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ファンデリーは新事業「旬をすぐに」の拡販推進、健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長期待
- 2021/1/18 07:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ファンデリー<3137>(東マ)は健康食宅配サービスを主力として、ヘルスケア総合企業を目指している。21年3月期は新型コロナウイルスも影響して赤字予想だが、立ち上げが遅れた新事業「旬をすぐに」の拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進している。1月15日にはワンランク上の美味しさを追求した「旬をすぐに」PREMIUMシリーズの販売を開始した。健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長を期待したい。株価は軟調展開だが、業績悪化を織り込んで底値圏だろう。出直りを期待したい。なお1月29日に21年3月期第3四半期の決算発表を予定している。
■健康食宅配サービスが主力
通販カタログ「ミールタイム」を活用した健康食(冷凍弁当)宅配サービスのMFD(Medical Food Delivery)事業を主力としている。20年3月期事業別売上高構成比はMFD事業89%、マーケティング事業11%だった。
20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始し、21年3月期第2四半期からセグメント区分を、「ミールタイム」のMFD事業、「旬をすぐに」のCID事業、周辺事業のマーケティング事業の3区分に変更した。初の生産拠点となる埼玉工場が稼働し、SPA(製造小売業)モデルへの転換を推進している。
■健康食通販カタログ「ミールタイム」のMFD事業
MFD事業は健康食通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指していることが特徴だ。管理栄養士・栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。
全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」など多様な健康食の開発やカウンセリングが強みである。
MFD事業の会員数は、15年3月期末15万2771人、16年3月期末18万2905人、17年3月期末20万3441人、18年3月期末22万1727人、19年3月期末24万4651人、20年3月期末25万9985人と増加基調である。また20年3月期末の定期コース会員数は8318人だった。定期コース売上比率は概ね60%以上、1件あたり購入単価は概ね7000円前後で推移している。
■新商品「旬をすぐに」のCID事業
20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始した。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティを特徴としている。
管理栄養士が考えた栄養バランス、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。また独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」としている。
CID事業「旬をすぐに」の立ち上げが計画に対して遅れたが、拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進している。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。また最低購入金額の引き下げと購入金額に応じた送料体系への変更を実施した。1月4日には新配送体系で最短翌日配達を開始した。さらに1月15日にはワンランク上の美味しさを追求した「旬をすぐに」の新ブランドPREMIUMシリーズの販売を開始した。
■周辺領域のマーケティング事業
マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。
■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」
日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」を開始した。20年4月から3年間の活動を予定している。
賛同企業として20年6月には、にんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミン、7月には東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、8月にはピエトロ、湖池屋、宝酒造、9月には田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズが相次いで新規加入している。
■23年3月期営業利益20億円目標
中期経営計画「will2022」では目標値に23年3月期売上高100億円、営業利益20億円、営業利益率20%を掲げている。ヘルスケア総合企業を目指し、新工場稼働によってSPAモデルへの事業構造転換を推進する。
一人暮らし高齢者の増加、生活習慣病患者や食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。
■21年3月期赤字予想だが、中期成長期待
21年3月期の非連結業績予想(10月30日に下方修正)は、売上高が20年3月期比0.1%増の33億50百万円、営業利益が2億95百万円の赤字(20年3月期は5億39百万円の黒字)、経常利益が2億98百万円の赤字(同5億36百万円の黒字)、純利益が2億43百万円の赤字(同3億45百万円の黒字)としている。配当予想は据え置いて20年3月期と同額の3円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比10.7%減の15億12百万円、営業利益が21百万円の赤字(前年同期は2億59百万円の黒字)、経常利益が24百万円の赤字(同2億59百万円の黒字)、純利益が39百万円の赤字(同1億64百万円の黒字)だった。
マーケティング事業(10.9%増収で21.6%増益)は順調だったが、MFD事業(12.9%減収で8.9%減益)は新型コロナウイルスの影響で医療機関への外来患者が減少し、紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得が想定を下回った。CID事業(売上高4百万円、営業利益2億67百万円の赤字)は、サービス開始が遅れため顧客獲得が想定を下回り、費用が先行した。在庫評価損の計上、減価償却費や広告宣伝費の増加も影響した。
通期のセグメント別営業利益計画は、MFD事業が9.6%増の6億72百万円、CID事業が9億54百万円の赤字、マーケティング事業が37.6%増の3億44百万円としている。新型コロナウイルスの影響や新事業「旬をすぐに」の立ち上げ遅れで通期赤字予想だが、CID事業「旬をすぐに」の拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進しており、健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長を期待したい。
■株価は底値圏
株価は軟調展開が続いているが、業績悪化を織り込み済みで底値圏だろう。出直りを期待したい。1月15日の終値は577円、今期予想配当利回り(会社予想の3円で算出)は約0.5%、前期実績PBR(前期実績のBPS477円13銭で算出)は約1.2倍、時価総額は約37億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)