【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスラポート・ダイニングは中期成長力を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アスラポート・ダイニング<3069>(JQS)は外食FC事業や食品製造販売事業などを展開している。株価は急伸した4月高値から反落したが、急伸前水準まで下押す動きは見られない。値幅調整は完了しているようだ。中期成長力を評価して切り返し展開だろう。

 外食FC事業や食品製造販売事業を展開する持株会社である。傘下の事業会社に、焼肉店「牛角」エリアFC本部運営や釜飯・串焼の居酒屋「とりでん」FC総本部運営などのプライム・リンク、鶏料理専門居酒屋「とり鉄」FC総本部運営などのとり鉄、たこ焼きや洋菓子「GOKOKU」事業(13年12月事業譲受)のフードスタンドインターナショナル、業務用乳製品加工の弘乳舎(13年9月子会社化)を置き、14年9月には焼鳥居酒屋「ぢどり亭」「浪花屋鳥造」を関西中心に展開しているレゾナンスダイニングを子会社化した。

 14年9月末の店舗数は焼肉「牛角」172店舗(直営6、FC166)、居酒屋「とりでん」69店舗(直営4、FC65)、居酒屋「おだいどこ」20店舗(直営7、FC13)、居酒屋「とり鉄」60店舗(直営11、FC49)など合計343店舗(直営43、FC300)で、レゾナンスダイニングを加えるとグループ総合計431店舗だった。なお焼肉「牛角」のエリアは東北、北関東、北陸、東海、近畿、九州(大分・熊本を除く)、および沖縄の27府県である。

 FCによる外食ブランド展開、持株会社制による効率的運営とポートフォリオ管理、六次産業への展開を促す事業基盤がビジネスモデルの特徴だ。中期成長戦略として、既存ブランドの競争力強化と成長、ブランド・ポートフォリオの多様化、海外市場への進出、食品生産事業と六次産業化への取り組みを推進している。

 従来の外食FC運営の枠にとどまらず、重点戦略を連動させて生産から流通・飲食・小売までを包括し、多層的に協業することでシナジー効果を発揮する「食のバリューチェーン」企業を目指す戦略だ。

 既存ブランドの競争力強化と成長では、関西エリアにおける焼肉「牛角」の都市型大型店舗の成功事例をベースとして積極出店を推進する。

 ブランド・ポートフォリオの多様化では、M&Aを活用した新業態の獲得や他社ブランド業態をFCパッケージに育成する戦略を推進する。

 15年2月には米Taco Bell社と、世界的なメキシカン・ファーストフードブランドである「Taco Bell」の日本国内でのFC契約を締結し、4月に1号店を東京・渋谷にオープンした。

 15年3月には筑豊ラーメン店などを展開するワイエスフード<3358>との資本業務提携を発表した。相互に株式を継続保有する。ワイエスフードが持つブランド店舗の海外出店加速や、国内での原材料共同購入によるコスト削減や物流拠点最適化などのシナジー効果が期待できるとしている。

 製造分野では外食とも協業して新商品開発を推進し、弘乳舎から大手外食チェーンへの商品供給も拡大する。また15年4月には中沢フーズが保有する茨城乳業の株式の一部を譲り受ける(出資比率70%)とともに、中沢フーズと業務提携した。茨城乳業は茨城県内で生乳処理、プリン・ヨーグルトなどのデザート、牛乳類を製造販売している。当社が展開する外食チェーンおよび外部へ向けた取引の拡大が見込まれる。

 海外事業は14年9月、英国3社(水産物加工卸売のT&S社、食材輸出入のS.K.Y.社、寿司店および水産物小売店運営のAtari-Ya社)を持分法適用会社化し、さらに15年5月には株式を追加取得して連結子会社化した。欧米における日本食ブームも追い風であり、14年4月設立のアスラポート・フランスとともに欧州市場での展開を加速する。

 また15年4月には、全国に約300店舗を展開するラーメンチェーン大手のどさん子と業務提携した。海外での日本食チェーン展開を共同で行う。第一弾として、とり鉄とどさん子のコラボレーション店舗をオーストラリアのメルボルンに出店した。なお資本業務提携したワイエスフードとの共同展開とは、出店エリア、業態、価格帯、メニュー構成、ブランドなどをすみ分けることによって、競合が生じないよう対処する。

 5月14日発表の前期(15年3月期)連結業績(レゾナンスダイニング子会社化に伴って9月19日に売上高、利益を増額修正)は、売上高が前々期比18.8%増の111億67百万円、営業利益が同24.5%増の7億円、経常利益が同35.1%増の6億22百万円、そして純利益が同29.4%増の3億88百万円だった。配当予想は無配継続とした。ROEは同1.3ポイント低下して17.9%、自己資本比率は5.1ポイント上昇して23.1%となった。

 関西都市部への大型店舗出店も寄与した「牛角」の好調、フードスタンドインターナショナルの洋菓子「GOKOKU」事業および弘乳舎の通期寄与、弘乳舎の加工乳製品やグループ運営外食店舗向けデザートの好調、レゾナンスダイニングの新規連結、ポートフォリオ多様化戦略に沿ったアライアンス事業拡大、居酒屋業態の不採算店舗閉店や業態転換による収益力改善、FC加盟店からのロイヤリティ収入およびFC加盟店への食材売上の増加などで大幅増収増益だった。

 15年3月末のグループ店舗数は同81店舗増加の426店舗(直営が同4店舗減少の44店舗、FCが同87店舗増加の384店舗、浪花屋鳥造のうちプライム・リンクがフランチャイジーとして直営する2店舗を重複カウント)となった。既存店売上は牛角101.7%、とりでん98.1%、おだいどこ95.8%、とり鉄99.2%、ぢどり亭104.6%、浪花屋鳥造98.7%、グループ全体100.3%だった。

 セグメント別に見ると、店舗運営事業は店舗数減少で売上高が同8.3%減の27億71百万円だったが、営業利益(全社費用等調整前)が同57.8%増の1億80百万円となった。フランチャイズ事業は、レゾナンスダイニングの新規連結などで売上高が同17.9%増の39億88百万円、営業利益が同31.0%増の14億97百万円だった。

 食品事業は、弘乳舎の既存取引先への販売量増加や販売チャネル拡大などで売上高が同60.0%増の30億46百万円、営業利益が同50.7%増の1億14百万円だった。その他は、転貸における売上や加盟企業向け販促物の増加などで売上高が同25.3%増の13億60百万円、営業利益が同57.6%増の2億09百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億73百万円、第2四半期(7月~9月)24億89百万円、第3四半期(10月~12月)30億05百万円、第4四半期(1月~3月)30億00百万円、営業利益は第1四半期2億66百万円、第2四半期85百万円、第3四半期1億51百万円、第4四半期1億98百万円だった。第3四半期以降はレゾナンスダイニングの新規連結も寄与した。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月14日公表)は、売上高が前期比35.5%増の151億35百万円、営業利益が同0.9%増の7億07百万円、経常利益が同2.1%増の6億36百万円、純利益が同5.2%増の4億09百万円で、配当予想は無配継続としている。

 主力の「牛角」の好調、レゾナンスダイニングの通期連結、茨城乳業の新規連結、さらにメキシカン・ファーストフード「Taco Bell」なども寄与して大幅増収見込みだ。利益については人件費、広告宣伝費、新規出店・改装費用、連結範囲拡大、償却負担などで伸び悩み予想だが、増額余地があるだろう。

 15年4月ブランド別売上(直営店+FC店、前年比速報値)動向を見ると既存店は牛角101.4%、とりでん100.4%、おだいどこ85.9%、とり鉄98.9%、ぢどり亭107.1%、浪花屋鳥造104.1%、外食事業合計99.7%だった。全店は牛角106.4%、とりでん98.5%、おだいどこ68.2%、とり鉄97.8%、ぢどり亭102.5%、浪花屋鳥造91.9%、外食事業合計111.8%だった。概ね順調に推移している。

 中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、目標数値として17年3月期売上高112億71百万円、営業利益7億89百万円、売上高営業利益率7.0%、ROE20.0%、D/Eレシオ1.2倍を掲げている。売上高は16年3月期に前倒し達成見込みであり、営業利益も前倒し達成の可能性がありそうだ。ブランド・ポートフォリオの多様化戦略が進展し、海外展開なども寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

 株主優待制度は毎年3月末および9月末時点の500株以上所有株主を対象として実施している。所有株式数500株以上~1000株未満所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から1点(3000円相当)、1000株以上所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から2点(6000円相当)を贈呈する。

 株価の動きを見ると、急伸した4月高値1055円から反落し、概ね600円近辺で推移している。ただし急伸前の水準300円~400円近辺まで下押す動きは見られない。値幅調整は完了しているようだ。

 6月1日の終値589円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS20円22銭で算出)は29倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS128円36銭で算出)は4.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると、売買高が急増した4月高値の上ヒゲと大陰線でシコリ感を残したが、13週移動平均線が接近して下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形であり、中期成長力を評価して切り返し展開だろう。

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