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アルコニックスは調整一巡、21年3月期通期利益予想は再上振れ余地
- 2021/1/8 07:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で減益予想としている。当面は感染再拡大の影響も意識されるが、半導体関連を中心に需要が回復傾向であり、非鉄市況の回復も寄与して通期利益予想に再上振れ余地がありそうだ。株価は11月の直近安値圏から切り返しの動きを強めている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお2月12日に第3四半期決算発表を予定している。
■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」目指す
軽金属・銅製品(伸銅品、銅管など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社グループである。
商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
■製造が利益柱
20年3月期セグメント別売上高構成比は、商社流通79%(電子機能材30%、アルミ銅50%)で製造21%(装置材料11%、金属加工10%)だが、経常利益構成比は商社流通14%(電子機能材2%、アルミ銅13%)で製造85%(装置材料7%、金属加工78%)だった。
レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。
中期経営計画(21年3月期~23年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値を23年3月期の経常利益87億円超、純利益60億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度としている。3年間の投融資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する方針だ。
18年12月摩擦調整材カシューパーティクルを製造販売する東北化工を連結子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシを製造販売する富士カーボン製造所を連結子会社化、19年7月メキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業をメキシコFUJI-MX社が譲り受けて営業開始、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立、20年3月連結子会社の平和金属を完全子会社化した。
20年8月には子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)が、レアメタル製品の製造事業における海外展開の一環として、台湾のタングステン化合物メーカーであるLianyou Metals社に出資した。20年12月には空調機器向け配管部品メーカーの富士根産業(静岡県沼津市)を子会社化した。
■21年3月期通期利益は再上振れの可能性
21年3月期連結業績予想(10月27日に売上高を下方修正、営業・経常利益を上方修正、純利益を据え置き)は、売上高が20年3月期比18.2%減の1900億円、営業利益が13.1%減の45億円、経常利益が15.1%減の46億円、純利益が33.7%減の24億円としている。配当予想は20年3月期と同額の42円(第2四半期末21円、期末21円)である。
第2四半期累計は売上高が前年同期比18.8%減の961億47百万円、営業利益が8.9%減の24億59百万円、経常利益が15.9%減の24億95百万円、純利益が36.6%減の12億12百万円だった。
新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で、自動車関連を中心に需要が落ち込んで減収減益だったが、デジタルシフトやリモートワークの流れを背景にIT機器や半導体関連の需要が増加して売上高が計画を上回った。さらに前期計上したレアメタルの棚卸資産評価損の解消、人的移動制限に伴う販管費減少なども寄与して、各利益は計画比で減益幅が縮小した。
セグメント別の経常利益は、商社流通―電子機能材が9.3倍の8億30百万円、商社流通―アルミ銅が25.2%減の3億26百万円、製造―装置材料が1億18百万円の赤字(同69百万円の黒字)、製造―金属加工が38.2%減の14億60百万円だった。
通期も新型コロナウイルス影響で減収減益予想である。感染再拡大懸念で不透明感が強いとしている。ただし第2四半期累計が計画超だったため、通期の営業・経常利益を上方修正して、従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みとした。
セグメント別経常利益の計画は、商社流通―電子機能材が22.3倍の18億円、商社流通―アルミ銅が28.0%減の5億円、製造―装置材料が2億円の赤字(20年3月期は4億03百万円の黒字)、製造―金属加工が41.1%減の25億円としている。
商社流通―電子機能材は5G本格稼働に伴う電子材料需要増加やレアメタル棚卸資産評価損一巡で利益改善、商社流通―アルミ銅は上期の落ち込みをカバーできないが下期の非鉄市況回復と自動車関連需要の回復、製造―装置材料は上期の落ち込みをカバーできないが自動車関連需要の底入れ、製造―金属加工は自動車向け精密金属プレス部品の需要回復遅れやメキシコ事業立ち上げ費用先行を見込んでいる。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が50.6%、営業利益が54.6%、経常利益が54.2%、純利益が50.5%である。当面は感染再拡大の影響も意識されるが、半導体関連を中心に需要が回復傾向であり、非鉄市況の回復も寄与して通期利益予想に再上振れ余地がありそうだ。
なお12月4日に、子会社における不適切な会計処理(棚卸資産の架空計上で利益を積み増す等)が判明したため、特別調査委員会の設置を発表した。現時点における業績への影響額は約2億50百万円と判明している。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は調整一巡
株価は11月の直近安値圏から切り返しの動きを強めている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。1月7日の終値は1444円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円58銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の42円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1578円62銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約375億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)