【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングサービスは16年3月期の収益改善基調を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)は製造請負・派遣および製造受託の大手である。株価は5月13日高値829円から利益確定売りで一旦反落したが、16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。

 製造請負・派遣のIS(インラインソリューション)事業、修理・検査受託のCS(カスタマーサービス)事業、技術者派遣のGE(グローバルエンジニアリング)事業、子会社の志摩グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)事業を展開している。

 なお15年3月期から、IS、CS、GEを総称してHS(ヒューマンソリューション)事業とし、セグメント区分をHS事業、EMS事業、事業譲り受けたPS事業としている。

 基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。

 13年10月に子会社TKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県)を取得した。そして14年10月にパナソニック<6752>から車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社のパワーサプライテクノロジー(PST)が新たに操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社および国内90社である。

 日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する方針だ。なお14年9月には子会社TKRが検査工程の自動化・省力化装置のカスタマイズ受託生産を本格的に開始している。

 14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。

 中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、14年5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。

 アジアへの展開では14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。14年10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携してベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。14年12月には子会社nmsタイランドがカンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。

 15年3月には兼松<8020>に対して第三者割当による自己株式処分を実施(払込4月)して資本・業務提携した。兼松の部材調達力および販売力、当社の技術・製造ノウハウを相互活用することで、EMS事業拡大、戦略的部材調達、海外事業展開などで大きなシナジー効果が見込まれるとしている。なお兼松は当社の発行済株式総数の10.0%(総株主の議決権数に対する割合10.9%)を保有する第3位株主となった。

 5月15日に発表した前期(15年3月期)の連結業績(4月20日に増額修正)は、売上高が前々期比17.5%増の492億45百万円、営業利益が4億93百万円(前々期は6億43百万円の赤字)、経常利益が7億33百万円(同1億75百万円の赤字)、そして純利益が同11.8%減の5億71百万円だった。

 配当予想(3月19日に増額修正)は、期末に創業30周年記念配当2円を実施して、前期比2円増配の年間5円(期末一括=普通配当3円+記念配当2円)とした。配当性向は8.1%となる。なおROEは同3.3ポイント低下して12.2%、自己資本比率は同6.6ポイント低下して17.1%となった。

 パナソニックから譲り受けた一般電源事業の子会社PSTが第4四半期(1月~3月)からPS事業として連結対象となり、EMS事業の収益改善も寄与して大幅増収、営業黒字化、経常黒字化した。純利益は負ののれん発生益減少や税金費用の増加で前々期比減益だった。

 セグメント別に見ると、HS事業は売上高が同10.3%増の133億12百万円、営業利益(全社費用等調整前)が17百万円の赤字(前年同期は27百万円の赤字)だった。製造部門の人材の適正確保が難しい状況で赤字が残ったが、管理体制強化などの効果で赤字幅が縮小した。なおカスタマーサービス事業における電動バイクおよびデザイン・ラッピング業務については、依然として採算ベースに至らないため業務を閉鎖することとした。

 EMS事業は売上高が同8.4%増の323億59百万円、営業利益が2億62百万円の黒字(同6億21百万円の赤字)だった。TKRグループで国内の構造改革コストが発生したが、志摩グループの国内受注好調、TKR香港の事業構造改革効果などで営業損益が大幅に改善して黒字化した。

 PS事業は第4四半期から連結対象となり、売上高が35億73百万円、営業利益が2億37百万円だった。譲り受け前の取引条件で、ほぼ全ての取引先および仕入先の引き継ぎを完了し、想定を上回る利益を確保した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円、第4四半期(1月~3月)146億43百万円で、営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字、第4四半期3億67百万円だった。第4四半期はPS事業の新規連結が寄与した。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月15日公表)は売上高が前期比36.8%増の673億80百万円、営業利益が同2.2倍の11億円、経常利益が同26.8%増の9億30百万円、純利益が同8.2%減の5億25百万円、配当予想が前期と同額の年間5円(期末一括)としている。

 パナソニックから譲り受けたPS事業の通期連結で大幅増収、大幅営業増益見込みだ。また国内HS事業では規模の拡大よりも事業の質を追求し、海外HS事業ではアセアン諸国における製造派遣・製造請負事業の拡大を推進する。国内EMS事業では新規技術分野の拡充と新規顧客の拡大を図り、海外EMS事業では「neo EMS」としてのビジネスモデルの拡充を図る方針だ。

 株価の動きを見ると、兼松との資本・業務提携を好感した3月末以降はやや乱高下の展開となり、足元では5月13日高値829円から利益確定売りで反落した。16年3月期の大幅営業増益予想に対する反応も限定的だ。ただし従来の400円近辺でのモミ合いに比べて水準を切り上げた形だ。

 5月28日の終値630円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS53円15銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS537円16銭で算出)は1.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を一旦割り込んだが、週足チャートで見ると13週移動平均線が追いついて動意のタイミングのようだ。16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。

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