インフォコムは反発の動き、22年3月期も収益拡大基調

 インフォコム<4348>(東1)は電子コミック配信サービスやITサービスを展開している。新たな生活スタイルも背景として電子コミック配信サービスが大幅伸長している。21年3月期は大幅増収増益予想で3回目の上振れ余地がありそうだ。また3月15日には薬剤情報システムで東南アジア市場に参入すると発表している。東南アジアのヘルスケアIT市場での事業展開を加速する方針だ。22年3月期も収益拡大基調だろう。株価は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■ネットビジネス(電子コミック配信サービス)やITサービスを展開

 帝人<3401>グループで、一般消費者向けネットビジネス(子会社アムタスの電子コミック配信サービス「めちゃコミック」)、およびITサービス(医療機関・製薬企業・介護事業者向けパッケージのヘルスケア事業、RPAとAIを活用したWeb-ERPソフトGRANDITなどのサービスビジネス事業、大手企業向けシステムインテグレーションのエンタープライズ事業)を展開している。

 20年3月期のセグメント別売上構成比はネットビジネスが57%、ITサービスが43%、営業利益構成比(連結調整前)はネットビジネスが60%、ITサービスが40%だった。

 電子コミック配信サービスの拡大でネットビジネスが利益柱に成長した。なお20年3月末現在の「めちゃコミック」総会員数(有料会員数と無料会員数の合計)は約1170万人だった。またITサービスは年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

 M&A・アライアンスでは、19年5月アムタスが韓国で電子コミック配信サービスを展開するピーナトゥーンを連結子会社化、介護人材紹介事業のスタッフプラスを連結子会社化、19年7月アムタスとパピレス<3641>が海外への取次事業を行う共同出資会社アルド・エージェンシー・グローバル(AAG)を設立、20年9月シンガポールで介護人材マッチングプラットフォームを提供するHomageと資本業務提携、20年11月医療領域の専門家検索サービスを提供する米国H1 Insightsと業務提携した。

 なお21年2月に本社移転(21年11月~12月予定)を発表している。時間や場所に制約されずに効率良く働く考え方ABW(Activity Based Workingを取り入れて、働く環境の改善に向けた取り組みを強化する。テレワークを取り入れた柔軟な働き方に対応し、生産性向上やコスト削減効果も見込めるとしている。

■電子コミックとヘルスケアを重点事業として持続成長

 中期経営計画(2020年度~2022年度)では、高い成長性と収益性の両立を目指して、経営目標数値には23年3月期売上高850億円~1150億円(SI・サービス150億円、ヘルスケア150億円、電子コミック600億円、M&A)、EBITDA(営業利益+償却費)130億円~160億円、ROE15.0%以上を掲げている。またM&Aでは戦略投資枠300億円を設定している。

 基本方針は、電子コミックとヘルスケアを重点事業とする継続成長、サービス化の推進、共創の積極的推進(M&A、海外展開)としている。サービス化の推進では売上全体に占めるサービス比率を、現状の約6割から8割%超に引き上げる方針だ。

 電子コミックは、市場の年成長率11.9%を想定し、市場を上回る20%以上の成長を目指す。オリジナルコミックの拡充、データ分析・AI活用によるマーケティングの強化、独占先行配信の強化、アプリ版のフルリニューアル、配信システムの完全クラウド化、5G対応、海外展開、M&Aなどを推進する。新型コロナウイルスによる新たな生活スタイルの浸透も追い風となり、若年層を中心に電子で漫画を読む習慣の定着が期待されるため、想定を上振れる可能性が高まっている。

 ヘルスケアは、要介護者の増加に伴って介護IT市場の急速な拡大が見込まれることに加えて、新型コロナウイルスを契機にオンライン診療やオンライン服薬指導の普及も期待されている。介護を注力領域として、新規領域の健康分野における企業向け健康経営サービス「WELSA」や、製薬MR向けオンライン営業支援サービス、海外への展開も強化する。オンライン医療サービスの事業化も検討中としている。

 3月15日には、国内医療機関向けに販売している薬剤情報システムで、東南アジア市場に参入すると発表した。第一弾として、フィリピンにおいて複数のパートナー企業と提携し、21年4月から事業展開を開始する。20年8月にインドネシアで開始した医用画像管理システム(PACS)とともに、東南アジアのヘルスケアIT市場での事業展開を加速する方針だ。

■21年3月期大幅増収増益予想、3回目の上振れの可能性

 21年3月期連結業績予想(7月31日に上方修正、10月28日に2回目の上方修正)は、売上高が20年3月期比20.8%増の705億円、営業利益が27.9%増の105億円、EBITDAが22.4%増の115億円、経常利益が27.0%増の105億円、当期純利益が20.9%増の67億円としている。配当予想(1月27日に期末6円上方修正)は20年3月期比6円増配の37円(第2四半期末10円、期末27円)としている。

 通期のセグメント別計画は、ネットビジネスの売上高が39.5%増の460億円(うち電子コミック配信サービスが40%増の457億円)で営業利益が61.6%増の80億円、ITサービスの売上高が3.5%減の245億円(うちヘルスケアが6.3%減の101億円)で営業利益が23.1%減の25億円としている。

 ネットビジネスはデータ分析をベースとした施策(無料連載、独占先行配信、オリジナルコミックなど)で成長が加速する。ITサービスは病院向け案件のリードタイム長期化で第4四半期偏重が例年以上に強まるが、新型コロナウイルスによるマイナス影響は期初時点の想定を下回る見込みとしている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比18.7%増の489億14百万円、営業利益が22.0%増の71億10百万円、経常利益が23.5%増の72億13百万円、四半期純利益が23.9%増の49億25百万円だった。ITサービスがやや低調だったが、電子コミック配信サービスが牽引して大幅増収増益だった。

 ネットビジネスは37.0%増収で47.9%増益だった。電子コミック配信サービスが38%増の330億円と大幅伸長し、第3四半期末時点で20年3月期通期売上高326億円を上回った。データ分析をベースとした施策が奏功し、外出自粛による巣ごもり消費も追い風となって成長が加速している。利益率の高いオリジナルコミックのヒットも寄与した。

 ITサービスは7.2%減収で31.8%減益だった。企業向けITサービスは計画水準だったが、ヘルスケア事業の病院向けが前年の改元・消費税増税に対応した特需の反動や新型コロナウイルスの影響で減少した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高155億89百万円で営業利益20億91百万円、第2四半期は売上高176億24百万円で営業利益28億29百万円、第3四半期は売上高157億01百万円で営業利益21億90百万円だった。

 通期も電子コミック配信サービスが牽引して大幅増収増益予想である。第3四半期累計の進捗率は売上高が69.4%、営業利益が67.7%とやや低水準の形だが、ITサービスは年度末にあたる第4四半期の構成比が高い傾向があり、通期3回目の上振れ余地がありそうだ。そして22年3月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末の株主対象

 株主還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配に努め、配当性向30%の維持を目指すとしている。

 株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数および保有年数に応じて、優待商品と交換できる株主優待ポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

 株価はほぼ一本調子に水準を切り下げる形で軟調展開だったが、売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。3月16日の終値は2855円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS122円37銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想の37円で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS653円82銭で算出)は約4.4倍、時価総額は約1644億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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