イワキは上値試す、21年11月期大幅営業・経常増益で連続増配予想

 イワキ<8095>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。20年11月期は新型コロナウイルスの影響で営業・経常減益(純利益は特別利益計上で大幅増益)だったが、21年11月期は需要回復し、大幅営業・経常増益で連続増配予想としている。収益拡大を期待したい。なお1月28日に第1回新株予約権の大量行使を発表している。株価は決算発表を機に急伸して96年以来の高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分は20年11月期からファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)、医薬事業(医薬品、医療機器)、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)とした。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業が33%、医薬事業が16%、HBC・食品事業が40%、化学品事業が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。

 20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、20年3月には医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマを子会社化、20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、20年7月には岩城製薬が鳥居薬品佐倉工場を継承した新会社の全株式を取得して岩城製薬佐倉工場(株)とした。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携した。

 これらのM&Aによって、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生したとしている。ファインケミカル事業および医薬事業の中心となるビジネスとして育成する。

■持株会社体制に移行して商号変更(21年6月1日付予定)

 21年6月1日付(予定)で持株会社体制に移行して、商号をアステナホールディングスに変更する。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。

 事業会社は、ファインケミカル事業がスペラファーマおよびスペラネクサス(スペラファーマの子会社として20年7月設立)、医薬事業が岩城製薬および岩城製薬佐倉工場、HBC・食品事業がイワキ(分割準備会社として20年7月設立)およびアプロス、化学品事業がメルテックス、東京化工機、および海外子会社等とする。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編、人的リソースの適正配置、働き方改革などに取り組んでいる。持株会社への移行後、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、本社機能の一部を石川県珠洲市に移転する。また石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■新中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 21年1月に2030年を目標とした新中長期ビジョン「Astena2030」を策定した。定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%とした。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお20年12月に第三者割当(割当予定先はSMBC日興証券)による第1回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行した。岩城製薬佐倉工場における注射剤製造ラインなど、成長に向けた設備投資資金を調達する。そして1月28日には第1回新株予約権の大量行使を発表している。

■21年11月期大幅営業・経常増益で連続増配予想

 20年11月期の連結業績は売上高が19年11月期比6.0%増の653億41百万円、営業利益が4.1%減の20億35百万円、経常利益が15.1%減の19億68百万円、純利益が29.4%増の19億83百万円だった。配当は3円増配の16円(第2四半期末7円、期末9円)とした。4期連続増配である。

 新型コロナウイルスの影響で営業・経常減益だったが、M&A効果でカバーし、計画超で着地した。純利益は負ののれん発生益6億20百万円を計上して大幅増益だった。なお売上高と純利益は創業来最高だった。

 ファインケミカル事業は31.9%増収で4.0%減益だった。ジェネリック用途の新製品用大型原薬の採用などで大幅増収だが、電子・機能材料が新型コロナウイルスの影響で需要減少したため微減益だった。医薬事業は29.6%増収で18.8%増益だった。M&A効果(新規連結のスペラファーマ、岩城製薬佐倉工場)も寄与して大幅伸長した。HBC・食品事業は9.0%減収で赤字拡大した。新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要が減少した。化学品事業は1.2%増収で3.8倍増益だった。表面処理薬品の需要が下期回復傾向となり、合理化などの利益改善策も寄与した。

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。5期連続増配である。

 新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が増加基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。純利益は特別利益が剥落して横ばいだが、M&Aも寄与して営業・経常増益予想としている。収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照、20年8月に株主優待制度のページを新設)する。

■株価は上値試す

 株価は決算発表を機に急伸して96年以来の高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。1月28日の終値は666円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約231億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る