【どう見るこの相場】コロナ・ワクチンは「ベルリンの壁崩壊」か?バブル懸念薄い金融株の下ぶれに逆張り一考

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どう見るこの相場

 相場センチメントが、明らかに変わりつつあるのかもしれない。11月24日に米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)が、3万ドルの大々台に乗せ史上最高値更新ともなれば、日銀の黒田東彦総裁ではないが、リスクプレミム・マインドがいたく煽り立てられ東京市場も乗り遅れてはならじとリスクオンに拍車がかかっているようにみえるからだ。とくに、NYダウ3万ドル台乗せとなった翌日の25日9時26分に日経平均株価が、2万6706円と29年半ぶりの高値まで買われ、バブル相場崩壊後の戻り高値をつけた瞬間から、あの遥か彼方の厚い雲間に閉ざされていた1989年12月29日につけた史上最高値3万8957円を話題に取り上げる市場関係者も増えた。

 NYダウの3万ドル大々台乗せは、新型コロナウイルス感染症の世界的な再拡大とコロナ・ワクチンの実用化が綱引きするなか、米製薬大手のファイザー社のワクチンが、緊急使用許可を取得して早ければ12月11日にも接種が開始されるほか、バイオベンチャーのモデルナのワクチンも、高い有効性を示しており、ワクチンの普及で経済活動の正常化が、一気に進む経済のダイナミズムを期待してのものだ。

 このコロナ・ワクチンの株価インパクトは、1989年のバブル相場時の記憶をまざまざと蘇らせてくる。あの3万8957円の最高値は、その直前の11月9日に起こった「ベルリンの壁崩壊」が後押し材料となっており、今回のワクチンは、タイミング的にも相場ステージ的にも相似形となっているからだ。1989年の日経平均株価は、10月に3万5000円台に乗せ、その暴騰ぶりからさすがに高値もみ合いを余儀なくされていたが、「ベルリンの壁崩壊」が冷戦終結につながり、「平和の配当」による防衛投資から民間投資への転換期待で日経平均株価をもう一押し、さらに3500円持ち上げ、バブル相場が、スーパー・バブル相場に突き進むするエンジンとなった。このわずか2カ月弱の余計な棒上げがなければ、1990年年明けからの株価急落は、もう少しモデラートになったと悔やんだことも事実である。

 今回のコロナ・ワクチンが、経済のファンダメンタルズからかい離したバブル相場を演出するかどうかは、今後の問題である。米国では、12月14日の大統領選挙の選挙人投票でバイデン次期大統領の勝利が確定して政権移行が動き始め、感染予防と経済活動の正常化の両立を図るべく主要閣僚の指名を進め、積極的な経済対策や金融政策を発動させる期待材料が続く。一方、わが東京市場では、新規感染者や重症患者が過去最高を更新し、医療体制の逼迫なども懸念されているが、まだ「GoToキャンペーン」をどう変更させるか政府と地方自治体の綱引きが続くなど出足が遅い。米国市場のようにワクチン普及なら景気敏感株、コロナ禍悪化ならグロース株ときれいに棲み分けができるかどうか不透明である。

 ただ銘柄個々のファンダメンタルズに焦点を当てれば、バブル相場の心配をする必要はないようである。1989年のバブル相場では、全面高のなか投資採算尺度のPER、PBR、配当利回りからして適正株価を大きく超え、例えば鉄道会社ならレールの下の土地まで時価評価して含み資産を計算して株高材料とする「一億総不動産屋化」が専らであった。ところが今回は、むしろコロナ禍のなか業績を上方修正する銘柄も続出し、PER・PBR・配当利回りでも大きく出遅れている銘柄が数多いからだ。

 なかでも時価総額ランキングの上位に位置するメガバンク株や保険株は、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が、12月にも金融緩和策を決定し、財務長官にイエレン前FRB議長を選任するなどの下馬評で先行きの金利低下、利ザヤ縮小、運用環境の悪化などを懸念して、株価は足元で下ぶれた。しかし、高配当利回り一つとっても、先行き金利が低下するなら、逆にクローズアップされるはずで、米国の財政・金融政策とトレード・オフの関係で弱気観測もある分だけ蓄積するエネルギーも大きそうだ。ここは業績を上方修正済みでバリュー株妙味満載の金融株にスタンバイし、さらに同じバリューエーションをキープする著名投資家御用達の大手商社株に選別投資するのも一考余地がありそうだ。

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