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マルマエは上値試す、1月の受注残高は前年比30.0%増で21年8月期上振れの可能性
- 2021/2/22 08:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東1)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工事業を展開している。2月17日に21年8月期第2四半期累計業績予想を上方修正し、従来の減益予想から一転して大幅増益予想とした。通期予想は据え置いたが、2月19日公表した1月の受注残高は前月比14.4%増、前年比30.0%増と大幅伸長している。通期業績予想も上振れの可能性が高いだろう。株価は1月の昨年来高値圏から一旦反落したが、1月の受注残高を好感して上値を試す展開を期待したい。
■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工事業
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開している。
パイオニアプラズマディスプレイ鹿児島工場の一部を取得し、18年4月出水事業所として稼働、電子ビーム溶接(EBW)関連の生産も開始した。19年2月には本社を出水事業所内に移転し、本社機能の充実や業務の効率化を推進している。
作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。
■22年8月期営業利益20億円目標
中期事業計画(新型コロナウイルスの影響など市場環境変化を考慮して20年8月21日に修正、計画最終年度を22年8月期に変更)の数値目標は、22年8月期の売上高70億円、営業利益20億円、資産ベースROIC18%、負債ベースROIC14%、配当性向30%以上、年間最低配当額10円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資の計画(CFベース)は、増産投資および自社使用目的の太陽光発電投資を中心に、20年8月期3.4億円、21年8月期9.1億円、22年8月期10億円としている。
売上拡大戦略として半導体分野では、市場成長も背景として既存顧客からの受注品種拡大、デバイスメーカーの稼働向上による消耗品の拡大を見込み、新規顧客獲得も推進する。既存顧客の売上に関しては20年8月期から22年8月期で約26%成長を目指す。新規顧客の売上に関しては2社からの受注を獲得(1社目は20年8月期量産開始、2社目は試作品提供開始)しており、20年8月期の1.2億円から22年8月期には12億円(1社目8億円、2社目4億円)を目標とする。
FPD分野の売上は20年8月期の10.6億円から、22年8月期に16億円を目指す。市場環境として21年8月期は市場縮小、22年8月期に高精細化投資で再拡大を想定し、EBWを活用した新規顧客獲得や、同業他社の撤退などによる市場シェア拡大を見込んでいる。
その他分野ではEBWに続く新技術習得による新分野開拓、リハビリ機器の研究開発などを推進する。
また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。再生可能エネルギー活用によるCO2削減を推進するため、30年8月期に年間使用量50%以上を太陽光で自社発電する計画(30年8月期までに合計424百万円を設備投資)としている。また職場環境向上の取り組みではワークライフバランスを整え、女性が継続して働ける職場づくりを目指す方針だ。
■21年1月の受注残高は前年比30.0%増、16ヶ月連続プラス
なお月次の受注残高(速報値)を見ると、21年1月は半導体分野が6億96百万円(前月比6.5%増、前年同月比39.7%増)、FPD分野が2億25百万円(前月比9.5%増、前年同月比17.5%減)、その他分野が88百万円、合計が10億10百万円(前月比14.4%増、前年同月比30.0%増)となった。合計ベースの前年同月比は16ヶ月連続プラスとなった。また19年2月の合計6億20百万円をボトムとして回復基調であり、合計10億円台は18年7月以来となる。
今後の動向として、半導体分野は市場が過去最高水準に接近しており、今後の受注も好調に推移する見込みとしている。FPD分野は市場環境が回復傾向で、新規引き合いが増加している。シェア拡大も進展して好調に推移する見込みとしている。その他分野では太陽電池製造装置を受注した。
■21年8月期2Q累計予想を上方修正、通期も上振れの可能性
21年8月期の業績(非連結)予想は、売上高が20年8月期比7.1%増の47億円、営業利益が13.0%減の7億80百万円、経常利益が8.6%減の7億62百万円、当期純利益が22.1%減の5億38百万円としている。配当予想は3円増配の20円(第2四半期末10円、期末10円)である。
半導体分野の好調、生産能力の拡大、シェアの拡大などで増収見込みだが、利益面は中計目標の売上高70億円に向けて体制構築を推進するため、労務費や減価償却費の増加で減益予想としている。
売上高の計画は半導体分野が20%増の38億58百万円、FPD分野が37%減の6億71百万円、その他が1億71百万円としている。半導体分野はメモリが不透明でロジックも停滞だが、20年後半からNANDとファウンダリが復調する見込みだ。FPD分野は21年半ばまでG10.5液晶案件がなく、市場全体として50%縮小見込みだが、EBW活用やシェア拡大で受注確保に注力するとしている。
第1四半期は売上高が前年同期比16.9%増の11億円、営業利益が35.9%増の2億円、経常利益が39.1%増の2億円、四半期純利益が40.6%増の1億37百万円だった。受注は16.2%増の11億10百万円だった。半導体分野の受注好調が牽引し、外注加工費、労務費、減価償却費の増加を増収効果で吸収した。
なお分野別の受注高は、半導体分野が26.2%増の9億03百万円、FPD分野が34.4%減の1億54百万円、その他分野が52百万円、売上高は半導体分野が37.8%増の8億93百万円、FPD分野が37.6%減の1億64百万円、その他分野が17百万円だった。半導体分野は回復が加速した。FPD分野は市場低迷が影響したが、EBW(電子ビーム溶接)が堅調だった。
そして2月17日に21年8月期第2四半期累計業績予想を上方修正し、売上高が前年同期比11.5%増の22億50百万円、営業利益が20.9%増の4億40百万円、経常利益が27.0%増の4億33百万円、四半期純利益が26.6%増の3億円とした。
従来の減益予想から一転して大幅増益予想とした。半導体分野の受注が想定以上に活況となり、FPD分野の受注も落ち込みが想定よりも少なくなった。利益面では、材料費や外注費などの変動費が少ない受注が増加したことも寄与する。
通期予想は据え置いているが、1月の受注残高の大幅伸長を勘案すれば、通期予想も上振れの可能性が高いだろう。
■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上保有株主対象
株主優待制度は、毎年8月末日現在6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
株価は1月の昨年来高値圏から一旦反落したが、1月の受注残高を好感して上値を試す展開を期待したい。2月19日の終値は1245円、今期予想PER(会社予想のEPS42円02銭で算出)は約30倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約1.6%、前期実績PBR(前期実績のBPS445円69銭で算出)は約2.8倍、時価総額は約163億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)