- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- クリナップは出直り期待、21年3月期利益上振れの可能性
クリナップは出直り期待、21年3月期利益上振れの可能性
- 2020/12/7 08:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームも展開している。中期ビジョンに「暮らし価値創造企業Cleanupへの変革」を掲げ、収益拡大・高収益化を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を受けるが、第2四半期の利益が計画超であり、通期利益も上振れの可能性が高いだろう。株価は3月の年初来安値を割り込まずに切り返しの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。
■システムキッチン大手でシステムバスルームも展開
システムキッチンの大手で、厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。
中高級品に強みを持ち、厨房部門はステンレスキャビネットキッチンのセントロ、ステディア、システムキッチンのラクエラ、コンパクトキッチンのコルティ、浴槽・洗面部門はバスルームのアクリアバス、ユアシス、洗面化粧台のティアリスなどを主力製品としている。
20年3月期の部門別売上構成比は厨房部門が78%、浴槽・洗面部門が15%、その他が7%だった。全国のショールーム数は102ヶ所で、来場組数は395千組だった。中高級品市場での競争力強化に向けて、20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。20年10月にはホームページ上に「オンラインショールーム」をオープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。20年3月期の販売ルート別売上構成比(単体)は、一般ルート(工務店・リフォーム)が80.7%、ハウスメーカーが14.6%、直需(マンション)が4.7%だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
■中期ビジョンは「暮らし価値創造企業Cleanupへの変革」
中期経営計画(18年~20年)では、ビジョンに「暮らし価値創造企業Cleanupへの変革」を掲げ、収益拡大・高収益化を目指している。
重点施策としては、中高級市場での競争力強化、高級・超高級市場への本格参入に向けた商品ラインナップの変革、シェア回復に向けたフラッグシップモデルの刷新、ショールームにおける価値提供の強化、アジア諸国向けステンレスキャビネットの本格展開、新たな販売チャネルとしてのECビジネス立ち上げなどを推進している。
また業務提携を活用し、新規事業として富裕層向け海外キッチン事業、他業種とコラボしたダイニング事業を展開する。
■21年3月期は利益上振れの可能性
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月6日に公表)は、売上高が20年3月期比4.2%減の1030億円、営業利益が72.0%減の7億円、経常利益が68.6%減の8億円、純利益が72.7%減の4億円としている。配当予想は20年3月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)である。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比13.0%減の476億72百万円、営業利益が96.2%減の85百万円、経常利益が92.4%減の1億71百万円、純利益が1億42百万円の赤字(前年同期は15億72百万円の黒字)だった。
新型コロナウイルスの影響で2桁減収(厨房部門が12.8%減収、浴槽・洗面部門が16.4%減収)となり、大幅営業・経常減益、最終赤字だった。ただし売上高、各利益とも計画を上回った。売上高は新しい生活様式の普及などで、減収率が想定よりも小幅にとどまった。減収によって売上総利益も減少したが、営業政策見直しや投資抑制などで販管費も減少したため、営業・経常利益は赤字予想から一転して黒字で着地した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高220億27百万円で営業利益5億07百万円の赤字、第2四半期は売上高256億45百万円で営業利益5億92百万円の黒字だった。
通期も新型コロナウイルスの影響で減収減益予想だが、半期ベースで見ると上期が8億円の赤字に対して、下期は15億円の黒字の計画としている。競争力強化に向けてシステムキッチンのセントロやステディア、20年6月リニューアルしたコンパクトキッチンのコルティなど高付加価値商品を順次投入している。さらにリターナブル梱包やシュリンク梱包の活用によって段ボール量を削減し、経費削減とともに環境対応を推進する方針だ。
売上が回復傾向であり、第2四半期累計の利益が計画を大幅に上回ったことを勘案すれば、通期も利益上振れの可能性が高いだろう。
■株価は出直り期待
株価は3月の年初来安値を割り込まずに切り返しの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。12月4日の終値は478円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS10円84銭で算出)は約44倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1379円67銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約179億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)