Delta-Fly Pharmaは新規抗がん剤開発目指す

 Delta-Fly Pharma<4598>(東マ)は新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質を利用するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。臨床試験が進展して早期の上市・収益化を期待したい。なお12月8日に第三者割当による第4回新株予約権(行使価額修正条項付および停止指定条項付)発行を発表している。株価は戻り高値圏から反落して安値圏に回帰した形だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャー

 新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質をモジュール(構成単位)として利用し、創意工夫を加えてアセンブリ(組み立て)することで、新規抗がん剤を創製するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。基礎研究がほとんど不要となり、臨床での有効性と安全性の予測が可能となるため、一般的な抗がん剤開発に比べて研究開発の期間が短く、かつ臨床試験で失敗する開発リスクも低減される。

 研究開発のマネジメント業務に集中し、具体的な業務については外部の研究開発受託会社や製造受託会社に委託するという効率的な運営を特徴としている。研究開発段階では提携製薬会社からの契約一時金、マイルストーン、開発協力金が主な収入となり、提携対象製品が上市に至った場合は売上高に応じたロイヤリティ収入を得る。

■開発中のパイプライン

 開発中のパイプラインは、難治性・再発急性骨髄性白血病を対象疾患とする抗がん剤候補化合物DFP-10917(米国で臨床第3相試験中、日本で臨床第1相準備中)、肺がん等を対象疾患とするDFP-14323(ウベニメクスの適応追加、日本で臨床第2相試験中)、膵がん等の固形がんを対象疾患とするDFP-11207(米国で臨床第2相準備中)、固形がん・血液がんを対象疾患とするDFP-14927(米国で臨床第1相試験中)、腹膜播種移転がんを対象疾患とするDFP-10825(前臨床試験中)、固形がんを対象疾患とするがん微小環境改善剤DFP-17729(日本で臨床試験準備中)である。

 DFP-10917は日本で日本新薬、DFP-14323は日本で協和化学工業と提携している。

 DFP-14323については、日本国内での製造販売権を付与している協和化学工業から19年8月、既承認薬ウベニメクスとの生物学的同等性試験によって同等性を検証し、ウベニメクスの後発医薬品の製造承認を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請したとの報告を受けた。協和化学工業は申請後1年程度で製造承認取得を見込んでいる。

 20年3月には国内臨床第2相試験の症例登録が完了、20年4月には臨床第3相試験(大規模比較試験)に移行する見通しになったと発表した。臨床第3相試験(大規模比較試験)は日本と中国での合同試験の実施を目指し、中国の製薬会社と交渉を開始している。20年5月には欧州における特許成立を発表した。

 また20年6月には国内臨床第2相試験で登録した全症例の病勢コントロール率が100%になったと発表した。20年7月には臨床第2相試験の独立の立場の医師による効果判定評価が予定通り終了した。そして「脳移転を有する末期非小細胞肺がん患者を治療するための組み合わせ医薬品」に関する特許をPCT(特許協力条約)加盟国に対して国際出願した。

 DFP-17729は、18年11月出願した特許(がん細胞の代謝の特異性に基づく新規抗悪性腫瘍剤)が、19年8月日本に続いて韓国でも成立した。19年8月には新たな特許(抗がん剤の効果増強剤)を出願した。

 20年3月には日本ケミファ<4539>に対して、日本国内における独占的販売権、および日本国内で販売するための独占的製造権を付与するライセンス契約を締結した。20年11月には、治験参加施設から末期膵臓がん患者を対象とする臨床第1相・第2相試験の第1症例が登録されたとの報告を受けたと発表している。今後は第1相部分の第6症例までの安全性が確認された時点で、さらに第2相部分の33症例を登録し、合わせて39症例での効果と安全性を評価し、その結果をもって国内外での臨床第3相試験への移行や、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への承認申請の可能性について検討する。

 DFP-14927は18年10月米国で物質特許成立、18年12月米国FDA(食品医薬局)へIND(臨床試験用の新医薬品)申請、19年1月米国FDAによるIND安全性審査が完了して米国での第1相臨床試験の実施が許諾された。19年7月には日本でも物質特許が成立した。

 DFP-10917は、米国MD Anderson Cancer Centerを中心に臨床第3相(単剤療法)を進めているが、19年4月にDFP-10917と難治性・再発慢性リンパ性白血病治療薬Venetoclaxの併用臨床試験の検討を開始すると発表した。19年11月には、米国でのDFP-10917第3相臨床試験およびDFP-14927第1相臨床試験について、症例登録開始の報告を受けたと発表している。20年5月には米国での臨床第1相試験結果の論文が米国のがん治療専門誌に掲載された。米国での臨床第1相試験結果に基づき、臨床第2相試験の準備を進める。

 また20年5月には、DFP-10917と併用を予定しているVenetoclaxの新規誘導体の物質特許を出願したと発表した。

 19年2月には北米における臨床開発事業の拡大に伴ってバンクーバー事務所を開設している。DFP-10917第3相臨床試験、DFP-11207第2相臨床試験、DFP-14927第1相臨床試験を推進する。

 なお20年8月にはDFP-10917およびDFP-14927の米国での治験状況をリリースした。新型コロナウイルスの影響で症例登録が鈍化しているが、DFP-10917第3相臨床試験に関しては治験参加病院数を増やす方針で、22年度中に米国で上市する方針に変更はないとしている。DFP-14927(DFP-10917の週1回投与型製剤)第1相臨床試験に関しては、現在の投与量付近で安全性が確認でき次第、臨床第2相試験に相当する拡大試験に移行する予定としている。

 21年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が3億円、営業利益が8億50百万円の赤字、経常利益が8億50百万円の赤字、純利益が8億50百万円の赤字としている。ライセンス契約に伴うマイルストーン対価3億円を見込んでいる。なお第2四半期累計は売上高が1億円、営業利益が4億63百万円の赤字だった。臨床試験が進展して早期の上市・収益化を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は戻り高値圏から反落して安値圏に回帰した形だが、調整一巡して出直りを期待したい。12月23日の終値は1170円、時価総額は約53億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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