インテージHDの今期業績は、前期に引き続き売上高、営業利益共に過去最高を見込む

■今期より新セグメントを導入し、グループフォーメーションを再編

インテージHD<4326>(東1)

の今期業績は、前期に引き続き売上高、営業利益ともに過去最高を見込む。

15年3月期連結業績は、売上高439億25百万円(14年3月期比3.3%増)、営業利益35億71百万円(同1.9%増)、経常利益34億46百万円(同1.9%増)、純利益24億63百万円(同50.0%増)と増収増益で過去最高の業績で着地した。最終利益が大幅増益となったのは、アスクレップの一部事業を譲渡したことによる売却益29億11百万円を特別利益として計上したことによる。

同社の事業は、市場調査・コンサルティング、システムソリューション、医薬品開発支援の3つに分かれている。

市場調査・コンサルティングの売上高は、343億46百万円(同12.3%増)と好調であった。内訳は、パネル調査173億50百万円(同4.6%増)、カスタムリサーチ169億80百万円(同21.5%増)と共に増収であった。
パネル調査は、インテージSCI(全国消費者パネル調査)、インテージi-SSP(シングルソースパネル)、JMIRI(処方情報分析サービス)が堅調であった。
カスタムリサーチは、WEBはアンテリオ(ヘルスケア系)の案件数が増加した。既存はインテージのFMCG(日用消費財)系、インテージリサーチの官公庁案件が好調であった。

システムソリューションの売上高は、55億57百万円(同1.8%減)と減収であったが、前年は高採算な大型案件があった影響によるもので、全体としては好調であった。

医薬品開発支援は事業譲渡により、売上高40億22百万円(同35.9%減)と大幅に減少したが、継続事業は大きく伸長した。

セグメント別の営業利益は、市場調査・コンサルティングは30億70百万円(同1.6%増)となり、パネル調査の売上拡大に伴い増加した。特に、パネルデータをベースとしたプロモーション支援サービスが貢献した。また、INTAGE CHINAは事業の再構築が順調に進み損失を縮小した。今期の黒字化の目処は立ってきている。

システムソリューションは4億99百万円(同1.9%増)と減収ながら、増益となった。

医薬品開発支援は1百万円とEDC(電子的臨床検査情報収集)システムの売上増加が貢献したことで、黒字化した。

以上の様に、15年3月期は好業績であったことから、財務内容は大きく改善している。例えば、負債合計は、31億83百万円減少し、133億84百万円となった。一方、純資産は、27億45百万円増加し、199億17百万円となった。その結果、自己資本比率は、前年の50.5%から59.3%と大きく改善している。

この好業績をもたらした、昨年に開始した第11次中期経営計画の進捗状況を振り返ってみる。基本方針は、「リノベーション&イノベーション」を掲げている。具体的には、主力事業の再強化と共にリサーチ以外の領域における新ビジネスの確立を目指している。但し強みである生活者起点を原点として、グループとしての成長を目指す。
重点課題として、巻き返し(主力事業の再強化による市場価値の向上)、結実(モバイル&シングルソース、グローバル、ヘルスケア領域の着実な成長)、挑戦&創造(『リサーチ』の枠にとらわれない、新たなビジネスモデルの模索と確立)、加速(最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメント強化)の4点を挙げている。
1年経った現在の状況は、主力事業であるパネル調査は、競合からの顧客奪還が進み、巻き返しに成功している。
また、テレビ、パソコン、モバイルにおける広告へのアクセスルートを捉えるため、一人のユーザーから複数のメディア接触情報を捉えるi-SSPという独自のデータベースを提供している。世界にも類のないデータということで、幅広い業界から、引き合いが相次いでいる。そのため、かなり顧客が増えている。確実にこの領域で、次の主力事業となることが見込まれている。
挑戦&創造については、ビッグデータの高度なハンドリング技術を持っている会社である、京都コンステラ・テクノロジーズ、クロスコンパスとの業務提携を発表している。

今期16年3月期の事業計画では、グループの基本方針として、「リノベーション&イノベーションの更なる加速」を掲げている。戦略のポイントとしては、新セグメントの導入、グループフォーメーションの再編、グループ成長実現のための戦略的投資、海外事業トータルでの黒字化・ガバナンス強化、メディアコミュニケーション事業の着実な成長を挙げている。

新セグメントの導入として、これまでの市場調査・コンサルティング、システムソリューション、医薬品開発支援のセグメントから、マーケティング支援(消費財・サービス)、マーケティング支援(ヘルスケア)、ビジネスインテリジェンスと新しいセグメントとなる。

新しいセグメントを導入したことで、グループフォーメーションの再編も行っている。マーケティング支援(消費財・サービス)では、インテージがこの領域に資源を集中し、リサーチ事業の再強化を図ると共に、コミュニケーション事業の拡張を進める。また、インテージコンサルティングの設立により、顧客経営層へのアプローチを活発化させる。

マーケティング支援(ヘルスケア)では、インテージが提供してきたSDI(全国一般用医薬品パネル調査)をアンテリオへ移管。同社グループが保有するOTC・Rx(処方箋)両方にわたる専門人材と有力コンテンツを集約し、「患者を最もよく知る企業」としての地位確立を目指す。

ビジネスインテリジェンスは、インテージが提供してきたFMCG領域、DCG(耐久消費財)領域、医薬・健康情報領域のITソリューションサービスをインテージテクノスフィアへ移管し、「ビジネスインテリジェンス事業総体での戦略立案」、「先進的なIT力の徹底的な向上」を最優先に競合優位性の確立を目指す。

グループ成長実現のための戦略的投資では、「ヘルスケア」「海外」「ビジネスインテリジェンス領域」に重点をおいた、ベンチャーファンドを活用したインキュベーションを推進する。グループ各社とのシナジーが期待される成長性、新規性の高い有望ベンチャー企業への出資を行い、ビジネス機会の創出を目指す。

海外事業に関しては、前期の実績としては、売上高35億90百万円、営業利益△1億70百万円であった。今期は、売上高39億80百万円、営業利益1億円を見込んでいる。好調な国もあるため、黒字化が見えてきた。これまでの取り組みとしては、営業強化はもちろんのこと、日本で開発したソリューションを導入すべく、現地での教育訓練を相当実施した。ここにきて、その成果が売上の実績として出てきている。また、NTTドコモと培ったモバイルテクノロジーを使って、新しいサービスを現地発で開発することにも取り組んでおり、現場のモチベーションも高まっている。

メディアコミュニケーション事業は、i―SSPをベースとしたソリューションツールや付帯サービスを続々と展開している。今年で4年目を迎えるが、顧客数が非常に増加している。テレビ局といったメディア系をはじめとする様々な業種から問い合わせが来ている。テレビコマーシャルとインターネット広告をどのように使い分ければよいのか、各企業ともに悩んでいる状況。インターネット広告は1兆円規模になってきている。割安ということで、拡大してきているのは事実だが、これを使えば有効であるということを、シングルソースパネルで検証することが出来る。これは日本で唯一のテレビコマーシャルとモバイル広告のクロスメディア効果を測定することが出来る情報データベースである。顧客の数は、前期は170%増加した。今年度中にはユーザー数は100社を超えると見ている。また、単なるクロスメディアの効果測定だけでなく、データマネージメントプラットフォームを中心に、各社と組んで、トータル的なコミュニケーションサービスを提供する。

このような同社独自のサービスを提供できることから、ニールセンが持つ世界最大のデジタル広告視聴率調査Digital Ad Ratingsと同社のSCI/i-SSPをベースにした商品開発を行うために、「インテージ・ニールセン デジタルメトリクス」を設立した。10月には新しいサービスを提供する予定。

このような取り組みを行うことで、16年3月期連結業績予想は、売上高460億円(前期比4.7%増)、営業利益38億円(同6.4%増)、経常利益37億70百万円(同9.4%増)、純利益24億円(同2.6%減)を見込む。最終利益が減益となるのは、前期にアスクレップの事業の一部を売却した際の特別利益の影響による。

今期も最高益更新基調であることから、配当は2円50銭増配の32円50銭を予定している。

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