- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 綿半ホールディングスは戻り試す、21年3月期は3回目の上振れの可能性
綿半ホールディングスは戻り試す、21年3月期は3回目の上振れの可能性
- 2021/1/13 08:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
綿半ホールディングス<3199>(東1)はホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。21年3月期2桁増益予想である。小売事業の既存店売上は12月も102.2%と好調だった。巣ごもり消費も背景として通期利益予想は3回目の上振れの可能性が高いだろう。株価は9月の昨年来高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。なお1月29日に21年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。20年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業65%、建設事業31%、貿易事業4%、その他0%、営業利益構成比(調整前)は小売事業43%、建設事業29%、貿易事業24%、その他3%だった。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録された。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは生鮮食品を含めて10万点を超える豊富な品揃えが特徴だ。
M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革などを推進している。
18年12月家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネットを子会社化(20年6月綿半ドットコムに社名変更)、19年4月長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店を子会社化(19年11月綿半三原商店に社名変更)、19年8月戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(浜松市)を子会社化、20年10月家具・インテリア販売や空間デザイン事業などを展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月長野県で調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県佐久市)を子会社化した。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。
長尺屋根工事では工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、自走式立体駐車場工事では柱の少ない「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有している。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。
ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
■21年3月期2桁増益予想、さらに3回目の上振れの可能性
21年3月期の連結業績予想(7月30日に売上高を据え置き、利益を上方修正、10月29日に売上高を下方修正、利益を2回目の上方修正)は、売上高が20年3月期比4.3%減の1150億円、営業利益が17.6%増の31億円、経常利益が19.1%増の33億50百万円、純利益が38.2%増の21億円としている。
配当予想(10月29日に期末1円上方修正)は、20年10月1日付株式2分割後で期末一括の18円としている。株式2分割後に換算して比較すると20年3月期比1円増配となる。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比0.1%増の588億96百万円、営業利益が2.5倍の23億円、経常利益が2.4倍の24億34百万円、純利益が2.8倍の15億44百万円だった。
小売事業は3.6%増収で96.9%増益だった。前年の消費増税前駆け込み需要の反動があったが、新型コロナウイルスに伴う巣ごもり消費、猛暑下での冷房用品の伸長などで増収だった。利益面では、増収効果に加えて、DIY商品や園芸用品など利益率の高い商品の好調、仕入れルート開拓による原価低減、チラシの削減も寄与して計画超の大幅増益だった。
建設事業は工事延期で11.0%減収だが8.6倍増益だった。高利益率案件が多く、リモート会議活用による出張経費削減も寄与した。なお新型コロナウイルスに伴う受注活動停滞で受注残高は減少した。貿易事業は販売先の在庫確保のための前倒し出荷要請などで15.0%増収、12.3%増益だった。
通期予想については、小売事業での店舗改装に伴う一時休業、建設事業での工期遅れなどを勘案して売上高を下方修正したが、巣ごもり消費による利益率向上や販管費削減効果などで利益を2回目の上方修正とした。
第2四半期累計の営業利益進捗率は74.2%と高水準である。小売業(ホームセンター)の下期は、一般的に季節要因による商品構成差で利益率が低下する傾向があるが、会社予想は保守的と考えられる。巣ごもり消費も背景として既存店売上が好調であり、通期利益予想は3回目の上振れの可能性が高いだろう。
なお小売事業の月次売上(速報値)を見ると、20年12月は全店101.9%、既存店102.2%だった。帰省自粛で年末商戦の食品関連が苦戦したが、気温低下や記録的降雪で除雪・暖房用品などの季節商品が伸長した。また園芸用品・DIY用品・感染予防品も好調だった。なお20年4月~12月累計は全店102.6%、既存店103.1%となった。
■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す
中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。
中期経営計画では、目標値に22年3月期売上高1200億円(小売事業790億円、建設事業350億円、貿易事業58億円、その他2億円)、経常利益32億円を掲げている。
小売事業は既存店売上を維持しながら、M&Aも積極活用してネット通販など販売手法の多様化を推進する。コスト面では新決済システムや物流改革による効率化を推進する。新規出店は3年間で売場面積4500坪拡大を目指す。建設事業は新製品開発や工場ロボット化による生産性向上、貿易事業は天然原料の新製品投入や販路拡大で収益力向上を目指す。
■株主優待制度は9月末の株主対象、優待内容を拡充
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなど(1点選択)を贈呈する。なお20年9月末対象から、継続保有を対象条件に追加した。
■株価は戻り試す
株価(20年10月1日付で株式2分割)は9月の昨年来高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。1月12日の終値は1425円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS106円06銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS801円27銭で算出)は約1.8倍、時価総額は約282億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)