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寿スピリッツは戻り歩調、21年3月期は新型コロナ影響だが下期回復基調を期待
- 2020/11/25 08:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、首都圏エリア強化や商品プレミアム化などの重点施策を推進している。21年3月期は新型コロナウイルス影響が避けられず厳しい状況だが、下期はGoToキャンペーンや経費削減などの効果で小幅ながら黒字を見込んでいる。収益回復基調を期待したい。株価は水準を切り上げて戻り歩調だ。出直り本格化を期待したい。なおJPX日経インデックス400構成銘柄に選定された。
■「お菓子の総合プロデューサー」として地域限定ブランド菓子を展開
地域限定ブランド菓子の製造・販売を展開する持株会社で、全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げている。さらにWSR(ワールド サプライジング リゾート)宣言を経営スローガンに掲げ、中期経営目標を売上高経常利益率20%としている。
主要子会社(セグメント)は、ショップブランド「東京ミルクチーズ工場」などを展開するシュクレイ、「LeTAO」などを展開するケイシイシイ、「お菓子の壽城」などを展開する寿製菓・但馬寿、「赤い風船」などを展開する九十九島グループ、および「コンディトライ神戸」などを展開する販売子会社(東海3社、中国・九州4社、関西2社)である。
20年3月期の販売チャンネル別売上構成比は、通信販売6.4%(うちルタオ通販5.0%)、店舗販売(直営店舗、催事)43.3%、卸売(駅・空港・高速道路SAなどの小売店、代理店卸、OEM)46.6%、海外3.6%、その他0.1%だった。
駅・空港・高速道路SAなど、交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴である。またクリスマス・年末年始・バレンタイン・ホワイトデー商戦などで、下期の構成比が高い季節特性もある。
なお20年3月期のセグメント別売上高は、シュクレイが161億99百万円、ケイシイシイが127億円、寿製菓・但馬寿が105億72百万円、販売子会社が61億76百万円、九十九島グループが45億22百万円、その他(健康食品販売、台湾子会社など)が8億12百万円だった。なお香港は20年2月に事業を閉鎖し、現地法人を清算手続中である。
11月17日には、島根大学生物資源科学部横田一成教授と共同研究を行っているタデアイ(藍)について、潰瘍性大腸炎モデルマウスでの藍フラボノイドの抗炎症作用が確認されたと発表している。
■首都圏WSR化展開など重点施策を推進
重点施策としては、ハイブリッド店舗などビジネスモデル・商品・売場・販売のGTS(グレート・トランスフォーメーション・サクセス)化、免税売場拡大などインバウンド対策の強化、海外における事業モデル構築、首都圏でのWSR化展開(シュクレイの既存店売上拡大、新規出店、および催事・卸売拡大、グループ各社の主力ブランドの催事展開)などを推進している。
また新たな重点施策としてメインとニューの項目を掲げ、既存ブランド・既存店・既存商品のさらなる深化、新ブランド・新店舗・新商品で新たな世界観創出することを目指している。
重点施策の20年3月期売上高は、インバウンド(国際線ターミナル売店卸売上)が19年3月期比16.7%増の53億75百万円、海外(現地法人売上+ロイヤルティ含む国内出荷売上)が23.5%増の16億28百万円、シュクレイ(首都圏WSR化)が16.9%増の161億99百万円だった。
■21年3月期は新型コロナ影響だが下期回復基調を期待
21年3月期第2四半期累計連結業績は、売上高が前年同期比64.7%減の79億04百万円、営業利益が34億20百万円の赤字(前年同期は35億18百万円の黒字)、経常利益が19億55百万円の赤字(同35億48百万円の黒字)、純利益が12億90百万円の赤字(同22億68百万円の黒字)だった。
新型コロナウイルスの影響(店舗の臨時休業、外出・移動・帰省の自粛、インバウンド需要の消失)を強く受けて大幅減収・赤字だった。営業外収益には雇用調整助成金など助成金収入14億円を計上した。
セグメント別売上は、シュクレイが71.1%減収、ケイシイシイが51.7%減収、寿製菓・但馬寿が67.3%減収、販売子会社が77.4%減収、九十九島グループが68.5%減収、その他が44.6%減収だった。ケイシイシイの通信販売が伸長したが、総じて大幅減収だった。
なお売上高の月別増減率(前年同月比、海外子会社除く)は、4月82.4%減、5月79.0%減、6月61.5%減、7月56.7%減、8月60.8%減、9月48.6%減だった。9月に入ってGoToキャンペーン効果で緩やかな回復傾向となり、減収幅が縮小した。
また四半期別業績を見ると、第1四半期は売上高が27億16百万円で営業利益が24億09百万円の赤字、第2四半期は売上高が51億89百万円で営業利益が10億12百万円の赤字だった。第1四半期をボトムとして売上が緩やかに回復し、第2四半期は営業赤字が縮小した。
通期の連結業績予想および配当予想は11月4日に公表して、売上高が20年3月期比48.8%減の231億40百万円、営業利益が34億円の赤字(20年3月期は64億54百万円の黒字)、経常利益が13億70百万円の赤字(同64億75百万円の黒字)、純利益が9億円の赤字(同41億円の黒字)、配当が10円減配の30円(期末一括)としている。
通期ベースでも赤字が避けられないが、下期はGoToキャンペーンや経費削減などの効果で、小幅ながら黒字予想(売上高が152億35百万円、営業利益が21百万円の黒字、経常利益が5億86百万円の黒字、純利益が3億90百万円の黒字)としている。
新型コロナウイルスの影響を踏まえた下期の重点施策として、コロナ禍での消費者ニーズ変化への迅速な対応(商品対策、売場対策、販売力対策、通信販売対策、郊外店・高速道路SA・百貨店など販売チャネル対策)によるブランド訴求力向上、季節イベント商戦(クリスマス、年末年始帰省、バレンタイン、ホワイトデー)対策の強化、コスト削減による損益およびキャッシュフローの改善を推進する。
21年3月期は新型コロナウイルスの影響が避けられず厳しい状況だが、上期をボトムとして、下期からの収益回復基調を期待したい。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末現在の100株以上保有株主を対象に、保有株式数に応じて自社グループ製品や直営店舗利用優待券を贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は戻り歩調
株価は水準を切り上げて戻り歩調だ。出直り本格化を期待したい。11月24日の終値は5860円、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約0.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS680円11銭で算出)は約8.6倍、時価総額は約1824億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)