星光PMCは下値切り上げ、21年12月期増収増益予想

 星光PMC<4963>(東1)は製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)の拡販を推進している。20年12月期は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益だったが、計画に対して減収減益幅が縮小した。21年12月期は増収増益予想としている。需要が回復基調であり、収益拡大を期待したい。株価は戻り一服の形だが下値を着実に切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。

■製紙用薬品、印刷インキ用・記録材料用樹脂、化成品を展開

 DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、樹脂事業(印刷インキ用樹脂、記録材料用樹脂、CNF、19年1月株式追加取得して連結子会社化した台湾・新綜工業(台湾)の粘着剤)、および化成品事業(子会社KJケミカルズの機能性モノマー)を展開している。

 20年12月期の売上高構成比は製紙用薬品事業が58%、樹脂事業が26%、化成品事業が16%、営業利益構成比(調整前)は製紙用薬品事業が49%、樹脂事業が27%、化成品事業が24%だった。

■21年12月期営業利益30億円目標

 中期経営計画「New Stage 2021」では、基本方針に国内事業基盤の強化、海外事業拡大・新規事業構築に向けた施策の実施、長期的視点に基づいた経営基盤の構築を掲げている。

 国内事業基盤の強化では営業および開発体制の強化、製品ポートフォリオの変革、海外事業拡大・新規事業構築に向けた施策の実施では台湾・新綜工業による粘着剤の事業拡大、ベトナム生産現法設立による製紙用薬品の海外事業拡大、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)事業の拡大、長期的視点に基づいた経営基盤の構築では海外人材の採用・育成、人事・教育制度の整備を推進する。

 目標数値には21年12月期の売上高320億円、営業利益30億円、営業利益率9.4%、海外売上高比率30%以上、Green Index(独自に定義した環境戦略製品売上高の18年12月実績を100とした指数)126を掲げている。

 セグメント別には、製紙用薬品事業の売上高185億円で営業利益(連結調整前)19億87百万円、樹脂事業(CNF、AgNW、新綜工業を含む)の売上高92億円で営業利益9億41百万円、化成品事業の売上高43億円で営業利益4億64百万円としている。

 19年12月には東南アジアにおける製紙用薬品の生産拠点として、ベトナムにSEIKO PMC VIETNAMを設立した。21年末に生産開始予定である。

■CNF複合材料の採用拡大

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 18年1月CNF複合材料「STARCEL」ブランドでの商業生産・製品出荷を開始した。18年6月には世界初のCNF強化樹脂応用製品の商品化として、アシックス<7936>の高機能ランニングシューズ製品のミッドソール部材の原材料に「STARCEL」が採用され、全世界で累計500万足以上販売されている。19年10月には環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト製作のコンセプトカーに採用された。

 20年8月にはNEDO助成事業の「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の助成先に採択されたと発表している。事業期間は20年度~24年度である。

 この他の新製品・注目製品として、脱プラスチック・包装材料の紙化を推進する紙塗工用耐水・耐油オールアクリルエマルション、造水膜などに発生するバイオフィルムの形成を抑えるバイオフィルムコントロール剤などの拡販も推進する。

■21年12月期増収増益予想

 20年12月期連結業績は、売上高が19年12月期比6.9%減の260億46百万円、営業利益が6.4%減の26億12百万円、経常利益が6.1%減の26億67百万円、当期純利益が14.1%減の16億85百万円だった。なお配当は19年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)とした。

 新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益だった。ただし需要が緩やかに回復基調となり、計画に対して減収減益幅が縮小した。製紙用薬品事業は国内・中国とも需要が減少し、11.8%減収で19.3%減益だった。樹脂事業は粘着剤が増加したが、印刷インキ用樹脂・記録材料用樹脂が減少し、3.0%減収で0.5%減益だった。化成品事業は主力製品の輸出が増加し、7.6%増収で31.8%増益だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高66億13百万円で営業利益5億93百万円、第2四半期は売上高59億31百万円で営業利益3億77百万円、第3四半期は売上高63億25百万円で営業利益6億88百万円、第4四半期は売上高71億77百万円で営業利益9億54百万円となった。第2四半期をボトムとして回復傾向である。

 21年12月期連結業績予想は売上高が20年12月期比10.0%増の286億40百万円、営業利益が7.2%増の28億円、経常利益が7.2%増の28億60百万円、当期純利益が6.2%増の17億90百万円としている。配当予想は20年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)である。

 製紙用薬品事業では差別化製品・サービスの提供、高機能製品による新規商権獲得などで、国内外での拡販を強化する。樹脂事業では市場の変化に対応した製品ポートフォリオの抜本的見直し、生産体制の効率化、環境対応樹脂の開発・販売などで収益基盤再構築を図るとともに、既存事業と台湾・新綜工業(台湾)の粘着剤事業のシナジー創出を推進する。化成品事業では、競争優位の機能性創造モノマー・オリゴマーによる事業基盤強化を推進する。需要が回復基調であり、収益拡大を期待したい。

■株価は下値切り上げ

 株価は戻り一服の形だが下値を着実に切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。2月19日の終値は765円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円03銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の16円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS885円19銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約235億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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