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ケイアイスター不動産は上値試す、21年3月期2回目の上方修正で中期成長も期待
- 2021/2/19 08:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ケイアイスター不動産<3465>(東1)は首都圏中心に戸建分譲などの不動産事業を展開し、M&A・アライアンスも積極活用して「不動産×IT」を推進している。21年3月期第3四半期累計はコロナ禍でも契約が好調に推移して大幅増収増益だった。そして通期の連結業績予想および配当予想を上方修正した。分譲住宅事業の成長戦略を加速して収益拡大基調だろう。中期成長も期待したい。株価は急伸して上場来高値を更新した。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■戸建分譲や注文住宅などの不動産事業
首都圏中心に1次取得層向け戸建住宅分譲などの不動産事業を展開している。成長戦略として、強みであるコンパクト分譲開発によるセミオーダー新築住宅(高品質・低価格なデザイン住宅)、テクノロジープラットフォームによる独自のビジネスモデルをベースに、戸建住宅の全国展開および全国シェアの拡大を加速している。20年3月には東北地区へ初進出した。
20年3月期の売上構成比は、分譲住宅事業64%、注文住宅事業1%、中古住宅事業4%、よかタウン事業(子会社よかタウンが分譲住宅・注文住宅)13%、旭ハウジング事業(子会社旭ハウジングが神奈川県中心に分譲住宅)5%、フレスコ事業(18年8月連結子会社化したフレスコおよびフレスコの子会社おゆみ野住宅が千葉県中心に注文住宅)5%、建新事業(19年1月持分法適用関連会社の建新の株式を追加取得して連結子会社化)7%、その他1%だった。
また20年3月期の販売棟数は、分譲住宅事業(土地販売含む)が2700棟、注文住宅事業が109棟、中古住宅事業が304棟、よかタウン事業(土地販売含む)が553棟、旭ハウジング事業(土地販売含む)が175棟、フレスコ事業が分譲住宅109棟、土地販売54区画、注文住宅97棟、建新事業が注文住宅72棟、土地販売27区画、分譲住宅123棟だった。
19年4月千葉県柏市中心に不動産売買・仲介を行うBRエステートを子会社化、19年8月埼玉県朝霧市中心に不動産仲介・リフォーム事業を行うハウスラインを子会社化、20年4月首都圏中心に戸建住宅分譲やリノベーションマンションを行う東京ビッグハウスを子会社化、21年1月埼玉県中心に戸建注文住宅設計・販売を行うプレスト・ホームを子会社化した。
■不動産仲介会社を組織化、FC事業も開始
販売促進に向けて不動産仲介会社の組織化を図り、17年2月「KEIAI.NET」をスタートさせた。順次エリアを拡大させて加盟店数は19年3月期末に207となった。AIによる仲介会社向け商談サポートシステムを導入し、中期的に不動産ネットワークにおける加盟店数全国NO.1を目指す方針だ。
19年6月エリア毎の用地仕入と販売網の強化を図るためFC事業KEIAI FCを開始、19年7月いえらぶ社と提携してKEIAI FC向け業務支援クラウドサービスKEIAI PRO NETの提供を開始した。なお20年12月末時点でFC事業KEIAI FCの加盟店は48店舗となった。
■M&A・アライアンスを積極活用して「不動産×IT」推進
M&A・アライアンスを積極活用して「不動産×IT」を推進している。IT成長戦略として、商品力向上による付加価値創造と競争力強化、AIやRPAなどを活用したデータドリブン経営による在庫回転率や生産性向上および利益・財務体質改善、住宅分譲の既存フロービジネス強化とストック型ビジネスでの新たな収益構造構築、IT施策のグループ・加盟店への横展開およびシナジー拡大、次世代不動産ポータルサイト開発による加盟店への住宅購入見込客送客強化を推進する。
20年2月カインズと業務提携、20年5月セゾンファンデックスと業務提携してリースバック事業に参入、20年6月不動産業界に特化した採用コンサルティング事業を行う子会社KSキャリを設立(20年7月人材派遣・紹介事業を開始)した。
20年9月には、BI・RPA・AI―OCR技術を活用することで、新築戸建事業におけるデータの収集と問題の可視化、定期提携業務の自動化、紙媒体のデータ入力を効率化し、20年2月から7月までの半年間で2000時間以上の工数削減に成功したと発表している。
20年10月にはタイムリープ社の遠隔接客サービス「RURA」を導入した。音声案内によって新型コロナウイルス感染予防策として非接触型営業の拡充を図る。また建築現場の管理効率化に向けて、コムテックスの建築現場向けコミュニケーションアプリ「Kizuku」を独自にカスタマイズした「Kizuku PRO」を導入した。
20年11月には子会社Casa robotics(カーザロボティクス)を設立した。ひら家「IKI」の販売に特化して、非接触型営業、VR(仮想現実)での内覧、アプリなどの新技術を活用した接客を推進する。21年4月までに関東アリア(埼玉、群馬、栃木、茨城)の合計12ヶ所に展示場オープンを予定している。
■21年3月期3Q累計大幅増収増益、通期2回目の上方修正
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月11日公表、2月9日に2回目の上方修正)は、売上高が20年3月期比22.6%増の1480億円、営業利益が83.6%増の118億円、経常利益が83.6%増の116億円、当期純利益が95.3%増の70億円としている。配当予想(2月9日に期末51円上方修正)は63円増配の139円(第2四半期末44円、期末95円)である。
第3四半期累計は売上高が前年同期比26.1%増の1098億03百万円、営業利益が92.7%増の82億04百万円、経常利益が2.0倍の82億19百万円、四半期純利益が94.0%増の48億61百万円だった。
新型コロナウイルスに伴うライフスタイルの変化で郊外の戸建住宅需要が拡大していることも追い風として、グループ全体で分譲住宅事業の成長戦略を加速した。このため注文住宅事業は13.8%減収、中古住宅事業は58.4%減収だったが、主力の分譲住宅事業が26.7%増収で72.8%増益、よかタウン事業が33.1%増収で54.1%増益、さらに旭ハウジング事業が35.0%増収で3.3倍増益、フレスコ事業が14.8%増収で2.1倍増益、建新事業が40.7%増収で黒字化と大幅伸長した。新規連結の東京ビッグハウス事業も寄与した。
販売棟数は、主力の分譲住宅事業が305棟増加の2227棟、よかタウン事業の分譲が154棟増加の544棟、注文が34棟減少の65棟だった。売上総利益率は2.6ポイント上昇した。需要の高まりで値引きが抑制された。新規連結や事業拡大に伴う人件費の増加を吸収して大幅増益だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高281億29百万円で営業利益10億15百万円、第2四半期は売上高378億61百万円で営業利益27億71百万円、第3四半期は売上高438億13百万円で営業利益44億17百万円だった。第3四半期は前年比49.5%増収・4.7倍営業増益と成長が加速した。
通期の連結業績予想および配当予想を上方修正した。大幅増収増益で過去最高更新予想である。新型コロナウイルスを契機とするライフスタイルの変化で郊外での住宅購入需要が高まり、主力の分譲住宅事業が想定以上に伸長している。さらに第4四半期も好調に推移する見込みだ。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.2%、営業利益が69.5%である。下期の構成比が高い収益特性も勘案すれば順調である。分譲住宅事業の成長戦略を加速して収益拡大基調だろう。中期成長も期待したい。
■株主優待は9月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月30日時点で1単元以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてQUOカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
株価は上方修正を好感する形で急伸して上場来高値を更新した。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。2月18日の終値は3610円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS493円27銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の139円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1268円29銭で算出)は約2.8倍、時価総額は約514億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)