【アナリスト水田雅展の銘柄分析】リンテックは16年3月期も増収増益基調、増配予想も評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 リンテック<7966>(東1)は粘着製品の大手である。株価は4月高値から利益確定売りで一旦反落したが、中期成長力を評価する流れに変化はなく自律調整の範囲だ。16年3月期も増収増益基調であり、増配予想も評価して上値を試す展開だろう。06年2月の上場来高値3490円が視野に入る。

 高度な粘着応用技術と表面改質技術(粘着剤や表面コート剤の開発・配合・塗工技術)に強みを持ち、印刷材・産業工材関連(シール・ラベル用粘着紙・粘着フィルム、ウインドーフィルム、自動車用・工業用粘着製品など)、電子・光学関連(半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルム、液晶用偏光・位相差フィルム粘着加工など)、洋紙・加工材関連(カラー封筒用紙、粘着製品用剥離紙・剥離フィルム、炭素繊維複合材料用工程紙など)の分野に幅広く事業展開している。

 14年4月にスタートした3ヵ年中期経営計画「LIP-2016」では重点テーマを、グローバル展開のさらなる推進、次世代を担う革新的新製品の創出、強靭な企業体質への変革、戦略的M&Aの推進、人財の育成とした。

 数値目標として17年3月期売上高2400億円、営業利益200億円、経常利益200億円、純利益130億円、売上高営業利益率8%以上、そしてROE8%以上を掲げている。セグメント別では印刷材・産業工材関連が売上高1025億円、営業利益57億円、電子・光学関連が売上高943億円、営業利益88億円、洋紙・加工材関連が売上高432億円、営業利益55億円としている。

 海外展開に関しては、アジアを中心に拠点網を拡大している。15年1月には、東南アジアおよびインドなどにおける事業統括会社をシンガポールに設立した。包括的な事業戦略の立案・実行により同地域での事業展開の強化を図る方針だ。また現在、タイの工場で各種粘着製品の生産能力増強を進めている。

 研究開発面では、研究所の新棟を建設中で15年秋稼働予定である。最新鋭の大型研究設備の導入により、新製品開発のスピードアップを図る。また米国テキサス州の研究開発拠点(NSTC)では、新規シート材料の実用化に向けた研究を進めている。

 5月8日発表の前期(15年3月期)の連結業績(2月12日に売上高を減額、利益を増額)は、売上高が前々期比2.0%増の2072億55百万円、営業利益が同22.6%増の168億81百万円、経常利益が同36.0%増の179億01百万円、そして純利益が同37.1%増の116億59百万円だった。

 配当予想(2月12日に増額修正)は前々期比6円増配の年間48円(第2四半期末22円、期末26円)とした。配当性向は29.7%となる。ROEは同1.4ポイント上昇して7.2%、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して71.8%となった。

 国内で消費増税以降の個人消費落ち込みが一部製品の需要に影響したが、全体としてスマートフォン関連の需要が好調に推移し、海外でも台湾、韓国、インドおよびアセアン地域での需要が好調に推移した。販売数量の増加、プロダクトミックスの改善、固定費の削減、さらに円安効果(売上高で約44億円、営業利益で約16億円)も寄与した。原燃料コストの上昇や販管費の増加などを吸収して増収増益となり、2月12日の修正値と概ね同水準で着地した。

 セグメント別には、印刷材・産業工材関連は売上高が同0.6%増の867億64百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同25.6%増の28億78百万円だった。国内は消費増税の影響で食品用や家電用などが低調だったが、海外で自動車用粘着製品が好調だった。

 電子・光学関連は売上高が同5.1%増の832億07百万円、営業利益が同47.1%増の100億71百万円だった。スマートフォンや自動車用の需要増効果で半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルムが大幅に伸長した。液晶ディスプレイ関連粘着製品は液晶テレビの大型化も寄与した。

 洋紙・加工材関連は売上高が同1.4%減の372億83百万円、営業利益が同14.0%減の39億96百万円だった。カラー封筒用紙、炭素繊維複合材料用工程紙などが好調に推移したが、合成皮革用工程紙は中国での市況低迷の影響を受けて減少した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)493億22百万円、第2四半期(7月~9月)511億67百万円、第3四半期(10月~12月)529億36百万円、第4四半期(1月~3月)538億30百万円、営業利益は第1四半期39億75百万円、第2四半期47億79百万円、第3四半期44億86百万円、第4四半期36億41百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比6.1%増の2200億円、営業利益が同9.6%増の185億円、経常利益が同2.2%増の183億円、純利益が同8.9%増の127億円、配当予想が同6円増配の年間54円(第2四半期末27円、期末27円)としている。

 スマートフォン関連や自動車関連を中心に需要は概ね好調に推移する見込みだ。電子・光学関連の好調が牽引し、国内の消費回復などで印刷材・産業工材関連、洋紙・加工材関連の増勢も予想される。タイでの増産投資などに伴って減価償却費が増加するが、数量増効果、プロダクトミックス改善効果、原燃料価格上昇に対応した製品価格改定効果、原価低減効果、さらに円安メリットも寄与して増収増益見込みだ。

 主要通貨の想定為替レートは1米ドル=115円、1ユーロ=126円80銭などとしている。設備投資は同50億円増加の128億円、減価償却費は同10億円増加の97億円、研究開発費は同14億円増加の82億円の計画としている。

 またセグメント別の計画は、印刷材・産業工材関連の売上高が同7.1%増の930億円、営業利益が同41.4%増の41億円、電子・光学関連の売上高が同5.6%増の879億円、営業利益が同3.0%増の104億円、洋紙・加工材関連の売上高が同4.8%増の391億円、営業利益が同横ばいの40億円としている。

 需要の増加、高付加価値化の進展、さらにアジアを中心とする海外展開の加速も寄与して、中期的に収益拡大基調だろう。

 なお6月24日開催予定の第121期定時株主総会における承認を前提として監査等委員会設置会社に移行する。コーポレート・ガバナンスのより一層の充実と経営のさらなる効率化を目指すとしている。

 株価の動きを見ると、4月高値3090円から利益確定売りで一旦反落したが大きく下押す動きは見られない。中期成長力を評価する流れに変化はなく自律調整の範囲だろう。

 5月26日の終値2865円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円06銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間54円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2363円81銭で算出)は1.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を一旦割り込んだが、26週移動平均線が追いついてサポートラインとなりそうだ。再動意のタイミングだろう。16年3月期も増収増益基調であり、増配予想も評価して上値を試す展開だろう。06年2月の上場来高値3490円が視野に入る。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る