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クリーク・アンド・リバー社は上値試す、21年2月期過去最高予想で中期的にも収益拡大基調
- 2021/3/15 08:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。21年2月期は新型コロナウイルスによるマイナス影響を吸収して、増収増益・過去最高更新予想としている。中期的にも収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。上値を試す展開を期待したい。なお4月8日に21年2月期決算発表を予定している。
■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開
クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業を主力としている。
20年2月期のセグメント別売上構成比は、日本クリエイティブ分野74%、医療分野12%、会計・法曹分野6%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)7%、営業利益構成比(調整前)は日本クリエイティブ分野63%、医療分野35%、会計・法曹分野11%、その他▲10%だった。
韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。
収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。
■事業領域拡大戦略を加速
M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速している。20年8月には任天堂<7974>が著作権を有するゲーム著作物の利用に関する包括的許諾契約を締結した。MCN(マルチチャンネルネットワーク)としてOC(The Online Creators)を運営し、YouTubeを中心に活動する動画クリエイターをサポートしているが、許諾契約締結によってOC所属クリエイターは、任天堂のゲーム著作物を利用した動画や静止画等の共有サイトへの投稿、および指定のシステムによる収益化が可能となった。
新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)を展開し、20年8月にはCXOエージェンシーも本格始動した。法人向けに共創サービス、コンサルティングサービス、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)人材採用支援サービスを提供する。
また新規サービスとしては、米国C&R GlobalがJURISTERRAを活用した法務領域コンサルティングサービス、プロフェッショナルメディアが求人メディア運営、VR Japanが中国IDEALENS社製VRゴーグル販売、台湾インツミット社と合弁のIdrasysがAIプラットフォーム「SmartRobot」開発、クレイテックワークスがゲームコンテンツ開発・運営を展開し、ジェイアール東日本企画と共同でデータドリブンマーケティング事業を推進するJDDLを設立している。
VR関連ではVR Japanが独自の低遅延リアルタイム配信システムの事業化を推進し、法人向けVR・AR・MR関連サービスの導入実績が4000件を超えている。また、がん治療の中核病院から遠隔医療への応用を見据えて、手術の模様を遠隔地からリアルタイムに視聴する実証実験を受注している。
クレイテックワークスはインタラクティブブレインズの3DCGアバター事業、VR事業、コンテンツ開発事業を譲り受けた。クレイテックワークスは自社開発ゲームが不振のためモデル転換を推進している。
さらに20年7月には、VR・Web関連を展開するGruneを子会社化、NHKおよび関連会社の番組制作・編集部門へのスタッフ派遣などを展開するウイングを子会社化した。20年10月にはコンサルティング事業のきづきアーキテクトを子会社化し、協業事例第一弾として、東京都が実施する「5G技術活用型開発等促進事業」の開発プロモーターに採択された。21年3月にはエコノミックインデックスの株式を譲渡して連結から除外した。
なお東大発バイオベンチャーのCO2資源化研究所(UCDI)に出資(18年3月)し、水素と二酸化炭素から菌体を培養してBiofeeds(バイオフィーズ:飼料蛋白素材)やバイオ燃料の資源化を目指す研究開発に協力している。
■21年2月期増収増益で過去最高予想
21年2月期の連結業績予想(1月8日に売上高、利益とも下方修正)は、売上高が20年2月期比11.3%増の367億円、営業利益が10.4%増の23億円、経常利益が9.3%増の23億円、当期純利益が3.0%増の14億円としている。配当予想は1円増配の16円(期末一括)である。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比12.3%増の275億57百万円、営業利益が15.3%増の19億09百万円、経常利益が16.7%増の19億38百万円、四半期純利益が22.9%増の12億63百万円だった。
新型コロナウイルスによるマイナス影響(クリエイティブ分野および法曹・会計分野の新規成約・稼働遅れ、クリエイティブ分野のアウトソーシング案件受注減少、医療分野の「レジナビフェア」中止、その他分野のアパレル派遣減少、VR機材生産ラインストップによる注文キャンセルなど、全社ベースでの影響額は売上高18億円、営業利益5.4億円)があったが、これを吸収して2桁増収増益となり、第3四半期累計として過去最高だった。
日本のクリエイティブ分野は5.4%増収で49.8%増益だった。ライツ事業が好調に推移し、クレイテックワークスの収益化も寄与した。韓国のクリエイティブ分野はゲーム配信が遅れているが、TV局派遣が好調に推移して赤字縮小した。
医療分野は7.3%減収で9.1%減益だった。会計・法曹分野は7.4%減収で61.0%減益だった。いずれも新型コロナウイルスの影響を受けた。ただし医療分野の医師紹介は好調だった。
その他事業は0.7%減収だが赤字縮小した。ファッション分野のエージェンシー事業およびVR事業が新型コロナウイルスの影響で低調だったが、IT分野のエージェンシー事業が好調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高94億86百万円で営業利益10億49百万円、第2四半期は売上高89億68百万円で営業利益4億06百万円、第3四半期は売上高91億03百万円で営業利益4億54百万円だった。また営業利益の前年比で見ると、第1四半期が33%増、第2四半期が15%減、第3四半期が16%増となる。医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重する特性があるが、第2四半期に新型コロナウイルスの影響が集中した形だ。
通期予想は小幅に下方修正したが、修正後も新型コロナウイルスの影響を吸収して増収増益・過去最高更新予想としている。営業利益については、新型コロナウイルスによるマイナス影響額を約7億円と想定するが、既存事業を中心に想定を約4億円上回るため、差し引き3億円を下方修正した。新型コロナウイルスの影響を受けた医療分野の「レジナビフェア」についてはオンライン化して展開している。好業績を期待したい。中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
1月8日発表の自己株式取得(上限50万株・5億円、取得期間21年1月12日~21年5月31日)については、2月28日時点で累計取得株式数3万1000株となっている。
株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。3月12日の終値は1372円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS63円08銭で算出)は約22倍、前期推定配当利回り(会社予想の16円で算出)は約1.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS386円09銭で算出)は約3.6倍、時価総額は約316億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)