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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスカネットは空中結像AI事業が量産技術確立に向けて着実に進展
- 2015/5/29 13:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は写真加工関連事業を展開している。株価は年初来高値圏から急反落した。4月28日の「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」および「ギフトネットコム」サービス終了の発表を嫌気した形だ。しかし空中結像AIプレート事業は量産技術確立に向けて着実に進展している。目先的な売りが一巡して反発展開だろう。なお6月9日に15年4月期決算発表を予定している。
葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集製作関連のパーソナルパブリッシングサービス事業を主力としている。遺影写真は葬儀関連、写真集はウエディング関連や卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。
新規事業の空中結像技術エアリアルイメージング(AI)プレートは、画像映像を表す光を受け、特殊なパネルを通過することによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。独自技術を強固にするため特許申請も進め、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。
現状は基本技術を確立してAIプレート試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。
そして4月28日に「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」を発表した。AIプレート量産についてはガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。逆に樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。
そして当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模な量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。
ガラス素材プレートについては、複数の製造方法の中で現在β版の製作に取り掛かっており、順調にいけば15年夏~秋に量産が開始できる見込みだ。樹脂素材にプレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライして、素材から開発しているため技術課題の解決に多くの時間を要している。技術課題が解決しだいα版の開発に取り掛かり、15年秋~冬の量産開始を目標としている。
またAIプレートは素材であるため、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。そして16年4月期は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、大ロット案件に繋げたいとしている。
なお14年12月スタートした新しいギフトサービスシステム「ギフトネットコム」については4月30日をもってサービスを終了した。販売実績が予想を下回る水準で推移し、今までにない新しい方法を定着させるには相当の時間を要するとの判断に至った。短期的には収益の改善が見込めないことから、サービス開始後短期間だが、終了の早期決断が望ましいとの結論となった。15年4月期に減損損失77百万円を計上する。
5月13日には、NTTドコモ<9437>が新たに開始する「フォトコレクションプラス」向けに、フォトブックおよびプリント商品を独占供給すると発表した。パーソナルパブリッシングサービス事業において新たなサービスを開始することにより、急速に拡大しているスマートフォンによる写真のアウトプット市場にも本格的にターゲットを拡大していくとしている。
前期(15年4月期)の非連結業績予想(14年6月10日公表)は、売上高が前々期比4.6%増の49億84百万円、営業利益が同6.3%減の6億73百万円、経常利益が同6.9%減の6億76百万円、純利益が同2.6%減の4億34百万円、配当予想が14年11月1日付の株式4分割を考慮すると実質的に前々期と同額の年間8円(期末一括)としている。
売上面では既存のメモリアルデザインサービス事業、パーソナルパブリッシングサービス事業とも堅調に推移するが、新規事業の広告宣伝費や研究開発費の増加で減益見通しとしている。
第3四半期累計(5月~1月)は前年同期比5.7%増収、同6.9%営業減益、同6.8%経常減益、同10.5%最終増益だったが、通期見通しに対する進捗率は売上高75.1%、営業利益80.4%、経常利益80.8%、純利益が91.3%と順調だった。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)11億70百万円、第2四半期(8月~10月)11億55百万円、第3四半期(11月~1月)14億16百万円、営業利益は第1四半期1億55百万円、第2四半期1億26百万円、第3四半期2億60百万円と順調に推移している。
今期(16年4月期)は、既存のメモリアルデザインサービス事業、パーソナルパブリッシングサービス事業が引き続き順調に推移し、AIプレート事業の試作品や小ロット量産販売も寄与して好業績が期待される。
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して自社サービス(マイブック)の割引利用券を贈呈している。14年11月1日付株式4分割後100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。
株価の動き(14年11月1日付で株式4分割)を見ると、4月28日の「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」および「ギフトネットコム」サービス終了の発表を嫌気して、年初来高値圏から急反落した。その後は2400円~2500円近辺でモミ合う展開だ。
5月28日の終値2468円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS25円92銭で算出)は95倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は0.3%近辺、前々期実績PBR(前々期実績に株式4分割を考慮したBPS219円87銭で算出)は11倍近辺である。
週足チャートで見ると、大陰線を引いて一気に26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形だろう。空中結像AIプレート事業は量産技術確立に向けて着実に進展している。目先的な売りが一巡して反発展開だろう。