アスカネットは調整一巡、21年4月期は新型コロナ影響だが中期成長期待

 アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。11月24日にはAI事業の海外販売体制拡充に向けて、米国・UAE・中国での販売代理店契約締結を発表した。21年4月期は新型コロナウイルスの影響で減益予想だが、AI事業も寄与して中期成長を期待したい。株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。なお12月8日に第2四半期決算発表を予定している。

■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進

 葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。20年4月期の売上構成比はMDS事業38.9%、PPS事業59.5%、AI事業1.6%だった。

 MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場である。いずれも景気変動の影響を受けにくい特性や、下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携、20年2月AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携した。

■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。20年4月期末のハード設置件数は2562ヶ所、19年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が35.6万枚、電照焼増枚数が13.7万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、推定市場シェアは約30%(1位)である。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 19年12月には葬祭業者向けクラウド型印刷物作成ツール「SoSign(葬サイン)」の提供を開始、20年1月には葬儀社用Webサイト生成ツール「お葬儀.jp」の提供を開始、20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加した。

■PPS事業はOEMが拡大

 PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。20年4月期時点で約4590社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約45万冊提供している。なお20年10月には「マイブック」を、姉妹サービス「マイブックライフ」「オートアルバム」と統合リニューアルした。

 またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。OEMを中心とする需要拡大に対応するため、19年8月本社隣接地の新工場が稼働した。

■AI事業は空中結像ASKA3Dプレートの中規模ロット案件受注目指す

 空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。

 生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。

 20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。また11月24日にはAI事業の海外販売体制拡充に向けて、米国・UAE・中国での販売代理店契約締結を発表した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。本格受注・量産化への期待が高まる。

■21年4月期は新型コロナ影響だが中期成長期待

 21年4月期の業績(非連結)予想は、売上高が20年4月期比3.2%減の63億68百万円、営業利益が38.5%減の4億36百万円、経常利益が33.7%減の4億71百万円、純利益が35.2%減の3億25百万円としている。配当予想は3円減配の7円(期末一括)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比18.3%減の12億59百万円、営業利益が40百万円の赤字(前年同期は1億55百万円の黒字)、経常利益が0百万円(同1億55百万円の黒字)、純利益が1百万円の赤字(同1億09百万円の黒字)だった。新型コロナウイルスの影響で減収となり、人件費の増加や稼働率の低下などで営業損益が悪化した。

 MDS事業(6.0%減収)は葬儀の小型化、PPS事業(26.9%減収)は結婚式の延期や旅行・イベントの自粛の影響を受けた。AI事業(13.9%増収)は樹脂製の販売が増加した。

 通期ベースでも、売上面でMDS事業とPPS事業が新型コロナウイルスの影響を受けると想定し、PPS事業の稼働率低下、人件費、研究開発費、広告宣伝費の増加などで減益予想としている。後半の需要回復を期待したい。またASKA3Dプレートについては、初の中規模ロット案件の受注獲得を実現したいとしている。AI事業も寄与して中期成長を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。

■株価は調整一巡

 株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。11月24日の終値は1222円、今期予想PER(会社予想のEPS19円36銭で算出)は約63倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.6%、前期実績PBR(前期実績のBPS341円45銭で算出)は約3.6倍、時価総額は約213億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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