【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クレスコは16年3月期業績の増額余地を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クレスコ<4674>(東1)はビジネス系のソフトウェア開発を主力としている。株価は16年3月期増益予想を好感して12日に年初来高値2169円まで上伸した。その後も高値圏で堅調に推移している。指標面に割高感はなく、16年3月期業績予想の増額余地を評価して上値追いの展開だろう。

 ビジネス系のソフトウェア開発事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。

 中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。

 オリジナル製品・サービスに関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、14年6月に開始したSAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」の拡販を推進している。

 15年3月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を発表し、5月26日から販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。

 また5月12日にはM2M分野で話題のビーコンを手軽に導入できるIoT基盤プラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」を開発したと発表している。

 得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeedと技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム スタッフを持分法適用会社化した。

 15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受ける(出資比率12.1%)と発表した。提携関係を一層強固にする。また15年4月には、SAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%を取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。

 5月13日には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入すると発表した。アップゾーンが提供するスマートフォン向けのアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。

 5月8日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比13.8%増の250億63百万円、営業利益が同40.8%増の20億13百万円、経常利益が同33.6%増の22億40百万円、純利益が同49.3%増の14億05百万円だった。

 配当予想(2月23日に増額修正)は前期比8円増配の年間38円(第2四半期末17円、期末21円)とした。配当性向は28.5%となる。ROEは同3.4ポイント上昇して14.1%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して60.8%となった。

 全般的に受注が拡大し、特にソフトウェア開発事業で金融・保険分野、組込型ソフトウェア開発事業でカーエレクトロニクス分野が好調に推移した。オリジナル製品・サービスの拡販、グループ連携の強化、さらに効率化効果も寄与して2月6日の増額修正値を上回る大幅増収増益だった。

 セグメント別売上高は、ソフトウェア開発事業では主力の金融・保険分野が同31.6%増の103億30百万円、公共・サービス分野が同1.3%増の50億47百万円、流通・その他分野が同4.4%減の53億26百万円だった。また組込型ソフトウェア開発事業では通信システム分野が同9.7%減の9億64百万円、カーエレクトロニクス分野が同93.4%増の15億55百万円、情報家電・その他の分野が同4.1%増の17億20百万円だった。商品・製品販売は同18.6%増の1億17百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比7.7%増の270億円、営業利益が同9.3%増の22億円、経常利益が同7.1%増の24億円、純利益が同11.7%増の15億70百万円で、配当予想が同2円増配の年間40円(第2四半期末20円、期末20円)としている。配当に関しては特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額の配当を継続的に実現することを目指している。

 ソフトウェア開発事業で金融・保険分野や公共・サービス分野、組込型ソフトウェア開発事業でカーエレクトロニクス分野の好調が牽引して増収増益見込みだ。会社予想には保守的な印象も強く増額余地がありそうだ。

 国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買取契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)については、3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。第2回新株予約権については3月18日および5月12日に行使許可を発表している。

 また3月30日には、6月19日開催予定の第27回定時株主総会での承認を前提として、監査等委員会設置会社に移行すると発表している。

 株価の動きを見ると、16年3月期増収増益予想を好感する形で5月12日に年初来高値2169円まで上伸した。その後も高値圏1900円~2000円近辺で堅調に推移している。

 5月28日の終値1926円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS142円84銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS990円11銭で算出)は1.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線がサポートラインとなって切り返し、一旦割り込んだ13週移動平均線を素早く回復した。長期上昇トレンドを確認した形だ。指標面に割高感はなく、16年3月期業績予想の増額余地を評価して上値追いの展開だろう。

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