- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ジャパンフーズは戻り試す、22年3月期収益回復期待
ジャパンフーズは戻り試す、22年3月期収益回復期待
- 2021/2/18 07:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託製造の国内最大手である。持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、新規商材受注や積極的設備投資による競争力向上を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で第3四半期累計が赤字となり、通期予想も下方修正したが、22年3月期の収益回復を期待したい。株価は反発の動きを強めている。21年3月期予想下方修正に対する反応は限定的だった。戻りを試す展開を期待したい。
■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルな生産が強み
伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産が強みだ。
新規ビジネス分野として、連結子会社JFウォーターサービスは水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。
収益面の特性として、個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体が、夏場の上期(4~9月)に繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。
■「100年企業」目指して積極的設備投資
中期経営計画「JUMP+プラス2021 次のステージへ」では、持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、経営課題である「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」に対する取り組みを確実に進化させる方針としている。
経営目標値には22年3月期売上高189億円、営業利益10億円、経常利益11億円、純利益7億50百万円、ROE7.6%などを掲げている。配当については、定額の安定配当(1株当たり27円)に加えて、期間業績に応じて配当性向20%を限度とする期末配当の増配を行う方針としている。
重点戦略としては、コアセグメント(国内飲料受託製造)における積極的設備投資による競争力向上、新規セグメント(東洋飲料、ウォーターネット、JFウォーターサービス)における既存事業拡充、新たなビジネスモデル創出(オペレーション・メンテナンス技術の活用・収益化など)を掲げている。
総合スクラップ&ビルド第2フェーズとして、工場建屋およびSOT缶ラインを新設(投資額約73億円、竣工時期20年12月下旬予定)する。
飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。
このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まり、飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。
■21年3月期は新型コロナ影響だが、22年3月期の収益回復期待
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、7月30日に公表、11月2日に下方修正、2月4日に2回目の下方修正)は、売上高が20年3月期比20.2%減の125億円、営業利益が8億20百万円の赤字(20年3月期は4億08百万円の黒字)、経常利益が5億70百万円の赤字(同4億58百万円の黒字)、当期純利益が3億50百万円の赤字(同1億19百万円の黒字)としている。配当予想は20年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)である。
第3四半期累計は売上高が前年同期比20.8%減の94億50百万円、営業利益が5億78百万円の赤字(前年同期は3億75百万円の黒字)、経常利益が4億90百万円の赤字(同4億14百万円の黒字)、四半期純利益が2億97百万円の赤字(同2億85百万円の黒字)だった。
新型コロナウイルスの影響で大幅減収・赤字だった。四半期純利益段階での利益増減分析は、増益要因が採算改善等2億円、低重心経営・事業取込利益改善1億70百万円、減益要因が新型コロナウイルス影響9億50百万円だったとしている。
主力の国内飲料受託製造事業が、新型コロナウイルスによる市場環境悪化の影響を受けて20.7%減収だった。受託製造数は23.7%減少した。利益は6億36百万円の赤字(前年同期は3億60百万円の黒字)だった。
海外飲料受託事業の利益は、受託製造数の増加で8.3倍の1億33百万円と大幅伸長した。水宅配事業の利益は、工場建屋・SOT缶ライン新設工事に伴う製造ライン休止・外注化で3百万円の赤字(前年同期は21百万円の黒字)だった。水宅配フランチャイズ事業の利益は34.9%増の15百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高40億71百万円で経常利益4億20百万円、第2四半期は売上高36億17百万円で経常利益2億79百万円、第3四半期は売上高17億62百万円で経常利益11億89百万円の赤字だった。
通期予想は従来予想に比べて、事業取込利益改善幅が拡大するが、国内飲料受託製造事業において緊急事態宣言再発出などで、新型コロナウイルスによるマイナス影響額が増加する見込み(通期純利益ベースで13億50百万円の減益要因見込み)とした。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で赤字予想だが、新規商材受注や積極的設備投資による競争力向上を推進して、22年3月期の収益回復を期待したい。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は戻り試す
株価は反発の動きを強めている。21年3月期予想下方修正に対する反応は限定的だった。21年3月期の業績悪化を織り込み済みであり、戻りを試す展開を期待したい。2月18日の終値は1250円、今期予想配当利回り(会社予想27円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1636円00銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約64億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)