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イトーキはモミ合い上放れ、21年12月期営業・経常横ばい予想だが保守的
- 2021/2/24 08:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イトーキ<7972>(東1)はオフィス家具の大手で、物流機器なども展開している。20年12月期は営業・経常大幅増益で着地した。第4四半期の需要回復が想定以上だった。21年12月期は営業・経常利益横ばい予想としている。ただし保守的だろう。withコロナや働き方改革による企業の職場環境改善の流れも背景として中期的に収益拡大を期待したい。株価はモミ合いから上放れの動きを強めている。低PBRも見直して戻りを試す展開を期待したい。
■オフィス家具の大手、物流機器も展開
オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器なども展開している。製販一貫体制が特徴である。
20年12月期のセグメント別売上構成比はオフィス関連事業が56%、設備機器関連事業が42%、その他(家庭用机など)が2%、営業利益構成比はオフィス関連事業が33%、設備機器関連事業が62%、その他が4%だった。なお収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。
オフィス関連事業は事務用デスク・チェア、収納家具などを展開している。18年10月開設した本社オフィスITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナ期の「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れたオフィスとした。また新規事業としてGlobal Treehouse事業を立ち上げている。
設備機器関連事業はパーティションや物流設備機器などを展開している。その他事業は家庭用机などを展開し、テレワークに対応した新製品や子ども向け新製品の投入を推進している。
海外は中国におけるグループ内組織再編に向けて、地域統括会社である伊藤喜を設立(20年6月)して拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。さらに新製品投入で巻き返しを図る方針だ。
なお20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。
■中期経営計画でポストコロナの働く環境づくりをリード
3ヶ年(21年~23年)中期経営計画「RISE ITOKI 2023」を策定し、目標数値には23年12月期の売上高1330億円、営業利益60億円、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げた。
目指す姿を、強靭な体質の高収益企業になる、ポストコロナの働く環境づくりをリードするとしている。重点方針は、構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践とした。
基本戦略としては、オフィス事業では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器パブリック事業では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、物流施設機器事業の拡大、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外事業ではコストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、Web事業では拡大するテレワーク市場への積極展開、新たな顧客層の獲得に向けた事業展開の開始としている。
■21年12月期営業・経常利益横ばい予想だが保守的
20年12月期の連結業績は、売上高が19年12月期比4.9%減の1162億10百万円、営業利益が99.1%増の17億98百万円、経常利益が99.0%増の18億81百万円だった。当期純利益は特別損失(減損損失、開業費償却など)の計上で2億35百万円の赤字(19年12月期は5億50百万円の赤字)だった。配当は19年12月期と同額の13円(期末一括)とした。
新型コロナウイルスの影響で第2四半期から需要が急減速したため、従来は営業・経常大幅減益予想としていたが、第4四半期の需要回復が想定以上となり、販管費の削減なども寄与して、一転して営業・経常大幅増益で着地した。
オフィス関連事業は0.0%減収・14.8%減益だった。第4四半期に回復傾向となったが、通期ベースでは新型コロナウイルス影響による需要減少をカバーできなかった。設備機器関連事業は11.0%減収だが2.6倍増益だった。パーティションの需要が新型コロナウイルス影響や大型プロジェクト端境期などの要因で減少したが、物流施設向けの好調やコストダウン効果で大幅増益だった。その他は5.4%増収で営業黒字化した。パーソナル事業においてテレワーク需要が拡大した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高377億07百万円で営業利益30億01百万円の黒字、第2四半期は売上高269億97百万円で営業利益3億70百万円の赤字、第3四半期は売上高214億89百万円で営業利益19億12百万円の赤字、第4四半期は売上高300億17百万円で営業利益10億79百万円の黒字だった。
21年12月期の連結業績予想は売上高が20年12月期比1.9%減の1140億円、営業利益が0.1%増の18億円、経常利益が1.0%増の19億円、当期純利益が特別損失一巡で7億円の黒字(20年12月期は2億35百万円の赤字)としている。配当予想は20年12月期と同額の13円(期末一括)である。
新型コロナウイルスなどで厳しい事業環境が続くことを想定して減収、利益率改善で減収影響を挽回して営業・経常利益横ばい予想としている。ただし保守的だろう。
新型コロナウイルスの影響で感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。withコロナや働き方改革による企業の職場環境改善の流れも背景として中期的に収益拡大を期待したい。
■株価はモミ合い上放れの動き
株価はモミ合いから上放れの動きを強めている。低PBRも見直して戻りを試す展開を期待したい。2月22日の終値は364円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円50銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想の13円で算出)は約3.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS969円43銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約166億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)