【どう見るこの相場】「ウイルスvsワクチン」のバトル相場はインカムゲイン・シフトで越年も一法

どう見るこの相場

 「上値が重い」のか、それとも「下値が固い」のか相場に聞き耳をそばたてている投資家は多いに違いない。IPO(新規株式公開)祭り」の神輿を担いで意気盛んなIPOマニアはいざしらず、オーソドックスな投資家は、年内撤収の買いポジションの解消か、それとも「株券を枕」の越年作戦か、どちらが正解か年内残り8営業日、判断を急ぐ必要があるためだ。

 この帰趨は、もちろん「新型コロナウイルスVSコロナ・ワクチン」のバトル次第である。米国ではファイザーのワクチンに続き製薬ベンチャーのモデルナが開発したワクチンも緊急使用が許可され、さらにジョンソン&ジョンソンのワクチンも、後期試験が進展し、国内でもファイザーのワクチンが承認申請された。ワクチン効果で経済活動正常化の確度が高まってくれば、上場来高値を揃って更新中の米国株価はもちろん、29年8カ月ぶりの高値まで進んできた日経平均株価の上値展望も拓けてくる。

ただ、バイデン新政権体制への移行が着々と進む米国とは異なり、ややこしいのが国内政局動向である。新型コロナウイルス感染症への後手後手の対応などが響いて、菅義偉内閣の内閣支持率が急低下し不支持率と接近したことなどから、菅首相は、「GoToトラベル」の全国一斉停止を決定した。しかし新規感染者、重症者の過去最高更新に歯止めが掛かっておらず、こんなことを想像したくはないが、仮に東京都の新規感染者が、1000人の大台を超えたらとしたらゾッとする。消費者心理は、第1波、第2波のような巣ごもりどころか、穴ごもり・冬眠状態にまで悪化して閉塞感を強め、市場センチメントにまで影響しないかということだ。現在の国内政治状況は、「自公一強体制」でまさかと思うが、かつて衆議院と参議院の多数派が異なった「ねじれ国会」当時は、内閣時支持率が10%変動すると日経平均株価が1000円上下するなどとする計算式が流布したことがあり、これが再現する悪い初夢とならないことを祈るばかりである。

 政局不安は、海外投資家が最も忌避する株価材料で、「キャピタル・ゲイン(値上がり益)」の先行きが、「キャピタル・ロス(値下がり損)」へと不安定化する展開にもつながる。ということで仮にこうした不透明化が懸念される環境下では、これに備えて「インカム・ゲイン(配当・利子収入)」のウエートを高めることも、投資セオリーの一つである。そして足元の株価に聞き耳を立てると、確かにこの配当権利取りが強まる先駆例が相次いで出てきたのである。代表は、今年12月16日に6年2カ月ぶりに再上場されたローランド<7944>(東1)だ。MBO(経営陣による株式公開買い付け)に協力した投資ファンドのエグジット(出口)案件として嫌われ、公開価格は、仮条件の上限に達せず3100円で決定され、初値はその公開価格を下回る2954円でつけ、上場来安値2851円まで売られる不調な初値形成となった。

 ところがこの上場来安値を底に、上場3日目の前週末18日には上場来高値3380円まで買い直されて公開価格をクリアし、上場来安値から短期500円超高したのである。ただしこの急反騰には、少なからず誤解も紛れ込んでいると推察している。というのも一部の配当利回り率ランキングで、同社の今2020年12月期の年間配当を1116円としているからである。確かに同社は、中間配当を1080円として実施済みだが、このあと今年9月に1対30の株式分割を実施し、期末配当は36円としている。分割前の中間配当と期末配当を単純合算すれば年間配当は1116円となり年間配当利回りは33%超と全銘柄トップとなり、これがIPO後のセカンダリーでの高人気につながったフシがあるのである。もちろん同社の年間配当は、株式分割を勘案して72円とするのが常道だろう。

 しかしこのイレギュラーなローランドを除いても12月期決算会社の配当権利取りを意識する動きは活発になっている。とくにこれは、今年11月以降に期末配当を増配した配当異動銘柄に顕著になっており、例えば今年12月15日に増配を発表したツバキ・ナカシマ<6464>(東1)は、今期業績の上方修正も伴っていただけにストップ高する好反応となった。11月以降に増配、復配を発表した銘柄はザっと28社に達しており、ツバキ・ナガシマ並みに高評価される銘柄も出てきそうだ。また東証全市場ベースの高配当利回りランキングの上位にランクインしている12月期決算会社は、上から20番目の銘柄でも、年間配当利回りが3.93%となっており、バリュー株妙味を示唆しており、12月28日の権利付き最終日に向け浮上を開始する展開も想定される。

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