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インフォマートは上値試す、中期収益拡大期待
- 2020/12/9 08:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。12月8日にはBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が50万社を突破したと発表している。20年12月期は新型コロナウイルスや先行投資の影響で大幅減益予想だが上振れ余地がありそうだ。利用企業数が増加基調であり、電子契約やDXの流れも追い風として中期的に収益拡大を期待したい。株価は11月の上場来高値圏から一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを運営
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームとして、受発注(従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム)、規格書(食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール)、請求書(請求書発行・受取業務を電子化したシステム)、商談(全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト)、契約書(契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステム)を運営している。
19年12月期セグメント別売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注と規格書)80%、BtoB-PF ES事業(請求書と商談)20%、その他0%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業137%、BtoB-PF ES事業▲36%、その他▲0%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。新サービスとして、19年10月に食材自動発注、20年1月に電子請求書早払い、20年3月に他業界向け受発注をリリースした。
なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資した。
20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始すると発表した。なお23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。
20年9月にはGINKANとの協業を発表した。飲食業界のマーケティング支援から業務管理までのDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す。また20年10月には全国の地方銀行21行とのビジネスマッチング契約を拡大した。20年12月にはSCSK<9719>と、企業の経理部門の請求書電子データ化やテレワーク導入支援を目的として販売代理店契約を締結した。
■営業利益率30%以上目標
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で継続利用率も高い。19年12月末の全体の利用企業数は38万7624社、事業所数は82万4920事業所、流通金額は11兆2690億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
12月8日には、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が、サービス開始(15年1月)から5年で50万社を突破したと発表している。23年から導入される適格請求書保存方式(インボイス制度)も背景として、電子請求書のニーズが拡大基調である。
中期業績目標には売上高100億円突破、営業利益30億円超、営業利益率30%以上を掲げている。BtoBプラットフォームの徹底的拡充・価値増大に取り組む。また将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組む方針だ。
■20年12月期大幅減益予想だが上振れ余地、中期収益拡大期待
20年12月期連結業績予想(7月31日に下方修正)は、売上高が19年12月期比1.5%増の86億70百万円、営業利益が54.0%減の11億35百万円、経常利益が54.9%減の11億10百万円、純利益が56.1%減の7億44百万円としている。配当予想は3.71円(第2四半期末1.85円、期末1.86円)である。
第3四半期累計は売上高が前年同期比2.2%増の64億10百万円、営業利益が48.7%減の10億52百万円、経常利益が48.7%減の10億45百万円、純利益が53.8%減の7億17百万円だった。
売上は、BtoB-PF ES事業が請求書有料契約企業数の増加で19.7%増収と順調に伸長したが、BtoB-PF FOOD事業が新型コロナウイルスの影響で2.1%減収だった。利用企業数が増加して定額制システム利用料は増加したが、飲食店の食材仕入が減少して食材流通金額が減少したため、売り手企業の従量制受発注システム使用料が減少した。利益はサーバー増強や営業サポート人員増強など、先行投資コストが増加して大幅減益だった。
ただし計画に対しては、売上面では新型コロナウイルス影響からの回復が想定より速く、コスト面では地方向けTVCMの前倒しで販売促進費が増加したが、ソフトウェア償却費が第4四半期に期ズレとなった。この結果、利益も計画超だった。20年9月末時点の利用企業数は19年12月末比8万7995増加の47万5619社、事業所数は13万3793増加の95万8713事業所となった。
第3四半期累計の進捗率は売上高73.9%、営業利益92.7%である。当面は新型コロナウイルスに伴う飲食業の活動収縮の影響を受ける形だが、売上回復が想定より速く、第3四半期累計が計画超だったことを考慮すれば通期上振れ余地がありそうだ。さらに利用企業数が増加基調であり、電子契約やDXの流れも追い風として中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価(20年1月1日付で株式2分割)は11月の上場来高値圏から一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。12月8日の終値は993円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS3円26銭で算出)は約305倍、今期予想配当利回り(会社予想3円71銭で算出)は約0.4%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS48円64銭で算出)は約20倍、時価総額は約2576億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)