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うかいは業績悪化懸念を織り込み済み、新型コロナ影響だが緩やかな回復期待
- 2020/12/22 08:36
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
うかい<7621>(JQ)は高級和食・洋食料理店を主力として、物販事業および文化事業も展開している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を強く受け、感染再拡大の影響も懸念されて厳しい状況だが、緩やかな回復を期待したい。なお影響長期化に備えて取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、資金面の不安はない。株価は戻り高値圏から反落してモミ合う形だ。大きく下押す動きは見られない。業績悪化懸念は織り込み済みだろう。出直りを期待したい。
■高級和食・洋食料理店が主力
高級和食・洋食料理店を主力として、物販事業および文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。20年3月期末時点の店舗数は和食7店舗、洋食8店舗である。物販事業は「アトリエうかい」の常設店、ECサイト、百貨店の催事出店での販売などを展開している。
なおセグメント区分は事業本部(和食事業、洋食事業、物販事業)および文化事業としている。20年3月期の売上高構成比は、事業本部が92%(和食39%、洋食43%、物販・その他11%)で、文化事業が8%だった。収益面では第3四半期の構成比が高い季節特性がある。
海外は、17年11月台湾・高雄市のホテル「シルクスクラブ」内に1号店「うかい亭 高雄」をグランドオープン、19年1月台湾・台北市の商業施設「微風南山」内に2号店「ザ・ウカイ・タイペイ」をオープンしている。
■成長戦略としてブランド向上や新サービス創造を推進
中期成長戦略として、ブランドの向上と確立(オンリーワンの店づくり)、安定的な収益基盤の再構築、戦略的・中長期的な人材育成、財務体質の改善を推進している。
具体的には、飲食事業における顧客ニーズ多様化に対応した新メニューの開発、郊外店舗の集客力の底上げ、物販事業における「アトリエうかい」の成長促進、文化事業におけるイベント企画強化など、収益力向上に向けた施策を推進する方針だ。
なお新型コロナウイルスを契機とする「新しい生活様式」に対応してテイクアウト販売も開始している。今後は「GoToキャンペーン」への参画、テイクアウト・ECをはじめとする販売チャネルの拡充など、新たなサービスの形の創造にも積極的に取り組む方針としている。
12月18日には「アトリエうかい」が、21年1月15日~2月14日まで、JR名古屋タカシマヤで開催される「2021アムール・デュ・ショコラ」に初出店すると発表している。
■21年3月期は新型コロナ影響だが緩やかな回復期待
21年3月期第2四半期累計の業績(非連結)は、売上高が前年同期比52.8%減の32億93百万円で、営業利益が9億18百万円の赤字(前年同期は29百万円の黒字)、経常利益が8億94百万円の赤字(同11百万円の黒字)、純利益が11億72百万円の赤字(同16百万円の黒字)だった。
新型コロナウイルスの影響で大幅減収・赤字だった。特別利益には19年10月の台風19号によって被災した資産に係る保険金収入1億23百万円、雇用調整助成金収入1億75百万円、特別損失には臨時休業による損失(人件費、賃借料、減価償却費など店舗休業期間中に発生した店舗固定費)5億58百万円を計上した。
四半期別の売上高を見ると、第1四半期(4月~6月)は緊急事態宣言に伴って4月~5月に店舗臨時休業を実施したため8億53百万円だったが、6月から全店舗の営業を再開して第2四半期(7月~9月)は24億40百万円となり、売上回復傾向を強めた。
なお全社合計ベースの月次売上状況(前年比)を見ると、20年4月が8.6%、5月が6.9%、6月が56.8%、7月が65.1%、8月が71.2%、9月が78.7%、10月が94.4%(台風19号の影響を受けなかった一昨年との比較では83.1%)、11月が85.1%(同81.1%)となっている。4月と5月は緊急事態宣言で大幅に落ち込んだが、営業再開後の6月以降は緩やかに減収幅が縮小している。
通期の業績予想は新型コロナウイルスの影響を強く受けるため未定としている。感染再拡大の影響も懸念されて厳しい状況だが、緩やかな回復を期待したい。
■資金面の不安なく、リスクマネジメントを評価
なお新型コロナウイルスの影響が長期化する可能性に備えて、20年4月および6月に取引金融機関4行と総額73億円のコミットメントライン契約を締結しており、資金面の不安はない。
20年3月期有価証券報告書の「事業等のリスク」欄には、「新型コロナウイルスの影響で売上高が著しく減少し、継続企業の前提に関する重要事象を生じさせるような状況が存在しているが、財務基盤を安定させるためキャッシュ・フロー改善の推進、設備投資や経費の見直しなどの対策を行っていることに加えて、コミットメントライン契約を締結して機動的な資金調達手段を確保していることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないと判断している」との内容が記載されている。資金面に不安はなく、リスクマネジメントが強化されていることを評価したい。
■株主優待制度は毎年9月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じて優待券などを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は業績悪化懸念を織り込み済み
株価は戻り高値圏から反落してモミ合う形だ。ただし大きく下押す動きは見られない。業績悪化懸念は織り込み済みだろう。調整一巡して出直りを期待したい。12月21日の終値は3030円、前期実績PBR(前期実績のBPS860円44銭で算出)は約3.5倍、時価総額は約159億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)