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JSPは戻り試す、特別損失計上で21年3月期純利益下方修正だが、営業・経常利益を上方修正
- 2020/12/15 08:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品大手である。中期成長ドライバーとして、自動車部品用ピーブロックなど高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。12月14日に21年3月期連結業績予想の修正を発表した。特別損失計上で純利益を下方修正したが、自動車部品用ピーブロックの需要拡大で営業・経常利益を上方修正した。営業・経常利益は従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みとなった。収益回復基調を期待したい。株価は安値圏だが徐々に下値を切り上げている。営業・経常利益の上方修正を好感して戻りを試す展開を期待したい。
■発泡プラスチック製品大手
発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業37%、ビーズ事業61%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
なお11月18日に、欧州のグループ会社における資金流出事案(発生時期20年10月下旬から11月上旬)を発表した。犯罪に巻き込まれた可能性が高く、捜査に全面協力するとともに、流出した資金の保全・回収手続に全力を尽くすが、損失見込額は最大約10億円としている。また12月14日に、米国の子会社JSP International Groupの電子線架橋ポリエチレンシート事業について、需要拡大が見込めず、生産効率改善も進展しないため、撤退して会社清算(21年6月末予定)すると発表した。
■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進
長期ビジョン「VISION2027」で、目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げ、成長戦略を推進している。
基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
新製品ではミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売し、デンカ<4061>と共同開発した建築構造物向け軽量・不燃ボード「スチロセメン」の早期製品化を目指している。
また道路擁壁として多くの実績を積み上げている「J-ウォールブロック」は、NETIS(新技術情報提供システム)に登録された。サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。
■21年3月期は純利益下方修正だが、営業・経常利益を上方修正
21年3月期の連結業績予想(7月31日に売上高を下方修正、営業利益を上方修正)について、12月14日に修正(売上高を据え置き、営業・経常利益を上方、純利益を下方修正)し、売上高が20年3月期比11.8%減の1000億円、営業利益が23.3%減の39億円、経常利益が25.1%減の39億円、そして純利益が80.8%減の7億円とした。配当予想は据え置いて、20年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
純利益は特別損失計上で15億円下方修正(従来予想は22憶円)して大幅減益予想とした。11月8日発表した欧州のグループ会社における資金流出事案に関する最大損失見込額10億円、および米国子会社の電子線架橋ポリエチレンシート事業撤退・会社清算に伴う子会社整理損の概算見積額13億50百万円を計上する。
ただし営業・経常利益を各7億円上方修正(従来予想は各32億円)した。欧州における21年からの自動車排ガス規制強化に伴って、自動車メーカーが年内の駆け込み生産を行っているため、自動車部品用ピーブロックの需要が急拡大している。
なお第2四半期累計は、売上高が前年同期比14.6%減の480億80百万円、営業利益が48.1%減の12億84百万円、経常利益が48.7%減の12億68百万円、純利益が52.6%減の9億08百万円だった。新型コロナウイルスの影響による世界経済収縮、ロックダウンに伴う生産活動への制約などで、自動車分野を中心に需要が大幅減少した。特にビーズ事業が19.3%減収で63.1%減益と低調だった。押出事業は5.7%減収だが固定費削減効果で3.7%増益だった。
21年3月期は新型コロナウイルスの影響で減収減益予想だが、営業・経常利益は従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みとなった。収益回復基調を期待したい。
■株価は戻り試す
株価は安値圏でモミ合う形だが徐々に下値を切り上げている。営業・経常利益の上方修正を好感して戻りを試す展開を期待したい。12月14日の終値は1574円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円48銭で算出)は約67倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2729円87銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約494億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)