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川崎近海汽船は戻り試す、21年3月期通期利益は再上振れ余地
- 2021/1/6 08:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力としている。21年3月期は新型コロナ影響で赤字予想だが、第2四半期決算時に利益を上方修正し、従来予想に比べて赤字が大幅に縮小する見込みとしている。後半の緩やかな需要回復も勘案すれば、通期利益予想に再上振れ余地がありそうだ。株価は徐々に下値を切り上げている。低PBRも見直し材料であり、戻りを試す展開を期待したい。
■近海輸送と内航輸送が主力
石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、日本近海における海洋資源開発・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船事業(OSV部門)を展開している。
20年3月期売上高構成比は近海部門が27%、内航部門が68%、OSV部門が5%、その他が0%、営業利益構成比は近海部門が▲18%、内航部門が109%、OSV部門が9%、その他が0%だった。
収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。また季節要因として第1四半期は入渠費用が増える傾向がある。
■モーダルシフトも背景として収益力向上目指す
2020年度中期経営計画では、目標値に23年3月期売上高388億円(近海部門101億円、その他含む内航部門268億円、OSV部門19億円)、営業利益6億円(近海部門2億円の赤字、その他含む内航部門6億円、OSV部門2億円)、経常利益4億50百万円、純利益3億円を掲げている。新造船建造等に対する投資規模は3年間で総額78億円の計画である。
海上輸送を通じて社会への貢献に努めるとともに、収益力の向上とコスト削減を進めつつ、安定配当の継続を目指す。
近海部門は、中期的に厳しい状況が予想さえるため、効率配船や高コスト傭船の早期返却返船などによって船隊規模の適正化を図り、市況にあった船隊整備の継続、商圏の維持、コスト削減などで終始安定を目指す。バイオマス発電所用燃料の輸送は長期契約の獲得を目指す。
内航部門は、陸上輸送から海上輸送への転換を図るモーダルシフトの拡大を念頭に置いて、顧客ニーズに沿った輸送サービスの提供で収益力向上を目指す。定期船輸送では新規貨物の獲得と更なるコスト削減、不定期船輸送では石灰石および石炭の各専用船の安全運航、商圏の維持、新規案件の獲得を推進する。フェリー輸送では、大型新造船の積載能力を活かした貨物の開拓、2つのフェリー航路の効率的運営を推進する。
OSV部門は、海洋資源開発への期待が高まる中、オフショア支援船事業の充実、洋上風力関連事業への参入で収益拡大を図るとともに、CCS(二酸化炭素回収・海底貯蔵)調査や資源探査などにも取り組む。
また20年1月適用開始のSOx規制(船舶用燃料油の低硫黄化環境規制)について適切な対応に取り組んでいる。日本初のLNG燃料フェリー就航に向けては、川崎汽船<9107>と共同で技術的検証を本格化している。
■21年3月期は新型コロナ影響だが利益再上振れ余地
21年3月期の連結業績予想(期初時点は未定、7月31日公表、10月30日に売上高を下方、利益を上方修正)は、売上高が20年3月期比19.7%減の356億円で、営業利益が2億円の赤字(20年3月期は19億13百万円の黒字)、経常利益が5億50百万円の赤字(同19億07百万円の黒字)、純利益が0百万円(同13億70百万円の黒字)としている。配当予想は20円減配の100円(第2四半期末50円、期末50円)としている。
第2四半期累計は売上高が前年同期比19.3%減の181億54百万円、営業利益が83.7%減の2億35百万円、経常利益が90.5%減の1億32百万円、純利益が57.5%減の4億62百万円だった。特別利益には固定資産売却益(外航船1隻売船)を計上した。
新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で貨物輸送が減少し、大幅減収減益だった。近海部門は29.7%減収で赤字拡大、内航部門は15.5%減収で59.6%減益、OSV部門は14.9%減収で赤字化した。
ただし従来の赤字予想から一転して、営業利益、経常利益、純利益とも黒字で着地した。燃料費が想定よりも廉価に推移したこと、近海部門の市況が徐々に回復したこと、フェリー輸送で旅客や乗用車が想定を上回ったことに加えて、コスト削減も寄与した。
通期予想については、新型コロナウイルスによる厳しい事業環境が継続し、下期は例年どおり季節要因で荷動きが落ち込む見込みとして売上高を下方修正したが、上期が計画超だったことを勘案して利益を上方修正し、従来予想に対して赤字が大幅に縮小する見込みとしている。
当面は新型コロナウイルス感染再拡大の影響が警戒されるが、後半の緩やかな需要回復も勘案すれば、通期利益予想に再上振れ余地がありそうだ。
■株価は戻り試す
株価は徐々に下値を切り上げている。そして週足チャートで見ると、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて基調転換を確認した形だ。さらに低PBRも見直し材料だろう。戻りを試す展開を期待したい。1月5日の終値は2524円、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS9058円06銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約75億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)