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朝日ラバーは反発の動き、21年3月期は新型コロナ影響だが後半挽回期待
- 2021/1/15 08:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQ)は、自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の拡大も推進している。21年3月期は新型コロナウイルス影響で営業赤字予想だが、車載用を中心に需要が回復傾向であり、下期は黒字見込みとしている。後半の回復を期待したい。株価は戻り高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。
20年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業84%、医療・衛生用ゴム事業16%、営業利益構成比(調整前)は工業用ゴム事業70%、医療・衛生用ゴム事業30%だった。
なお日興アイ・アールの2020年度全上場企業ホームページ充実度ランキングにおいて、新興市場ランキングの優秀サイトに選ばれた。
■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信
2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として定めた。SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指す方針だ。
中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。
そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円とした。
光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。
技術開発では、RFIDタグ用ゴム製品で培った技術を活用した簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LEDなどの開発を推進している。
20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。
20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術を開発したと発表している。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。
さらに20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得したと発表している。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。
■21年3月期は新型コロナ影響だが後半回復期待
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月6日に公表、11月9日に売上高、経常利益、純利益を上方、営業利益を下方修正)は、売上高が20年3月期比15.7%減の63億12百万円、営業利益が41百万円の赤字(20年3月期は3億25百万円の黒字)、経常利益が92.2%減の27百万円、純利益が6.9%減の1億18百万円としている。配当予想は20円減配の10円(期末一括)である。
第2四半期累計は売上高が前年同期比23.0%減の28億49百万円、営業利益が1億26百万円の赤字(前年同期は1億52百万円の黒字)、経常利益が75百万円の赤字(同1億58百万円の黒字)、純利益が35.4%減の54百万円だった。
主力の工業用ゴム事業が28.2%減収で58百万円の赤字と落ち込んだ。新型コロナウイルス影響で車載用の需要が急減し、卓球ラケット用ラバーやRFIDタグ用ゴム製品の需要も減少した。医療・衛生用ゴム事業は3.5%増収で8.8%増益だった。プレフィルドシリンジガスケット製品、採血用・薬液混注用ゴム製品の受注が堅調だった。なお営業外収益には雇用調整助成金など補助金収入52百万円を計上、特別利益には投資有価証券売却益1億65百万円を計上した。
なお中期事業分野別の売上高は、光学事業が31.6%減収、医療・ライフサイエンス事業が4.2%増収、機能事業が26.6%減収、通信事業が18.6%減収だった。
通期予想は従来予想に対して、車載用を中心に需要が緩やかに回復する見込みとして売上高を上方修正、売上構成変化の影響で営業利益を下方修正、補助金収入が想定を上回るため経常利益を上方修正、有価証券売却益が増加するため純利益を上方修正した。
なお売上高の計画は、セグメント別には工業用ゴム事業が18.3%減収、医療・衛生用ゴム事業が2.2%減収、中期事業分野別には光学事業が18.6%減収、医療・ライフサイエンス事業が1.7%減収、機能事業が19.1%減収、通信事業が15.9%減収としている。
通期も営業赤字予想だが、半期別に見ると、上期1億26百万円の赤字に対して、下期は増収および利益率向上の効果で85百万円の黒字見込みである。下期の挽回を期待したい。
なお20年12月21日に、連結子会社(中国・広東省)において棚卸資産の過大計上の疑義が発生したと発表した。そして12月28日に調査委員会の設置を発表した。21年1月末を目途に調査結果および再発防止策を報告する予定としている。本件による業績への影響額は未定としている。
■株価は反発の動き
株価は戻り高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。1月14日の終値は644円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円01銭で算出)は約25倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS983円98銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約30億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)