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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーは日柄調整一巡、中期成長力を評価して高値圏目指す
- 2015/6/4 06:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)は独立系のオペレーティング・リース事業者で、投資銀行業務に事業領域を拡げて金融ソリューション事業を展開している。株価は急伸した14年11月高値後の日柄調整が一巡し、ボックスレンジ下限から切り返しのタイミングだ。中期成長力を評価して高値圏を目指す展開が期待される。
06年9月設立、14年9月東証マザーズに新規上場した。設立時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月M&Aアドバイザリー事業に参入、14年5月太陽光発電事業の第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業に参入し、投資銀行業務に事業領域を拡げて金融ソリューション事業を展開している。
当社はグループ戦略立案、M&Aアドバイザリー事業、環境エネルギーファンド事業などを行う投資銀行の位置付けである。
そして11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海運コンテナを主対象とするオペレーティング・リース事業を展開している。なお米CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を持分法適用関連会社としている。
非連結子会社(特別目的会社SPC)が運営するオペレーティング・リース事業、および環境エネルギーファンド事業の組成・販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱だ。14年9月の上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上する一方で、主要顧客である中小・中堅企業の収益改善に加えて、法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準である。
今期(15年12月期)の連結業績予想(2月12日公表)は売上高が前期比91.7%増の20億11百万円、営業利益が同89.1%増の9億93百万円、経常利益が同71.4%増の10億87百万円、純利益が同66.0%増の6億52百万円としている。配当予想については無配継続としている。
オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が大幅伸長する。大幅増収増益予想だ。
5月12日に発表した第1四半期(1月~3月)の連結業績は売上高が4億30百万円、営業利益が1億85百万円、経常利益が1億38百万円、純利益が87百万円だった。
前年同期は連結財務諸表を作成していないため単純比較はできないが、実質的に計画を上回る大幅増収増益だったようだ。出資金販売額はオペレーティング・リース事業が前年同期比4.6%増の40億39百万円、環境エネルギーファンド事業が10億20百万円(前年同期は実績なし)だった。
組成は航空機1件(組成金額45億17百万円)、太陽光発電2件(組成金額10億20百万円)の合計3件、販売は航空機2件(販売金額22億66百万円)、コンテナ2件(販売金額17億72百万円)、太陽光発電2件(販売金額10億20百万円)の合計6件(いずれも完売)だった。なお第1四半期末の商品在庫として航空機5件(募集総額84億08百万円)の組成を完了している。
販売ネットワークは新規ビジネスマッチング契約の締結で、累計提携先が地方銀行16行、証券会社6社、税理士・会計事務所73件となった。また15年1月に初のシンジケート方式によるコミットメントライン枠30億円を設定するなどして、資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は47億円超まで拡大した。
第1四半期の進捗率を見ると、通期予想に対しては売上高が21.4%、営業利益が18.6%、経常利益が12.7%、純利益が13.4%と低水準の形だが、第2四半期累計(1月~6月)に対しては売上高が56.8%、営業利益が65.1%、経常利益が60.5%、純利益が63.5%と高水準である。
下期(7月~12月)に多くの案件を抱えているため期初時点で下期偏重の計画である。特に第4四半期(10月~12月)に売上高が膨らむ見込みとしている。第2四半期累計に対する高水準の進捗率を考慮すれば、通期連結業績の会社予想は増額含みだろう。
案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門、海運コンテナ部門とも、レッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。
販売面では、知名度・信用力向上に伴って全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が一段と増加傾向だ。航空機オペレーティング・リースはレッシー(賃借人)が欧米のナショナルフラッグ・キャリアと呼ばれる一流航空会社であることも好評の一因である。
また為替リスクがない太陽光発電ファンドも、安定利回り商品として投資家ニーズが非常に高く、販売開始から短期間で完売している。15年12月期は太陽光発電ファンドの組成も大幅に増加させる方針だ。
なお5月14日にはLEシステム(福岡県久留米市)の株式取得と資本業務提携を発表した。同社が取り扱う電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は、太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。さらにバイオマス発電に関するノウハウも豊富だ。当社の投資ネットワークおよびファイナンス技術と、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する方針だ。15年12月期業績への影響は軽微だが、16年12月期以降にはバイオマス発電分野の事業拡大などが期待される。
中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電事業を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化としている。
そして第4ステージでは、当社の主力商品を必要とする優良中小・中堅企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業など、他の金融ソリューション提供へ繋げるとしている。
オペレーティング・リース事業の継続的強化、環境エネルギーファンド事業の拡大、全国に広がる幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品の提供に向けて、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。
白岩直人代表取締役社長は「当社の商品は現在検討されている税制改正に対する準備ができているため有利な状況だ」「顧客の投資意欲は旺盛であり、顧客ニーズ対応した競争力の高い商品の提供や、事業領域の拡大を加速する」と述べ、さらに「純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画している」と高成長に自信を見せる。中期的に収益拡大が加速しそうだ。
株価の動き(15年1月1日付の株式5分割を遡及修正)を見ると、IPO直後の14年9月安値870円から14年11月上場来高値2756円まで急伸した。その後は利益確定売りで反落し、15年1月以降は概ね1600円~2000円近辺でボックス展開の形だ。
ただし1月安値1495円を割り込むことなく、日柄調整一巡感を強めている。5月26日の「政府が税理士に対して、企業に提供している節税策の報告を17年度にも義務付ける検討に入った」との一部報道に対するネガティブ反応も限定的のようだ。
6月3日の終値1626円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円57銭で算出)は27~28倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円78銭で算出)は13倍近辺である。中期成長力を考慮すれば割高な水準とは考えられない。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んで調整局面の形だが、1600円~2000円近辺のボックスレンジ下限に到達して切り返しのタイミングだ。中期成長力を評価して高値圏を目指す展開が期待される。