【どう見るこの相場】TOB・MBO思惑も入り混じるオーナー企業のバリュー株、低空飛行株に浮上期待

どう見るこの相場

 波乱の2020年相場が、きょう28日を含めてあと3日で幕を閉じる。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)で暴落した日経平均株価が、その安値から1万円超高、6割超高し株式フィーバーを満喫する1年となった。ただこの年の瀬にきて、国内の新規感染者が、過去最高を更新するなどさらに悪化し、欧州中心に感染が拡大している変異種による国内感染も確認されるなどまたまた振り出し里帰りしないかとするリスクも懸念されている。まさに波乱で幕開けし、波乱で年を越す1年となるが、この中で従来とは真逆となる大きな変化が起きる影響も受けた。その一つが、「株主第一主義」を掲げたコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の見直しである。

 ROE(株主資本利益)経営より、コロナ禍によりサプライチェーンが途絶するなかで不要不急のムダも許容する事業継続計画(BCP)を優先し、財務戦略でも、公募増資や社債発行、コミットメントライン契約締結などで手元資金を潤沢にする一方で、資本の社外流出を回避するための自己株式取得の中止や減配・無配転落などもむしろ前向きに捉えられるようになった。「モノ言う株主」も、株主への利益還元策を声高に要求する攻めどころを失ったはずだ。またリストラ加速のために親子上場問題の解消に向け日立製作所<6501>(東1)や東芝<6502>(東2)、富士通<6702>(東1)、ソニー<6758>(東1)、ホンダ<7267>(東1)などでグループ会社の株式公開買い付け(TOB)が加速した。

このTOBは、さらにファミリーマート、LINE<3938>(東1)、東京ドーム<9681>(東1)への友好的なTOB、大戸屋ホールディングス<2705>(JQS)、前田道路などへの敵対的TOB、島忠<8184>(東1)を巡る三つ巴のTOB、オーデリック、総合メディカル、ニチイ学館など株式を非公開化するMBO(現経営陣による株式公開買い付け)などへ広がり、「会社は誰のものか」を問い直すキッカケともなりマーケットを賑わせた。

 今回の当コラムで注目するのは、このMBOに密接に関連する可能性があるオーナー企業株である。もともとオーナー企業は、創業者や大株主の経営トップの優越的なリーダーシップのもと、経営環境の変化には敏感に柔軟に対応して成長戦略の強化に邁進しており、かつてのソニー、ホンダはいうに及ばず、このところの日本電産<6594>(東1)、村田製作所<6981>(東1)、ニトリホールディングス<9843>(東1)、ファーストリテイリング<9983>(東1)などが輩出し、むしろTOBを仕掛けるビッグプレーヤーとしての存在感を高めるに至っている。MBOでも、株式上場のメリットより非公開化による事業構造改革のメリットが大きいとして決断し、前記のオーデリック、総合メディカル、ニチイ学館のほか豆蔵ホールディングス、キリン堂ホールディングス、川金ホールディングスなどと続いた。

 しかも、マーケットの主力銘柄の一つであるソフトバンクグループ<9984>(東1)が一時、このMBOによる非公開化観測で急動意となった経緯もあり、新年相場でこの思惑材料が再燃するようなら、オーナー企業に脚光が当たる展開も想定させる。また東証が、市場再編策を決定して新たな市場区分によって上場会社をランク付けし、それこそ箸の上げ下ろしまで厳しくするとなれば、「会社は誰のものか」と見直したオーナー経営者のなかには、キレイごとでなく「ややこしい、ご意見無用、ハイさようなら」とばかりMBOや会社売却のTOBに踏み切るケースも皆無ではないだろうと想定されるのである。

 この想定通りに運ぶなら、オーナー企業株が、新年相場1年を通じたテーマ株として注目されることになるはずだ。そこでダイアモンド社の「DIAMOND online」のランキング特集記事などを参考にして、出遅れてバリュー株妙味を内包するオーナー企業株、経営の低空飛行に苦しむMBO含みのオーナー企業株などをリサーチすると、新年相場でクローズアップされそうな銘柄が浮上し、待機投資も一考する余地が出てきそうなのである。

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