上高が同37.8%減の23億48百万円、営業利益が同95.5%減の6百万円だった。引き渡し戸数は65戸で同42戸減少した。好採算案件の減少も影響して大幅減益だった。

 戸建販売事業は売上高が同40.1%増の36億77百万円、営業利益が同56.9%減の1億33百万円だった。宅地分譲を含む引き渡し棟数は97棟で同12棟増加したが、需要喚起を図るための販売促進費用の増加で減益だった。その他事業は売上高が17百万円、営業利益が13百万円だった。

 期中に実施した仕入は合計16件(流動化事業3件、マンション販売事業4件、戸建販売事業9件)・売上想定額71億円だった。堅調な需要が見込まれる首都圏において事業規模・事業効率等を勘案し、優良な新規事業用地を選別取得している。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)11億38百万円、第2四半期(7月~9月)20億33百万円、第3四半期(10月~12月)14億51百万円、第4四半期(1月~3月)46億08百万円、営業利益は第1四半期1億07百万円の赤字、第2四半期21百万円の赤字、第3四半期87百万円の赤字、第4四半期8億96百万円の黒字だった。物件引き渡しによって変動しやすい収益構造だ。

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期比14.8%増の106億円、営業利益が同4.3%増の7億10百万円、経常利益が同3.5%増の5億65百万円、純利益が同6.3%増の5億60百万円としている。

 主として新規供給予定のマンション2物件の売上を計画し、相続税対策向けの需要取り込みも寄与して増収増益見込みだ。収益は改善基調だろう。

 5月15日に株式併合を発表した。発行済株式総数の適正化を図るため、6月25日開催予定の第31期定時株主総会および普通株主による種類株主総会において承認可決されることを条件に、15年10月1日を効力発生日として5株を1株に併合する。

 理論的には株式併合比率に見合う株価の上昇が見込まれるため、株価変動率が改善される可能性があり、株式市場において一層適正に評価されることが期待される。また投資単位の水準変更によって株主総数が若干減少し、今後の株主数の増加も抑制される可能性があるため、株式関連事務コストを年間数百万円程度削減できる効果も見込まれる。

 株価の動きを見ると概ね44円~49円近辺でモミ合う展開が続いている。事業再生計画終結、16年3月期増収増益予想、株式併合に対する反応も限定的のようだ。ただしモミ合い煮詰まり感も強めている。

 5月25日の終値45円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS5円62銭で算出)は8倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS21円28銭で算出)は2.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると再び26週移動平均線を割り込んで調整局面の形だ。ただし下値は限定的のようだ。事業再生計画が終結し、16年3月期は収益改善基調だ。さらに10月1日付予定の株式併合も評価して水準切り上げの展開だろう。

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