テンポイノベーションは上値試す、21年3月期減益予想だが上振れ濃厚

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 テンポイノベーション<3484>(東1)は、飲食業を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を展開している。転貸借物件数の増加に伴って賃料収益を積み上げるストック型ビジネスモデルである。21年3月期第3四半期累計は新型コロナウイルスの影響で営業減益だったが、各利益は通期予想を超過達成した。成約件数が回復傾向であり、通期利益予想は上振れが濃厚だろう。積極的な事業展開で中期成長も期待したい。株価は19年12月の上場来高値に接近している。上値を試す展開を期待したい。

■飲食業の出店希望者向け居抜き店舗転貸借事業

 首都圏の一都三県(特に東京都)において、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を展開している。

 店舗転貸借事業は、仲介ではなく、サブリースでもなく、不動産業における第6のカテゴリーと位置付けている。不動産オーナーにとっては賃貸料収入の安定、不動産会社にとっては仲介収益機会の獲得、店舗出店者にとっては出店費用の削減、店舗撤退者にとっては閉店コストの削減というメリットがある。また飲食業は他の産業との比較で、開業・廃業による入れ替わりが激しいため、市場機会が豊富という特徴もある。

 保有物件数(転貸借物件数)の増加に伴って賃料収益(ランニング収入)を積み上げるストック型ビジネスモデルである。20年3月期末時点の転貸借物件数は19年3月期末比225件増加の1684件だった。また20年3月期第2四半期から報告セグメントに不動産売買事業を追加した。不動産業者との関係強化を目的として、一定の保有枠の中で資金効率を重視して売買を行う。

 なおクロップス<9428>の連結子会社だが、営業上の取引はなく経営上の独立性を確保している。またCSR活動の一環として、飲食店舗を活用した子ども食堂を開催している。

■21年3月期3Q累計営業減益だが通期予想を超過達成

 21年3月期の業績(非連結)予想(期初時点では未定、11月2日に公表)は、売上高が20年3月期比1.0%増の100億84百万円、営業利益が23.5%減の6億円、経常利益が17.3%減の6億71百万円、当期純利益が19.9%減の4億51百万円としている。新型コロナウイルスの影響を考慮して減益予想としている。配当予想は未定としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比6.8%増の79億36百万円、営業利益が9.1%減の6億04百万円、経常利益が0.6%増の6億93百万円、四半期純利益が1.6%減の4億73百万円だった。

 累計ベースでは、転貸借物件の積み上げ(前年比43件増加の1677件)や不動産売買(2物件売却)で増収だったが、第1四半期に新型コロナウイルスの影響を受け、新規成約件数の減少(前年比76件減少の216件)に伴って店舗転貸借事業のイニシャル収入が減少したため営業減益だった。店舗転貸借事業は3.9%増収だが21.6%減益、不動産売買事業は44.2%増収で17.2%増益だった。

 ただし第2四半期以降は成約件数が回復傾向(第1四半期43件、第2四半期81件、第3四半期92件)となり、営業利益も回復傾向となった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が24億04百万円で営業利益が1億円、第2四半期は売上高が27億69百万円で営業利益が1億90百万円、第3四半期は売上高が27億63百万円で営業利益が3億14百万円だった。

 通期予想は据え置いた。第3四半期累計の各利益は通期利益予想を超過達成しているが、緊急事態宣言再発出の影響を考慮したとしている。ただし第1四半期をボトムとして成約件数が回復傾向であり、通期利益予想は上振れが濃厚だろう。

 なお居抜き物件・店舗情報サイト「居抜き店舗.com」をリニューアルして、コロナ期を出店チャンスとみる飲食店経営者のニーズを捉えるWEBサイトに進化したとしている。積極的な事業展開で中期成長も期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末300株以上・1年以上継続保有株主が対象

 株主優待制度(20年8月に変更)は、毎年3月末時点で300株以上・1年以上継続保有株主を対象として、お食事券ジェフグルメカード5000円分を贈呈(詳細は会社HP参照)する。21年3月末対象から運用開始する。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて昨年来高値圏だ。そして19年12月の上場来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。2月25日の終値は966円、今期予想PER(会社予想のEPS25円35銭で算出)は約38倍、前期実績PBR(前期実績のBPS142円84銭で算出)は約6.7倍、時価総額は約172億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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