【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ゼリア新薬工業は16年3月期は大幅増益予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野を中心に展開する製薬会社である。株価は3月の戻り高値圏から反落して水準を切り下げたが、調整の最終局面だろう。16年3月期の大幅増益予想を評価して反発展開が期待される。

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。

 医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」、H2受容体拮抗剤「アシノン」、亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」を主力としている。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。コンシューマーヘルスケア事業は「コンドロイチン群」「ヘパリーゼ群」「ウィズワン群」を主力としている。

 M&Aを活用してグローバル展開も推進し、08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月には、ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約を締結し、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。

 新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。

 消火器分野の「Z-206(アサコール)」は協和発酵キリンと共同で、潰瘍性大腸炎を対象に用法・用量を追加するフェーズⅢを実施している。中国での開発はフェーズⅢを終了して13年5月に承認申請済みである。自社オリジナル品の「Z-338(アコファイド)」は、欧州において機能性ディスペプシアを対象としたフェーズⅢを実施している。

 エーザイ<4523>から導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」については、逆流性食道炎を対象としたフェーズⅡを開始した。子宮頸癌を対象とする「Z-100」は日本を含むアジア地域におけるフェーズⅢ国際共同治験を開始、膵臓癌を対象とする「Z-360」は日本を含むアジア地域におけるフェーズⅡ国際共同治験を開始、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズⅠbを開始した。

 14年8月にはエーザイの新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。

 14年9月には、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。

 15年3月にはコンビニエンスストア向け滋養強壮ミニドリンク剤「ヘパリーゼ・アミノ」を販売開始した。清涼飲料水「ヘパリーゼW」「ヘパリーゼWハイパー」および栄養補助食品「ヘパリーゼW粒タイプ」を販売しているが、滋養強壮ミニドリンク剤「ヘパリーゼ・アミノ」は疲労回復のための栄養補給を訴求した「ヘパリーゼ」ブランド初の指定医薬部外品である。

 また15年4月には、ベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%取得を発表した。当社グループのアジア地域における事業展開の際の一つの拠点とする。

 5月8日に発表した前期(15年3月期)の連結業績(4月28日に2回目の減額修正)は、売上高が前々期比1.6%減の610億12百万円、営業利益が同60.6%減の26億78百万円、経常利益が同59.3%減の27億70百万円、純利益が同51.5%減の25億57百万円だった。

 配当予想は年間30円(第2四半期末15円、期末15円)とした。13年10月1日付の株式分割(1株を1.1株に分割)を考慮すると実質的に前期比2円50銭増配で、配当性向は62.3%となる。ROEは同6.9ポイント低下して4.2%、自己資本比率は同6.0ポイント上昇して65.0%となった。

 売上面では、コンシューマーヘルスケア事業が堅調だったが、医療用医薬品事業の長期収載品が薬価改定や後発品使用促進の影響を受けて想定以上に苦戦した。また13年6月に販売開始した機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」も、市場構築が計画に対して遅れた。

 利益面では、ライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、広告宣伝費の増加に加えて、成長戦略に欠かせない新薬パイプラインの充実を図るため当初予定していなかった新規開発テーマの導入費用が発生し、ヨーロッパとアジア地域で実施している治験の進捗などで研究開発費が予想を上回った。研究開発費は同32.4%増の98億82百万円だった。

 セグメント別売上高は、医療用医薬品事業が同7.3%減の337億59百万円、コンシューマーヘルスケア事業が同6.7%増の270億95百万円、その他事業が同10.6%減の1億57百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億15百万円、第2四半期(7月~9月)154億21百万円、第3四半期(10月~12月)156億46百万円、第4四半期(1月~3月)152億30百万円、営業利益は第1四半期8億58百万円、第2四半期14億21百万円、第3四半期10億61百万円、第4四半期は6億62百万円の赤字だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比6.5%増の650億円、営業利益が同49.3%増の40億円、経常利益が同26.3%増の35億円、純利益が同17.3%増の30億円、配当予想が前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。

 コンシューマーヘルスケア事業が引き続き好調に推移し、医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」の国内外での伸長、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場浸透を見込んでいる。研究開発費や広告宣伝費が増加するが、増収効果で吸収して大幅増益見込みだ。収益は改善基調だろう。

 株主優待については毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。1000株以上所有株主に対してはA・B・C・D・Eコースの中からいずれか1コース選択、100株以上~1000株未満所有株主に対してはFコースを贈呈する。

 株価の動きを見ると、3月の戻り高値2146円から反落して水準を切り下げた。5月18日には年初来安値となる1842円まで下押した。ただし調整の最終局面だろう。

 5月28日の終値1853円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS56円48銭で算出)は33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1178円00銭で算出)は1.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると、再び13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んで安値圏に回帰したが、調整の最終局面だろう。16年3月期の大幅増益予想を評価して反発展開が期待される。

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