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JSPは戻り試す、21年3月期減収減益予想だが需要回復基調
- 2021/1/14 08:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品大手である。中期成長ドライバーとして、自動車部品用ピーブロックなど高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益予想だが、自動車部品用ピーブロックを中心に需要が回復基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は下値を切り上げている。低PBRも見直し材料であり、戻りを試す展開を期待したい。
■発泡プラスチック製品大手
発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業37%、ビーズ事業61%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
なお20年11月に、欧州のグループ会社における資金流出事案(発生時期20年10月下旬から11月上旬)を発表した。犯罪に巻き込まれた可能性が高く、捜査に全面協力するとともに、流出した資金の保全・回収手続に全力を尽くすが、損失見込額は最大約10億円としている。また20年12月に、米国子会社JSP International Groupの電子線架橋ポリエチレンシート事業について、需要拡大が見込めず生産効率改善も進展しないため、撤退して会社清算(21年6月末予定)すると発表した。
■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進
長期ビジョン「VISION2027」で、目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げ、成長戦略を推進している。
基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
新製品ではミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売し、デンカ<4061>と共同開発した建築構造物向け軽量・不燃ボード「スチロセメン」の早期製品化を目指している。
また道路擁壁として多くの実績を積み上げている「J-ウォールブロック」は、NETIS(新技術情報提供システム)に登録された。サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。
■21年3月期減収減益予想だが、22年3月期収益拡大期待
21年3月期の連結業績予想(7月31日に売上高を下方修正、営業利益を上方修正、12月14日に売上高を据え置き、営業・経常利益を上方修正、純利益を特別損失計上で下方修正)は、売上高が20年3月期比11.8%減の1000億円、営業利益が23.3%減の39億円、経常利益が25.1%減の39億円、そして純利益が80.8%減の7億円としている。配当予想は20年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
純利益は特別損失計上で大幅減益予想としている。欧州のグループ会社における資金流出事案に関する最大損失見込額10億円、および米国子会社の電子線架橋ポリエチレンシート事業撤退・会社清算に伴う子会社整理損の概算見積額13億50百万円を計上する。
ただし営業・経常利益については従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みだ。欧州における21年からの自動車排ガス規制強化に伴って、自動車メーカーが年内の駆け込み生産を行っているため、自動車部品用ピーブロックの需要が急拡大している。
なお第2四半期累計は、売上高が前年同期比14.6%減の480億80百万円、営業利益が48.1%減の12億84百万円、経常利益が48.7%減の12億68百万円、純利益が52.6%減の9億08百万円だった。新型コロナウイルスによる世界経済収縮の影響、ロックダウンに伴う生産活動への制約などで、自動車分野を中心に需要が大幅減少した。特にビーズ事業が19.3%減収で63.1%減益と低調だった。押出事業は5.7%減収だが固定費削減効果で3.7%増益だった。
21年3月期は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益予想だが、自動車部品用ピーブロックを中心に需要が回復基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。
■株価は下値切り上げ
株価は下値を切り上げている。低PBRも見直し材料であり、戻りを試す展開を期待したい。1月13日の終値は1766円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円48銭で算出)は約75倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2729円87銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約555億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)