【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCは年初来高値圏で堅調、15年12月期の収益改善基調や増額含みを評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 星光PMC<4963>(東1)は、製紙用薬品事業や樹脂事業を主力として、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。株価は年初来高値圏で堅調に推移している。15年12月期の収益改善基調や増額含みを評価して水準切り上げの展開だろう。

 DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、および化成品事業(14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化)を展開している。

 高付加価値製品の拡販に加えて、中国・東南アジア市場への積極展開、そして次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など、成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースを、ナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月には産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画した。そして14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備が完成し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始している。

 銀ナノワイヤーは14年9月からサンプル出荷を本格開始した。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させて透明導電性電極を形成し、ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。

 なお前期(14年12月期)の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)53億36百万円、第2四半期(4月~6月)61億68百万円、第3四半期(7月~9月)60億64百万円、第4四半期(10月~12月)64億02百万円だった。営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期17百万円の赤字、第3四半期77百万円、第4四半期1億19百万円だった。営業損益は第2四半期をボトムとして改善基調だ。

 5月11日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.9%増の60億25百万円、営業利益が同73.9%増の2億45百万円、経常利益が同86.3%増の2億59百万円、純利益が同5.5倍の2億60百万円だった。

 売上面では、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業の需要が低調だったが、KJケミカルズの連結(化成品事業)も寄与して大幅増収だった。利益面ではコスト削減・合理化の進展、中国事業の収益改善などで営業損益が改善基調だ。

 なお次世代素材CNFの開発で経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択され、パイロットプラント完成に伴って交付された国庫補助金2億54百万円を特別利益に、パイロットプラントに係る固定資産圧縮損1億67百万円を特別損失に計上した。

 セグメント別動向を見ると、製紙用薬品事業は売上高が同1.0%増の37億42百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同23.9%増の2億25百万円、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業は売上高が同14.3%減の13億97百万円、営業利益が同63.2%増の58百万円、化成品事業は売上高が8億86百万円、営業利益が79百万円だった。

 なお5月11日に、第2四半期累計(1月~6月)連結業績予想の修正(売上高を減額、利益を増額)を発表した。売上高は3億20百万円減額して前年同期比7.2%増の123億30百万円、営業利益は1億60百万円増額して同3.5倍の4億30百万円、経常利益は1億70百万円増額して同3.8倍の4億70百万円、純利益は1億50百万円増額して4億20百万円(前年同期は2億65百万円の赤字)とした。コスト削減などの効果が想定以上のようだ。

 通期の連結業績予想については前回予想(2月12日公表)を据え置いて売上高が前期比9.9%増の263億50百万円、営業利益が同3.1倍の10億円、経常利益が同2.0倍の10億60百万円、純利益が8億30百万円(前期は18百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。前提として為替は1米ドル=115円、ナフサ価格は6万3000円としている。

 需要回復に伴う数量の増加、高付加価値製品の拡販、プロダクトミックスの改善、ロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正のタイムラグ解消、KJケミカルズの通期連結、KJケミカルズにおける減価償却費の減少、中国事業の収益改善などが寄与して大幅増益見込みだ。収益は改善基調である。なお前期の特別利益に計上したKJケミカルズ子会社化に伴う負ののれん益が一巡し、特別損失に計上した中国事業に係る固定資産減損損失も一巡する。

 事業別の計画を見ると、製紙用薬品事業は拡販とコスト削減効果などで売上高が同8.1%増の167億10百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同46.9%増の11億37百万円、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業は拡販と製品価格是正のタイムラグ解消などで売上高が同3.6%増の61億64百万円、営業利益が同3.2倍の1億98百万円、化成品事業は売上高が34億76百万円(前期9ヶ月連結は25億58百万円)、減価償却負担減少などで営業利益が1億75百万円(同92百万円の赤字)としている。

 なお通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が22.9%、営業利益が24.5%、経常利益が24.4%、純利益が31.3%と概ね順調な水準である。通期会社予想を据え置いたが、コスト削減効果などが想定以上となって第2四半期累計の利益を増額したことを考慮すれば、通期予想も増額含みだろう。

 中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げている。高付加価値製品の拡販、中国事業の再構築、東南アジア市場への積極展開、さらに次世代素材CNFや銀ナノワイヤーの事業化も寄与して中期的に収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、900円~1000円近辺のモミ合いから上放れて、5月12日の年初来高値1148円まで上伸した。その後も高値圏1100円近辺で堅調に推移している。14年3月高値1978円に向けて戻り歩調の展開だ。

 6月2日の終値1119円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円37銭で算出)は41倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円90銭で算出)は1.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線も上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だ。15年12月期の収益改善基調や増額含みを評価して水準切り上げの展開だろう。

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