ラクーンホールディングスは上値試す、21年4月期は再上振れの可能性

 ラクーンホールディングス<3031>(東1)は、企業間ECサイトのスーパーデリバリー運営を主力として、EC事業およびフィナンシャル事業を展開している。21年4月期大幅増収増益・増配予想である。再上振れの可能性もありそうだ。新型コロナウイルスを契機とする企業間取引の構造的変化も追い風として収益拡大基調だろう。株価は10月の上場来高値から一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力

 アパレル・雑貨分野の企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注システムのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・決済業務代行サービスのPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業、家賃保証事業など周辺領域へ事業を拡大している。

 20年4月期セグメント別売上高構成比はEC事業(スーパーデリバリー、COREC)が54%、フィナンシャル事業(Paid事業、売掛債権保証事業、家賃保証事業)が46%、営業利益構成比はEC事業が82%、フィナンシャル事業が18%だった。

 スーパーデリバリーは、出展企業と会員小売店の増加、および流通額の増加に伴って月額課金のシステム利用料売上が積み上がるストック型収益構造である。越境ECサービス「SD export」も展開し、20年4月にはアリババグループが運営する中国最大級のBtoC越境ECサイト天猫国際(Tmall Global)にスーパーデリバリー海外旗艦店をオープンした。

■成長スピード加速

 グループ経営戦略として既存事業の成長スピード加速、M&Aの実施、新規事業の創出を推進し、経営目標値としては早期にEBITDA10億円(18年4月期実績5.2億円)の達成を目指すとしている。また中期的にROE20%以上を目指すとしている。

 18年12月家賃保証サービスのALEMOを子会社化、19年6月中国向け越境EC強化に向けてアドウェイズ<2489>と包括業務提携、19年12月オフィス内動画広告配信プラットフォーム「e-Pod Digital」運用のTAASに出資して資本業務提携した。

 20年5月子会社ラクーンフィナンシャルの事業用家賃保証事業を子会社ALEMOに承継してALEMOの社名をラクーンレントに変更、20年10月ラクーンレントが不動産テックの日本情報クリエイトと「電子入居申込サービス」を活用した家賃保証申込に関して提携した。

■会員企業数、流通額、取扱高、保証残高は増加基調

 20年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は19年4月期末比3万9905店舗増の16万7067店舗、出展企業数は434社増の1853社、商材掲載数は27万2348点増の114万7291点、流通額は13.9%増の128億08百万円(国内が10.4%増、海外が32.2%増)だった。

 Paid事業の加盟企業数は約3700社、グループ内含む取扱高は12.9%増の260億16百万円、保証事業の保証残高は20.2の756億44百万円(ラクーンフィナンシャル分267億74百万円、ALEMO分488億69百万円)だった。

■21年4月期大幅増収増益・増配予想で再上振れの可能性

 21年4月期の連結業績予想(9月3日に上方修正)は、売上高が44億50百万円~46億円(20年4月期比28.0%増~32.3%増)、EBITDAが13億30百万円~14億10百万円(同56.7%増~66.2%増)、営業利益が11億80百万円~12億70百万円(同67.1%増~79.9%増)、経常利益が11億60百万円~12億50百万円(同63.7%増~76.4%増)、純利益が7億40百万円~8億円(64.0%増~77.3%増)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比32.5%増の10億84百万円、EBITDAが80.6%増の3億82百万円、営業利益が96.1%増の3億44百万円、経常利益が91.1%増の3億34百万円、純利益が97.6%増の2億20百万円だった。

 新型コロナウイルスを契機とする企業間取引の構造的変化も追い風として、EC事業(51.2%増収で78.6%増益)でスーパーデリバリー流通額が75.2%増(国内が74,9%増、海外が76.4%増)と大幅伸長した。フィナンシャル事業(12.8%増収で61.9%増益)も、コロナ禍でリスクに備えるための企業が増加して保証サービスが拡大した。利益面では、EC事業の大幅増収効果に加えて、フィナンシャル事業の保証履行額減少に伴って原価率が大幅低下したことも寄与した。

 通期は新型コロナウイルス影響の不確実性が高いためレンジ予想としているが、EC事業では新規会員企業の増加も寄与して、スーパーデリバリー流通額が当初想定よりも高水準の成長率で推移する見込みだ。ファッションジャンルの流通額は4月に前年比45%減と一時的に落ち込んだが、7月には23%増と回復している。また保証事業では信用不安に備える企業からの問い合わせが増加している。デフォルトコストが当初想定を下回ることも寄与する見込みだ。

 通期予想上限値に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.6%、EBITDAが27.1%、営業利益が27.1%である。プロモーション強化で広告宣伝費を上乗せするが、通期予想に再上振れの可能性がありそうだ。非対面取引ニーズの増加、インターネットを活用した仕入ニーズの増加など、新型コロナウイルスを契機とする企業間取引の構造的変化も追い風として収益拡大基調だろう。

 なお20年8月に、21年4月期からの株主還元方針の変更と中間配当の実施を発表し、21年4月期の配当予想は9円50銭増配の16円(第2四半期末8円、期末8円)としている。ここ数年は概ね連結配当性向30%前後で推移してきたが、定量的な目標水準を定め、連結配当性向45%~50%を目途に配当を実施することとした。

■株価は上値試す

 株価は10月の上場来高値から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。11月4日の終値は2099円、今期予想連結PER(会社予想連結EPSの上限値37円42銭で算出)は約56倍、今期予想配当利回り(会社予想の16円で算出)は約0.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS197円68銭で算出)は約11倍、時価総額は約455億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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