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シナネンホールディングスは上値試す、21年3月期減益予想だが原価改善効果で上振れ余地
- 2021/1/13 08:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
シナネンホールディングス<8132>(東1)は脱炭素社会の実現を見据えて、グローバル総合エネルギーサービス企業グループを目指している。21年3月期は先行投資負担などで減益予想としているが、原価改善効果で上振れ余地がありそうだ。中期的にも収益拡大を期待したい。株価は9月の昨年来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。なお1月29日に21年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ
脱炭素社会の実現を見据えて、グローバル総合エネルギーサービス企業グループを目指している。事業区分は、エネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)を主力として、非エネルギーおよび海外事業も展開している。
20年3月期セグメント別(調整前)売上構成比はBtoC事業が29%、BtoB事業が65%、非エネルギーおよび海外事業が6%、営業利益構成比はBtoC事業が50%、BtoB事業が53%、非エネルギーおよび海外事業が▲3%だった。
BtoC事業は、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料販売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業を行っている。
BtoB事業は、大口需要家向け石油製品など各種燃料販売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。
非エネルギーおよび海外事業は、抗菌事業(抗菌性ゼオライトなどの製造・販売)、環境・リサイクル事業(木質系チップなどの製造・販売)、自転車の自社小売店舗「ダイシャリン」事業、シェアサイクル「ダイチャリ」事業、コンピュータシステムのサービス事業、建物維持管理事業、バイオマス事業を行っている。韓国での大型風力発電事業は21年度下期中の商業運転開始を目指している。
なおシェアサイクル「ダイチャリ」事業は、首都圏を中心に20年9月末時点で約1400ヶ所のステーションと6500台を超える電動アシスト自転車を展開し、国内有数の規模となっている。20年10月にはOMGホールディングスのグループ会社Opus.netと連携し、ヘルスケア・ビューティケア関連店舗へのシェアサイクル導入を推進している。
■資本効率改善を推進
第2次中期経営計画(20年度~22年度)は、第3次中期経営計画(23年度~25年度)の躍進に向けた基盤整備と位置付けて、定性目標に資本効率の改善、持続的成長を実現する投資の実行、社員の考え方・慣習・行動様式の変革を掲げている。
資本効率・財務体質の改善では、既存事業の効率化と利益率向上、遊休・低稼働資産の有効活用または売却、資本効率の低い事業の撤退・売却と資本効率の高い事業への集中を推進する。なお21年3月期第4四半期に低稼働資産の売却を実行(特別利益に固定資産売却益および交換益21億円を計上予定)する。譲渡会社によるオフィス棟・マンション棟の建築後に当該オフィス棟を譲渡会社から譲り受ける予定だ。
持続的成長を実現する投資の実行では、既存事業の収益基盤強化のためのM&Aおよび建物維持管理事業におけるM&Aの実行、シェアサイクル事業・再生可能エネルギー事業・新規事業への戦略投資の実行、事業多様化や環境変化に値旺した基幹システムの整備・高度化およびDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのIT投資を推進する。20年10月にはDX推進に向けて、インターネットイニシアティブ(IIJ)のデジタルワークプレース(DWP)を実現する各種サービスを採用して次世代IT基盤を構築した。
定量目標「持続的にROE6.0%以上」を生み出す事業構造確立を目指し、エネルギー関連事業ではM&Aによる顧客基盤とシェアの拡大、新規商材による顧客層の拡大と深耕などで経営基盤を強化し、非エネルギーおよび海外事業では個々の事業環境や特性に対応した成長戦略を推進する。そして既存事業の安定的成長と新規事業開発による高収益化を図る方針だ。なお株主還元は配当を基本として、配当性向30%以上を目安に安定的に配当する方針としている。
■21年3月期減益予想だが上振れ余地
21年3月期連結業績予想は売上高が20年3月期比4.7%減の2260億円、営業利益が10.4%減の22億円、経常利益が18.3%減の18億円、純利益が49.8%減の15億円としている。配当予想は20年3月期と同額の75円(期末一括)である。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比13.8%減の797億89百万円、営業利益が6.2倍の9億68百万円、経常利益が2.5倍の9億27百万円、純利益が46.8%減の3億95百万円だった。
夏の平均気温上昇による需要減少、新型コロナウイルスによる飲食店向け業務用の需要減少、原油価格下落に伴う販売単価下落などで減収だったが、BtoB事業の原価改善(原油市況変動に対応した仕入施策による差益確保や電力スポット市場低迷による差益改善)効果が牽引して大幅営業・経常増益だった。自転車事業、シェアサイクル事業、および抗菌事業の好調、環境・リサイクル事業の取扱量増加などによる非エネルギーおよび海外事業の黒字転換、旧本社ビルの賃貸開始なども寄与した。純利益は前期計上の事業譲渡益および段階取得に係る差益が剥落して減益だった。
BtoC事業は15.1%減収、BtoB事業は18.8%減収、非エネルギーおよび海外事業は14.1%増収だった。自転車事業は新型コロナウイルスの影響で新入学等の需要が第2四半期にズレ込み、特別定額給付金の支給も追い風となって自社小売店舗での販売が増加した。シェアサイクル事業は首都圏を中心に拠点の開発を進めた。抗菌事業では北米のマスク向け抗菌剤の受注が拡大した。
営業利益は、BtoC事業が販売数量減少で81百万円の赤字(前年同期は28百万円の赤字)、BtoB事業が原価改善で7.5倍の6億32百万円、非エネルギーおよび海外事業が1億74百万円の黒字(同77百万円の赤字)だった。
通期は市況影響で減収、新規事業に係る先行投資(国内外の再生エネルギー事業、シェアサイクル事業など)およびIT関連投資の影響で減益予想としている。なお第4四半期の特別利益に固定資産売却益および交換益21億円を計上予定である。
通期減益予想だが、第2四半期累計は大幅営業・経常増益と順調だった。第2四半期累計の進捗率は売上高35.3%、営業利益44.0%と低水準の形だが、エネルギー事業は下期が需要期である。原価率改善効果で通期上振れ余地がありそうだ。中期的にも収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は9月の昨年来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。1月12日の終値は3070円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS137円92銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4425円87銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約401億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)