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パイプドHDは反発の動き、21年2月期3Q累計進捗率順調
- 2021/1/12 08:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「SPIRAL」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業や販促CRMソリューション事業などを展開している。21年2月期第3四半期累計は人件費増加で営業・経常減益だが、投資有価証券売却益計上で最終大幅増益だった。通期(純利益を上方修正)は新型コロナウイルスの影響を考慮して営業・経常減益予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は概ね順調だった。需要が回復傾向であることを考慮すれば通期上振れ余地がありそうだ。株価は上値を切り下げる形だったが反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■情報資産プラットフォーム事業などを展開
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「SPIRAL」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業や販促CRMソリューション事業などを展開している。
セグメント区分は、機能別事業群としての情報資産プラットフォーム事業(SPIRALやBizBaseなどのクラウドサービス提供)、販促CRMソリューション事業(Webシステムの開発、ECサイトの構築・運営支援)、広告事業(インターネット広告代理販売)、および分野別事業群としてのxTech事業(ArchiTech:BIM事業、BeauTech:美歴、HRTech:オーダーメイド人材育成代行、FinTech:エルコイン)、社会イノベーション事業(政治山、I LOVE 下北沢、シモキタコインの運営)としている。
20年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業68.4%、販促CRMソリューション事業15.5%、広告事業11.7%、xTech事業3.0%、社会イノベーション事業1.3%だった。
情報資産プラットフォーム事業は、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。広告事業の売上高は、広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)としている。
■情報資産の有効活用を推進
重点戦略としてリアルビジネスとの接点の強化、イノベーティブな事業への挑戦、グループ全体の採用・育成の強化、グループ各社の情報資産の有効活用を推進している。
20年11月には、新たなローコード開発プラットフォーム「SPIRAL ver2」の提供開始を発表した。グローバル案件にも対応可能な多言語機能を実装している。
電子地域通貨プラットフォームを提供するエルコインの子会社シモキタコインは、エルコインの電子地域通貨プラットフォーム発行事業者第1号として、下北沢で行われるイベントや商業施設等で利用される電子地域通貨を発行している。
政治・選挙情報サイト「政治山」を運営するVOTE FORは、自治体向けオープンデータ化・活用サービス「マイ広報紙」を展開するパブリカと合併し、収益性向上を推進している。20年7月には「つくばスマートシティ協議会」に参画した。
さらにwithコロナ・afterコロナで役立つソリューションとして、体調報告アプリ、バーチャル株主総会ソリューション、美容室向け前売りチケット販売管理「チケット管理サービス」などの開発・提供を開始している。
■投資事業も推進
20年3月にはコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)として投資事業を行う新会社ダブルシャープ・パートナーズを設立した。
そして20年5月には店舗マネジメントツール「はたLuck」を提供するナレッジ・マーチャントワークスに出資、20年8月には地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」を提供するJOINSに出資、20年9月には家具のサブスクリプション型サービスを提供するsubsclifeに出資、20年12月にはBtoB受発注システム「CO―NECT」運営のCO―NECTに出資した。
■21年2月期営業・経常減益予想だが再上振れ余地
21年2月期の連結業績予想(6月30日に売上高・利益ともレンジ予想の下限値を上方修正、9月2日に投資有価証券売却益計上で純利益を上方修正、12月28日に投資有価証券売却益確定に伴って純利益を上方修正)は、売上高が58億円~62億円(20年2月期比6.6%減~0.1%減)で、営業利益が10億円~12億円(同28.1%減~13.7%減)、経常利益が10億円~12億円(同28.7%減~14.4%減)、純利益が9億円~10億円(同30.7%増~45.3%増)としている。配当予想は未定としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比1.4%増の45億69百万円、営業利益が9.6%減の8億21百万円、経常利益が11.5%減の8億17百万円、純利益が31.1%増の7億68百万円だった。
売上面では、新型コロナウイルスに伴うマイナス影響(案件失注、商談長期化、キャンペーン中止、広告出稿停止など)があったが、IT需要の高まりも背景として小幅ながら増収を確保した。機能別事業群の情報資産プラットフォーム事業は2.3%増収、販促CRMソリューション事業は0.7%増収、広告事業は1.4%減収、分野別事業群のxTech事業は6.6%減収、社会イノベーション事業は5.2%増収だった。
営業利益と経常利益は人件費や研修費の増加などで減益だったが、純利益は投資有価証券売却益2億93百万円を計上(米国Sprinklr社の売却手続が第3四半期に完了)して大幅増益だった。
通期については、新型コロナウイルスによって商談停滞など営業活動に影響が生じているため、保守的に減収、営業・経常減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は通期予想レンジ下限値に対して売上高78.8%、営業利益82.1%、経常利益81.7%、上限値に対して売上高73.7%、営業利益68.4%、経常利益68.1%と概ね順調だった。需要が回復傾向であることを考慮すれば通期上振れ余地がありそうだ。
■株価は反発の動き
株価は上値を切り下げる形だったが、第3四半期累計の進捗率も好感して反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。1月8日の終値は1665円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS上限値125円54銭で算出)は約13倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS477円39銭で算出)は約3.5倍、時価総額は約136億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)