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アイリッジは調整一巡、21年3月期3Q累計営業・経常黒字、売上総利益率改善基調
- 2021/2/22 08:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、O2O・OMOソリューションをベースとして、デジタル地域通貨やライフデザインにも事業領域を拡大している。21年3月期第3四半期累計は売上総利益率改善や販管費抑制で営業・経常黒字だった。通期予想は新型コロナウイルス感染再拡大の影響を考慮して下方修正したが、売上総利益率が改善基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は12月の昨年来高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大
企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するデジタル・フィジカルマーケティング領域(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)をベースとして、フィンテック(デジタル地域通貨)領域や、ライフデザイン領域にも事業領域を拡大して中期成長を目指している。
18年5月デジタルガレージ<4819>と資本業務提携、18年8月デジタルガレージからセールスプロモーションのDGマーケティングデザインの株式80%取得して連結子会社化、19年10月システム受託開発のキースミスワールドを吸収合併した。
20年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が15%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が85%だった。
■withコロナ対応の勤務体制を構築
中期経営計画(ローリングプラン)の目標値としては、23年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。重点取り組みとして粗利率の改善、ソリューション強化、事業提携、人員体制強化などを推進する。
withコロナ対応として21年2月を目処にオフィスを約5割削減・再編し、出社勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型働き方に最適な環境と勤務体制「iRidge Hybrid Working Style」を構築する。
■デジタル・フィジカルマーケティング領域はFANSHIPが主力
デジタル・フィジカルマーケティング領域は、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、
20年12月末のFANSHIP利用ユーザー数(ID発行数)は2億1628万(20年3月末比2501万増加)となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。
20年12月にはゆうちょ銀行の「ゆうちょ通帳アプリ」に採用された。ゆうちょ銀行への導入は「ゆうちょPay」に続いて2例目となる。また京王電鉄バスの「ハイウェイバスドットコム」アプリの開発支援(FANSHIP導入)を行った。
今後はFANSHIPの機能強化によるストック収益拡大や、One to Oneマーケティングプラットフォームとしての導入拡大を図る。さらに子会社DGマーケティングデザインとの連携を強化し、オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~CRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。
20年12月にはFANSHIPのポイント機能を活用した「LINEミニアプリ構築プラットフォーム」の提供を開始した。21年1月には子会社DGマーケティングデザインが、購買データを活用したダイレクトサンプリング「スナイパーパッケージ」の提供を開始した。
なお21年2月には、東芝テックおよびリゾームと協業して、スマホアプリを手軽に導入できるショッピングセンター向け顧客システムを21年4月に提供開始すると発表した。
■デジタル地域通貨プラットフォームの展開を加速
フィンテック領域(デジタル地域通貨)は子会社フィノバレーが、決済システムを中心としたデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を展開している。ファン育成プラットフォームFANSHIPと組み合わせることで、マーケティング機能を融合した決済基盤構築も可能となる。
システムの提供実績としては、岐阜県飛騨・高山地域「さるぼぼコイン」、千葉県木更津市「アクアコイン」、大分銀行「デジタル商品券発行スキーム」などがある。また認定特定非営利活動法人夢職人の子どもの「食」応援クーポン事業「Table for Kids」(20年12月中~21年5月末日の6ヶ月間)に提供する。
withコロナ対応の地域経済活性化施策として、自治体におけるデジタル地域通貨需要が高まっていることも背景に事業展開を加速している。直近では2月1日に長崎県南島原市「MINAコイン」、2月20日に東京都世田谷区「せたがやPay」の提供を開始した。さらに岡山県真庭市の「公金キャッシュレス・市民ポイント調査研究業務」の優先交渉権を獲得している。
■ライフデザインなど新規事業も育成
ライフデザイン領域では18年8月に、デジタルガレージの子会社で不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。
その他の新規分野として、18年9月にAIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDを提供開始している。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。20年6月にはNOIDを活用して、大塚製薬の公式Alexaスキル「サプリメントチェック」を開発支援した。
20年11月にはソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONETが設立したMONETコンソーシアムに参画した。MaaS事業への取り組みを強化する。また欧州系最大の戦略コンサルティングファームの日本法人ローランド・ベルガーの価値共創ネットワーク(VCN)に参画した。
21年1月には、小売業界向けSaaS型オンラインプラットフォームを提供するFlow Solutionsの第三者割当増資の一部を引き受けて資本業務提携(株式取得2月5日)した。
また21年2月には、オンライン・モンスターと提携し、接客・相談・学習指導など対面サービスを提供する企業向けに、対面サービスのオンライン化を実現するビデオ通話機能付マッチングプラットフォームの提供を開始した。さらに、メディカルネット(20年5月に歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携)と共同で、マッチングプラットフォームを利用したオンライン歯科相談サロン「デンタルオンラインサロン」と、業界初の歯科用口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診察サービス「デンタルオンライン」の提供を開始した。
■21年3月期予想を下方修正だが売上総利益率改善基調
21年3月期連結業績予想(8月14日公表、2月12日に下方修正)は、売上高が20年3月期比21.3%減の42億円、営業利益が56.1%減の50百万円、経常利益が56.1%減の50百万円、当期純利益が10百万円の黒字(20年3月期は81百万円の赤字)としている。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比18.7%減の31億16百万円、営業利益が12百万円の黒字(前年同期は47百万円の赤字)、経常利益が21百万円の黒字(同46百万円の赤字)、四半期純利益が26百万円の赤字(同70百万円の赤字)だった。
月額報酬は30.6%増収と高い成長率を維持したが、アプリ開発・コンサル・プロモーション等が27.0%減収だった。アプリ開発を中心とするデジタルマーケティング領域は好調だが、新型コロナウイルスによるオフラインプロモーション減少が影響した。ただし、大幅減収だったが売上総利益は6.2%増加した。開発体制強化や内製化率向上で売上総利益率が7.9ポイント改善した。さらに販管費抑制も寄与して営業・経常黒字だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高9億81百万円で営業利益28百万円の赤字、第2四半期は売上高11億04百万円で営業利益13百万円の黒字、第3四半期は売上高10億31百万円で営業利益27百万円の黒字だった。売上総利益率が改善基調(20年3月期通期27.6%、21年3月期第1四半期31.2%、第2四半期32.9%、第3四半期36.6%)で第2四半期から営業黒字に転換している。
通期予想は新型コロナウイルス感染再拡大によるオフラインプロモーションへの影響を考慮して下方修正した。ただし各利益は黒字を確保する見込みだ。また成長再加速に向けた重点施策として、アプリ開発案件の粗利率改善維持と高付加価値化、ストック型ソリューション強化による安定収益比率の向上、事業環境変化やDXニーズ拡大などに対応した新たなソリューションや事業の展開などを推進する。売上総利益率が改善基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は12月の昨年来高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月19日の終値は1057円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円49銭で算出)は約709倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS374円02銭で算出)は約2.8倍、時価総額は約71億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)