Delta-Fly Pharmaは新規抗がん剤開発目指す

Delta-Fly Pharma<4598>(東マ)は新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質を利用するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。臨床試験が進展して早期の上市・収益化を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。なお1月13日と1月19日には、20年12月発行の第4回新株予約権の大量行使を発表している。

■新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャー

 新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質をモジュール(構成単位)として利用し、創意工夫を加えてアセンブリ(組み立て)することで、新規抗がん剤を創製するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。基礎研究がほとんど不要となり、臨床での有効性と安全性の予測が可能となるため、一般的な抗がん剤開発に比べて研究開発の期間が短く、かつ臨床試験で失敗する開発リスクも低減される。

 研究開発のマネジメント業務に集中し、具体的な業務については外部の研究開発受託会社や製造受託会社に委託するという効率的な運営を特徴としている。研究開発段階では提携製薬会社からの契約一時金、マイルストーン、開発協力金が主な収入となり、提携対象製品が上市に至った場合は売上高に応じたロイヤリティ収入を得る。

■開発中のパイプライン

 開発中のパイプラインは、難治性・再発急性骨髄性白血病を対象疾患とする抗がん剤候補化合物DFP-10917(米国で臨床第3相試験中、日本で臨床第1相準備中)、肺がん等を対象疾患とするDFP-14323(ウベニメクスの適応追加、日本で臨床第2相試験中)、膵がん等の固形がんを対象疾患とするDFP-11207(米国で臨床第2相準備中)、固形がん・血液がんを対象疾患とするDFP-14927(米国で臨床第1相試験中)、腹膜播種移転がんを対象疾患とするDFP-10825(前臨床試験中)、固形がんを対象疾患とするがん微小環境改善剤DFP-17729(日本で臨床第2相試験中)である。

 DFP-10917は日本で日本新薬、DFP-17729は日本で日本ケミファと提携している。

 DFP-14323については、20年3月に国内臨床第2相試験の症例登録が完了、20年4月に臨床第3相試験(大規模比較試験)に移行する見通しになったと発表している。臨床第3相試験(大規模比較試験)は日本と中国での合同試験の実施を目指し、中国の製薬会社と交渉を開始している。20年5月には欧州における特許成立を発表した。

 また20年6月には国内臨床第2相試験で登録した全症例の病勢コントロール率が100%になったと発表した。20年7月には臨床第2相試験の独立の立場の医師による効果判定評価が予定通り終了した。そして「脳移転を有する末期非小細胞肺がん患者を治療するための組み合わせ医薬品」に関する特許をPCT(特許協力条約)加盟国に対して国際出願した。

 DFP-17729は、20年3月に日本ケミファ<4539>に対して日本国内における独占的販売権、および日本国内で販売するための独占的製造権を付与するライセンス契約を締結した。20年11月には、治験参加施設から末期膵臓がん患者を対象とする臨床第1相・第2相試験の第1症例が登録されたとの報告を受けたと発表している。今後は第1相部分の第6症例までの安全性が確認された時点で、さらに第2相部分の33症例を登録し、合わせて39症例での効果と安全性を評価し、その結果をもって国内外での臨床第3相試験への移行や、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への承認申請の可能性について検討する。

 なお21年1月には、DFP-17729に関する開発技術基盤と知財基盤に関して、DFP-17729に係る発明3種類が何れも日本で特許成立しているとリリースした。膵臓がんの適応だけでなく、悪性メラノーマ、胃がん、非小細胞肺がん等の適応取得のための日本における開発技術基盤と知的基盤が整ったとしている。

 DFP-14927は18年10月米国で物質特許成立、18年12月米国FDA(食品医薬局)へIND(臨床試験用の新医薬品)申請、19年1月米国FDAによるIND安全性審査が完了して米国での第1相臨床試験の実施が許諾された。19年7月には日本でも物質特許が成立した。

 DFP-10917は、米国MD Anderson Cancer Centerを中心に臨床第3相(単剤療法)を進めているが、19年4月にDFP-10917と難治性・再発慢性リンパ性白血病治療薬Venetoclaxの併用臨床試験の検討を開始すると発表した。20年5月には、DFP-10917と併用を予定しているVenetoclaxの新規誘導体の物質特許を出願したと発表した。

 DFP―11207は20年5月に米国での臨床第1相試験結果の論文が米国のがん治療専門誌に掲載された。米国での臨床第1相試験結果に基づき、臨床第2相試験の準備を進める。

 また19年2月には、北米における臨床開発事業の拡大に伴ってバンクーバー事務所を開設している。DFP-10917第3相臨床試験、DFP-11207第2相臨床試験(準備中)、DFP-14927第1相臨床試験を推進する。19年11月には、米国でのDFP-10917第3相臨床試験、およびDFP-14927第1相臨床試験について、症例登録開始の報告を受けたと発表している。

 20年8月にはDFP-10917およびDFP-14927の米国での治験状況をリリースした。新型コロナウイルスの影響で症例登録が鈍化しているが、DFP-10917第3相臨床試験に関しては治験参加病院数を増やす方針で、22年度中に米国で上市する方針に変更はないとしている。DFP-14927(DFP-10917の週1回投与型製剤)第1相臨床試験に関しては、現在の投与量付近で安全性が確認でき次第、臨床第2相試験に相当する拡大試験に移行する(21年4月予定)としている。

 なおDFP-10825については1月27日に、安全性試験を中国で再開したこと、原薬の核酸物質と薬物輸送担体の製造を日本で終え、米国の製造会社で治験薬の製造を21年3月に着手することをリリースした。DFP-10825の関連発明4件は米国、欧州、中国、日本他で特許成立している。また米国で実施予定だったDFP-10825の次期新薬候補は、コロナ禍の影響を鑑みて、より安全な日本を中心に臨床開発を進める方針としている。

 21年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が3億円、営業利益が8億50百万円の赤字、経常利益が8億50百万円の赤字、純利益が8億50百万円の赤字としている。ライセンス契約に伴うマイルストーン対価3億円を見込んでいる。なお第2四半期累計は売上高が1億円、営業利益が4億63百万円の赤字だった。臨床試験が進展して早期の上市・収益化を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。1月29日の終値は1119円、時価総額は約50億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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