インフォマートは上値試す、21年12月期減益予想だが保守的

 インフォマート<2492>(東1)は国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。利用企業数は増加基調である。さらに電子契約やDXの流れも追い風となる。21年12月期は先行投資負担で減益・減配予想としている。ただし保守的だろう。売上が回復基調であり、上振れを期待したい。株価は減益予想を嫌気する場面があったが、素早く切り返して戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを運営

 企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームとして、受発注(従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム)、規格書(食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール)、請求書(請求書発行・受取業務を電子化したシステム)、商談(全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト)、契約書(契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステム)を運営している。

 20年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が76%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が24%、その他が1%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が183%、BtoB-PF ES事業が▲83%、その他が▲0%だった。

 飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。新サービスとして、19年10月に食材自動発注、20年1月に電子請求書早払い、20年3月に他業界向け受発注をリリースした。

 なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資した。

 20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始すると発表した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。

 20年9月にはGINKANと協業開始した。飲食業界のマーケティング支援から業務管理までのDXを目指す。20年10月には全国の地方銀行21行とのビジネスマッチング契約を拡大した。20年12月には、SCSK<9719>と経理部門の請求書電子データ化やテレワーク導入支援を目的として販売代理店契約を締結した。またブラザー販売とシステム連携した。食品表示ラベル作成で外食産業や中食産業の新たな販路開拓(デリバリー、テイクアウト、通信販売等)を支援する。

 21年1月にはダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結した。BtoBプラットフォーム請求書を全国規模で展開する。21年2月には、食品卸企業向け受発注・販促サービスを提供するタノムと資本業務提携した。食品卸・飲食業界の受発注業務のDXを推進する。また自治体向けクラウドシステムを手掛けるGcomホールディングスと協業開始した。

■営業利益率30%以上目標

 売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調であり、継続利用率も高い。20年12月末の全体の利用企業数は52万2576社、事業所数は103万2672事業所、流通金額(20年1月~12月)は12兆7295億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。

 20年12月には、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が、サービス開始(15年1月)から5年で50万社を突破した。23年から導入される適格請求書保存方式(インボイス制度)も背景として電子請求書のニーズが拡大基調である。

 中期業績目標には売上高100億円突破、営業利益30億円超、営業利益率30%以上を掲げている。BtoBプラットフォームの徹底的拡充・価値増大に取り組む。また将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組む方針だ。

■21年12月期減益予想だが保守的

 20年12月期の連結業績(1月21日に上方修正)は、売上高が19年12月期比2.8%増の87億77百万円、営業利益が40.4%減の14億71百万円、経常利益が40.7%減の14億57百万円、当期純利益が40.2%減の10億14百万円だった。

 BtoB-PF ES事業(22.0%増収)は請求書の有料契約企業数が増加して大幅伸長したが、BtoB-PF FOOD事業(2.0%減収)は新型コロナウイルスの影響で食材流通金額が減少し、売り手企業の受発注システム使用料が減少した。全体として増収だったが、サーバー体制増強に伴うデータセンター費の増加、事業拡大に向けた営業および営業サポート人員の増強による人件費の増加、販売促進費の増加など、先行投資負担で減益だった。

 なお計画に対しては、売上面では4月を底にして回復基調となり、想定を上回る水準で推移した。コスト面では、保守的に計画していたデータセンター費およびソフトウェア償却費が未発生となり、国内出張自粛による旅費交通費の減少も寄与して、各利益が計画を上回った。

 21年12月期の連結業績予想は、売上高が20年12月期比8.7%増の95億40百万円、営業利益が52.4%減の7億円、経常利益が57.1%減の6億25百万円、当期純利益が58.1%減の4億25百万円としている。配当予想は、2円77銭減配の94銭(第2四半期末47銭、期末47銭)としている。

 売上面では、BtoB-PF ES事業(計画28.8%増収)がDXの流れも背景として大幅伸長見込みだが、BtoB-PF FOOD事業(計画1.4%増収)は新型コロナウイルスによるマイナス影響が当面続く想定とした。コスト面では先行投資でデータセンター費や人件費が増加するため、各利益とも減益見込みとした。

 ただし保守的だろう。売上が回復基調であり、上振れを期待したい。さらに電子契約やDXの流れも追い風として中期成長を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は減益予想を嫌気する場面があったが、素早く切り返して戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。2月19日の終値は1020円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円86銭で算出)は約548倍、今期予想配当利回り(会社予想の94銭で算出)は約0.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円41銭で算出)は約21倍、時価総額は約2646億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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