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テクマトリックスは21年3月期3Q累計大幅増益で通期上振れ余地
- 2021/2/19 08:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)は、セキュリティ関連製品販売やクラウドサービス提供などの情報サービス事業を展開し、成長ドライバーのクラウドサービスが拡大している。21年3月期第3四半期累計はリモートワークを支援するセキュリティ関連製品の需要増などで大幅増益だった。通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は順調であり、通期上振れ余地がありそうだ。さらにクラウドサービスが牽引して収益拡大基調だろう。株価は10月の上場来高値圏から反落して上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■成長ドライバーのクラウドサービスが拡大
セキュリティ関連製品販売やクラウドサービス提供などの情報サービス事業を展開し、成長ドライバーのクラウドサービスが拡大している。
グループ会社は、医療情報クラウドサービスのNOBORI(三井物産<8031>が出資して共同で事業展開)、遠隔画像診断関連ITサービスの医知悟、NOBORIの子会社(19年4月子会社化)でクラウド型線量管理システムのA-Line、ITシステム基盤コンサルティングのクロス・ヘッド、クロス・ヘッドの子会社で沖縄県内におけるIT人材教育やデータセンターサービスの沖縄クロス・ヘッド、システム開発のカサレアル、金融系ITベンチャーの山崎情報設計(19年11月子会社化)である。
セグメント区分は情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ関連ハードウェアの販売、保守・運用・監視サービスなど)、およびアプリケーション・サービス事業(医療・CRM・EC・金融を重点分野とするクラウドサービス提供、システム受託開発など)としている。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は情報基盤事業67%、アプリケーション・サービス事業33%、営業利益構成比は情報基盤事業75%、アプリケーション・サービス事業25%だった。またストック売上比率は情報基盤事業で38.6%、アプリケーション・サービス事業で53.7%だった。
クラウドサービスでは、コンタクトセンター向け顧客情報・対応履歴一元管理CRMシステム「Fastシリーズ」や、医療情報クラウドサービス「NOBORI」などを展開している。20年3月期末の「NOBORI」の画像保管患者数は3118万7000人、保存検査件数は1億7779万4000件である。21年2月には日本電気(NEC)と「Fastシリーズ」クラウドサービスの販売代理店契約を締結した。
■全領域におけるサービス化を加速
中期経営計画「GO BEYOND 3.0」では、目標数値に21年3月期売上高280億円、営業利益27億円(情報基盤事業の売上高が185億円で営業利益が17億50百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が95億円で営業利益が9億50百万円)を掲げている。
事業戦略としては、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティ(安心と安全)の追求、資本・業務提携や大学・研究機関との連携など事業運営体制の多様化、全領域におけるサービス化の加速、AI利用を含むデータの利活用、BtoC(消費者向けビジネス)への参入、海外市場での事業の加速、グループを横断した人財・技術の有効活用など事業運営基盤の強化、M&Aの活用を掲げている。
アライアンス戦略では、20年5月NOBORIがエムスリー<2413>と業務提携、NOBORIがインドのDeepTek社に出資して資本業務提携、20年6月NOBORIがエムスリーと共同運営する医用画像診断支援AIプラットフォーム事業においてエルピクセルと業務提携、20年7月NOBORIがクラウド型ERプラットフォームのTXP Medicalと業務提携、沖縄クロス・ヘッドがロゼッタ<6182>と販売代理店契約を締結して業務提携、20年10月インフラ構築・保守を得意とするエイチ・シー・ネットワークとパートナー契約を締結した。
新サービスでは、20年5月NOBORIが医療情報を患者がスマートフォンから閲覧できるPHRサービスを開始、テクマトリックスが学校法人軽井沢風越学園向けにコミュニケーション・プラットフォーム「typhoon」を新規開発・導入して教育分野領域のソリューションを開始、20年6月クロス・ヘッドがテレワーク時代の情報漏洩対策と生産性向上をワンストップサービスで実現するCASSの提供を開始、NOBORIがエムスリーと共同運営する医用画像診断支援AIプラットフォーム事業においてCOVID-19肺炎画像解析プログラムの販売を開始した。
20年12月には、農家と小売業者(消費者)とのサプライチェーンを統合するファームアグリケーターであるインドのベンチャー企業AIBONOに資本参加した。
■21年3月期3Q累計大幅増益で通期上振れ余地、収益拡大基調
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、10月30日に公表)は、売上高が20年3月期比5.1%増の300億円、営業利益が9.0%増の33億円、経常利益が9.3%増の33億円、当期純利益が12.7%増の21億円としている。配当予想は20年7月1日付け株式2分割換算後の比較で2円増配の17円(第2四半期末7円、期末10円)としている。
セグメント別の計画は、情報基盤事業が売上高205億円で営業利益23億円、アプリケーション・サービス事業が売上高95億円で営業利益10億円としている。
なお第1四半期から企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」を早期適用している。
第3四半期累計(新収益認識基準)は、売上高が前年同期比7.0%増の219億34百万円、営業利益が25.0%増の26億25百万円、経常利益が25.2%増の26億23百万円、四半期純利益が26.5%増の17億17百万円だった。いずれも過去最高だった。
なお参考値として従来の会計処理方法で比較すると28.8%増収、52.3%営業増益だった。また新収益認識基準によって、従来はフローとして計上していた売上(情報基盤事業の保守一体の製品販売や、アプリケーション・サービス事業のテストツール売上など)を、厳格にストック売上として計上しているため、全体的にストック売上比率が上昇している。
情報基盤事業は9.7%増収で29.7%増益だった。特に第1四半期に新型コロナウイルスでリモートワークを支援するセキュリティ関連製品の需要が急増し、リモートワーク環境の整備や各拠点のセキュリティ対策の一元化を目的とした大型案件を受注した。沖縄クロス・ヘッドの事業構造改革による採算性向上も寄与した。
アプリケーション・サービス事業は1.7%増収で13.4%増益だった。ソフトウェア品質保証分野が大規模展示会中止による顧客接点減少など新型コロナウイルスの影響を受けたが、主力の医療分野の医療情報クラウドサービスNOBORIの累積契約施設数が増加し、CRM分野のFAQシステムも順調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高74億46百万円で営業利益9億69百万円、第2四半期は売上高70億37百万円で営業利益7億13百万円、第3四半期は売上高74億51百万円で営業利益9億43百万円だった。
通期もクラウドセキュリティ製品などが好調に推移して、中期経営計画の目標値を達成する見込みだ。新型コロナウイルスによる不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は売上高が73.1%、営業利益が79.5%と順調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。さらにクラウドサービスが牽引して収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年9月末の株主対象
株主優待制度は、毎年9月30日現在の500株以上保有株主を対象に、保有株式数に応じて実施(詳細は会社HP参照)している。なお20年7月1日付で1株を2株に分割したが基準を変更していない。
■株価は調整一巡
株価は10月の上場来高値圏から反落して上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月18日の終値は1772円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円84銭で算出)は約34倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約1.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS343円67銭で算出)は約5.2倍、時価総額は約789億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)