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ミロク情報サービスは売られ過ぎ感、21年3月期は利益再上振れの可能性
- 2020/12/18 08:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売・サービスを展開し、クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革や新規事業の確立を推進している。21年3月期は特需の反動や新型コロナウイルスの影響で営業・経常減益予想だが、利益再上振れの可能性が高いだろう。DXの流れも追い風として中期的に収益拡大を期待したい。株価は年初来安値を更新する場面があったが売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。
■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービスが主力
会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。
20年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高が63%(システム導入契約時のハードウェア14%、ソフトウェア35%、システム導入支援サービスなどのユースウェア14%)、サービス収入が31%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料5%、企業向けソフトウェア運用支援サービス14%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他が6%だった。
収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、20年3月期の新規企業向け売上高は19年3月期比32.3%増加、新規企業向け売上高比率は4.7ポイント上昇して28.8%となった。
■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進
2025年度に向けた経営戦略のポイントとして、既存ERP事業におけるビジネスモデル変革(クラウドサービス・サブスクリプションモデルへ)、第2の柱となる新規事業の確立(M&Aによる事業領域拡大とグループシナジー発揮)、価値創造とイノベーションへの挑戦、サステナブルな社会の実現を掲げている。
重点施策として、会計事務所・金融機関との強固なネットワークを通して中小企業に総合的なクラウドソリューションを提供する「bizskyプラットフォーム」事業の拡大、会計事務所が中小企業のCFOの役割を担って資金繰りBPOサービスを提供できる仕組み(ファイナンス・サービス)の構築、地方創生・地域経済活性化に向けた地域金融機関とのパートナーシップ強化、事業承継支援サービスの体制強化、資本提携・M&Aなどを積極展開している。
20年4月には、組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化した。成長が見込まれる組織設計・人事制度改革コンサルティングのソリューション分野に事業領域を拡大する。20年5月にはフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTが、セントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化した。
20年10月には、送金アプリ「pring(プリン)」を展開するpring社と資本業務提携した。顧客ニーズに即した新たなサービスの開発・提供を目指し、共同で研究開発を行う。20年11月にはリーガルテック企業であるリセと資本業務提携した。AIを活用したリセのクラウド型リーガルテックサービスを提供する。
■社会全体のDXを推進
なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。
12月15日には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。
■21年3月期利益予想は再上振れの可能性
21年3月期連結業績予想(10月30日に売上高を下方、利益を上方修正)は、売上高が20年3月期比5.6%減の335億円、営業利益が15.8%減の44億円、経常利益が18.1%減の43億50百万円、純利益がソフトウェア評価損の一巡で39.7%増の25億70百万円としている。配当予想は20年3月期と同額の38円(期末一括)である。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比12.2%減の165億22百万円、営業利益が35.8%減の24億89百万円、経常利益が36.3%減の25億03百万円、純利益が47.8%減の13億59百万円だった。
前年のWindows7サポート終了に伴うPC入れ替え特需の反動減に加えて、新型コロナウイルスの影響で営業・システム導入支援活動が制約を受けた。減収に伴って売上総利益が減少し、人員増に伴う販管費の増加も影響して営業・経常減益だった。ただし新規顧客開拓やサブスクリプションモデルの推進でストック型のサービス収入が増加したため、売上総利益率は3.1ポイント上昇した。
システム導入契約売上高は22.7%減収(ハードウェア32.8%減収、ソフトウェア20.3%減収、ユースウェア19.1%減収)、サービス収入は11.0%増収(会計事務所向け総合保守サービスTVS11.6%増収、ソフト使用料26.3%増収、企業向けソフトウェア運用支援サービス9.9%増収、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入6.4%増収、サプライ・オフィス用品12.0%減収)だった。新規企業向けの売上高比率は4.6ポイント上昇して31.2%となった。
通期は、新型コロナウイルスの影響による関係会社の業績低迷で売上高を下方修正したが、ストック型サービス収入の好調や原価低減・経費削減効果で第2四半期累計の利益進捗率が高水準だったため利益予想を上方修正した。従来予想に比べて営業・経常減益幅が縮小する見込みだ。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は営業利益が56.6%、経常利益が57.5%である。下期はクラウドサービスやERP製品のサブスクリプションモデルでの提供を一層推進し、サービス収入の増加を強化する方針だ。通期利益予想は再上振れの可能性が高いだろう。DXの流れも追い風として中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は年初来安値を更新する場面があったが売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。12月17日の終値は2023円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS83円45銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS615円97銭で算出)は約3.3倍、時価総額は約704億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)