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アスカネットは売り一巡、新型コロナ影響で21年4月期下方修正だが中期成長期待
- 2020/12/25 08:05
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。なお富士通が広島銀行で21年5月開始するタッチレスATM実証実験にASKA3Dプレートが採用される。21年4月期業績予想は新型コロナ影響で下方修正し、従来予想に比べて減収減益幅が拡大する見込みとなったが、AI事業も寄与して中期成長を期待したい。株価は下方修正を嫌気して水準を切り下げ、安値圏で軟調展開だが、売り一巡して出直りを期待したい。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。20年4月期の売上構成比はMDS事業38.9%、PPS事業59.5%、AI事業1.6%だった。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。
なお17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携、20年2月AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携した。
■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。20年4月期末のハード設置件数は2562ヶ所、20年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約35.6万枚、電照焼増枚数が約13.7万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、推定市場シェアは約30%(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。
19年12月には葬祭業者向けクラウド型印刷物作成ツール「SoSign(葬サイン)」の提供を開始、20年1月には葬儀社用Webサイト生成ツール「お葬儀.jp」の提供を開始、20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加、20年11月には故人を偲ぶ「inori」の提供を開始した。
■PPS事業はOEMが拡大
PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。20年4月期時点で約4590社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約45万冊提供している。なお20年10月には「マイブック」を、姉妹サービス「マイブックライフ」「オートアルバム」と統合リニューアルした。
またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。OEMを中心とする需要拡大に対応するため、19年8月本社隣接地の新工場が稼働した。
■AI事業は空中結像ASKA3Dプレートの中規模ロット案件受注目指す
空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。
生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。
20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。また20年11月にはAI事業の海外販売体制拡充に向けて、米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。本格受注・量産化への期待が高まる。
なお12月1日にASKA3Dプレートが広島銀行のタッチレスATM実証実験に採用されたと発表している。富士通<6702>および富士通フロンテックの12月15日付リリースも合わせて整理すると、富士通が広島銀行本店営業部において、新光商事<8141>の「AIplay」技術を活用した富士通製ATMで、タッチレスATM実証実験を開始(21年5月予定、新店舗移転オープン)する。新光商事の「AIplay」にASKA3Dプレートが採用されている。
■21年4月期は新型コロナ影響で下方修正だが、中期成長期待
21年4月期の業績(非連結)予想は、12月8日に下方修正して、売上高が20年4月期比12.2%減の57億75百万円、営業利益が71.8%減の2億円、経常利益が64.8%減の2億59百万円、純利益が67.2%減の1億64百万円としている。配当予想は据え置いて3円減配の7円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.8%減25億84百万円、営業利益が56百万円の赤字(前年同期は3億23百万円の黒字)、経常利益が7百万円の赤字(同3億24百万円の黒字)、純利益が10百万円の赤字(同2億28百万円の黒字)だった。新型コロナウイルスの影響で大幅減収となり、特にPPS事業において生産稼働率が低下した。研究開発費の増加なども影響して営業赤字だった。
MDS事業は5.4%減収だった。葬儀小型化で演出関連サービスが減少した。PPS事業は26.5%減収だった。結婚式延期・中止、および旅行・イベント自粛の影響を強く受けた。AI事業は4.5%増収だった。営業強化で樹脂製が増加した。
通期は新型コロナウイルス感染再拡大も影響して、特にPPS事業の需要回復が期初時点の想定よりも遅れる見込みとしている。ASKA3Dプレートについては、初の中規模ロット案件の受注獲得を実現したいとしている。21年4月期は新型コロナウイルスの影響で下方修正し、従来予想に比べて減収減益幅が拡大する見込みとなったが、AI事業も寄与して中期成長を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
■株価は売り一巡
株価は下方修正を嫌気して水準を切り下げ、安値圏で軟調展開だが、売り一巡して出直りを期待したい。12月24日の終値は1006円、今期予想PER(会社予想のEPS9円76銭で算出)は約103倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.7%、前期実績PBR(前期実績のBPS341円45銭で算出)は約2.9倍、時価総額は約176億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)