インテリジェントウェイブは調整一巡感、21年6月期増収増益予想

 インテリジェントウェイブ<4847>(東1)は、金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開し、クラウドサービスを中心としたストックビジネスへの転換を推進している。21年6月期増収増益予想である。収益拡大を期待したい。株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げたが、調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>(DNP)の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心とする金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心とするパッケージソフトウェア販売・保守サービスのプロダクトソリューション事業を展開している。

 20年6月期の売上構成比は金融システムソリューション90%、プロダクトソリューション10%、営業利益構成比は金融システムソリューション108%、プロダクトソリューション▲8%だった。なお組織改正に伴って21年6月期から単一事業セグメントに変更する。

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。顧客別売上高上位はDNP、カード会社、システム開発会社である。金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、下期の構成比が高い特性もある。

■事業領域拡大に向けて新製品・新サービスを強化

 金融システムソリューションでは、クレジットカード決済のフロント業務関連システムから、金融領域全般への事業領域拡大を目指し、クラウドサービスも強化している。共同利用型のフロントシステムも検討中である。拡大するEC決済に対応して複数のカード会社と次世代不正検知の実証実験も進めている。プロダクトソリューションでは、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 クラウドサービスでは、アクワイアリング業務のIOASIS、不正検知のIFINDS、OnCore SwitchのIGATESが順調に拡大している。またポイントシステムのIPRETSを20年10月から本格稼働した。

 AI関連の新規開発案件では、SMBC日興証券「AI株価見守りサービス」に、CEP(Complex Event Processing)エンジンであるFES(Fast Event Streamer)が採用され、19年7月サービス開始した。

 20年9月には情報漏えい対策システムCWATの最新バージョンの出荷を開始した。20年10月にはSolace社と、日本における次世代決済プラットフォームの実現に向けて協業体制を強化すると発表した。

 20年12月には、大日本印刷・蕨工場(埼玉県蕨市)のクローズドネットワークに、いかなる未知の攻撃でも防御できるエンドポイントセキュリティソリューション「Morphisec(モルフィセック)」(イスラエルのMorphisec社製)を導入した。

■長期的に営業利益率15%目指す

 中期事業計画(旧計画を見直して20年8月に新計画として公表)では、目標値に23年6月期売上高135億円、営業利益15億円を掲げている。新型コロナウイルスの影響は限定的だが、営業活動の制限などで新規案件の受注が遅延し、売上高の成長速度が抑制される可能性があると想定し、旧計画を見直した。主要製品・サービスの年平均成長率はクラウドサービス24.6%、セキュリティ対策製品6.9%、その他開発案件5.5%としている。また新製品・新サービスは上振れ要因となる。

 長期的にクレジットカード決済取扱高が伸びる基調に大きな変化はなく、事業機会の拡大が続くと想定している。そしてクラウドサービスを中心としたサブスクリプション(ストックビジネス)への転換を推進し、新規事業への投資も加速する。中長期的には売上高150億円、営業利益率15%を目指す方針だ。

■21年6月期増収増益予想

 21年6月期業績(非連結)予想は、売上高が20年6月期比0.7%増の110億円、営業利益が11.0%増の11億50百万円、経常利益が10.7%増の11億90百万円、純利益が7.6%増の8億20百万円としている。配当予想は20年6月期と同額の10円(期末一括)である。

 第1四半期は、売上高が前年同期比4.9%減の22億98百万円で、営業利益が4.8%減の1億34百万円、経常利益が8.8%減の1億28百万円、そして純利益が8.3%減の83百万円だった。

 クラウドサービスが順調だったが、一部のシステム開発案件の売上計上時期が第2四半期に移動し、クラウドサービスの一時的な費用増加も影響して減収減益だった。ハードウェアも減収だが概ね想定水準だった。受注高は前年同期比27%増の30億56百万円、受注残高は14%増の60億75百万円となった。新型コロナウイルスの影響は限定的としている。

 通期は大手カード会社向け開発案件、新規にカード事業を開始する顧客向け案件、クラウドサービスの新規案件などで増収増益予想としている。通期のストック売上比率は20.2%まで上昇する見込みだ。

 クラウドサービスの売上高は9億40百万円(20年6月期実績8億28百万円)の計画である。既存のIGATES2社、IFINDS3社、IOASIS4社に加えて、IPRETSの1社目が第2四半期から、IGATESの3社目・4社目が下期から、IOASISの5社目(20年6月期第2四半期から稼働)が通期で寄与する見込みだ。

 第1四半期は一時的要因で減益だったが、新型コロナウイルスの影響は限定的であり、通期ベースで収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡感

 株価は20年9月の戻り高値圏から反落して上値を切り下げたが、調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。1月5日の終値は704円、今期予想PER(会社予想EPS31円18銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想10円で算出)は約1.4%、前期実績PBR(前期実績BPS265円55銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約185億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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