マーケットエンタープライズは調整一巡、21年6月期大幅増益予想

 マーケットエンタープライズ<3135>(東1)は持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。2月16日付で東証マザーズから東証1部に市場変更した。21年6月期は大幅増益(レンジ)予想である。第2四半期累計はメディア事業およびモバイル通信事業の収益性が悪化して減益だったが、通期ベースで収益拡大を期待したい。さらに積極的な事業展開やストック収益の積み上げで中期成長も期待したい。株価は上値を切り下げる形で軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■持続可能な社会を目指す最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース(再利用)品取り扱いを中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 20年6月期のセグメント別(連結調整前)の売上構成比はネット型リユース事業59%、メディア事業6%、モバイル通信事業34%、営業利益構成比はネット型リユース事業39%、メディア事業34%、モバイル通信事業27%だった。

 中期経営目標として売上高100億円、営業利益10億円を掲げている。20年5月には、グループ全事業に関するITシステムのオフショア開発拠点として、ベトナムに子会社を設立した。

 なお大和インベスター・リレーションズ選定の「2020年インターネットIR表彰」で2年連続2度目の優良賞を受賞した。またテクノロジー・メディア・通信業界の収益(売上高)に基づく成長率ランキングの「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 2020年 日本テクノロジー Fast50」に選出(50位中の41位)された。3年ぶり4度目の受賞となった。

■ネット型リユース事業は30カテゴリーに対応

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンター(20年6月期末時点で全国主要都市10ヶ所)における買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 19年2月には全国のリサイクルショップが加盟(20年6月末時点で有料加盟店舗数998店舗)する日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」事業を譲り受けた。そして「おいくら」に加盟しているリサイクルショップに送客するため、20年7月に「高く売れるドットコム」と「おいくら」の本格システム連携・送客を開始した。加盟店にとっては集客・買取機会の増加につながる。なお2月15日には「おいくら」の協業・提携企業が40社を突破したと発表している。

 またM&Aを積極活用して、中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材にも取扱商品カテゴリーを拡大している。20年4月設立した子会社MEトレーディングは、20年5月中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

■事業領域拡大してメディア事業とモバイル通信事業も展開

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 M&Aを積極活用して20年6月期末時点で、モバイル通信に関するメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノの売却や処分に関するメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノの修理に関するメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具の買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」など8メディアを運営している。20年10月には農業に特化した新メディア「農業とつながる情報メディアUMM」をリリースした。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■21年6月期2Q累計減益だが通期大幅増益予想

 21年6月期の連結業績予想(レンジ予想)は、売上高が135億円~145億円(20年6月期比23.8%増~33.0%増)、営業利益が7億30百万円~9億円(同11.3%増~37.2%増)、経常利益が7億33百万円~9億03百万円(同10.4%増~36.0%増)、そして当期純利益が3億60百万円~4億50百万円(同23.4%増~54.3%増)としている。

 ネット型リユース事業では「高く売れるドットコム」と「おいくら」の本格システム連携開始により、送客精度向上と企業アライアンス先開拓による送客数の増加を推進する。農機具は、事業買収のシナジー発現(子会社MEトレーディングと子会社UMMの「中古農機市場UMM」)により、農機具買取・海外販売の増加を図る。

 メディア事業では、コンテンツ拡充などのドメイン価値向上施策により、送客数および送客単価の向上を推進する。モバイル通信事業では、積極的なWebマーケティング活動やサービスラインナップ拡充によって、モバイルデータ通信サービスの新規契約回線数拡大を推進する。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比8.7%増の56億28百万円、営業利益が33.2%減の2億06百万円、経常利益が36.7%減の1億95百万円、四半期純利益が44.3%減の93百万円だった。

 主力のネット型リユース事業は2.8%減収だが3.6%増益だった。広告宣伝費率引き下げで利益率改善した。メディア事業は15.6%増収だが11.3%減益だった。社外向けが伸長して増収だが、人件費の増加で減益だった。モバイル通信事業は27.5%増収だが18.5%減益だった。通信料収入が増加したが、WiMAX新規回線獲得の減少に伴う販売奨励金収入の減少で減益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高28億70百万円で営業利益1億63百万円、第2四半期は売上高27億58百万円で営業利益43百万円だった。

 通期予想(新型コロナウイルス影響長期化など不透明感を考慮してレンジ予想)は据え置いた。ネット型リユース事業(特に「おいくら」および農機具)が牽引し、積極的な事業展開による固定費増加を吸収して大幅増収増益予想としている。第2四半期累計が減益となり、進捗率も低水準だが、通期ベースで収益拡大を期待したい。さらに積極的な事業展開やストック収益の積み上げで中期成長も期待したい。

■株価は調整一巡

 株価(21年2月16日付で東証マザーズから東証1部に市場変更)は反発力が鈍く、上値を切り下げる形で軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月25日の終値は1729円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS上限値86円10銭で算出)は約20倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS275円54銭で算出)は約6.3倍、時価総額は約91億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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